見出し画像

人生に必要な「後ろ向きな力」

小2の息子と、今でも時々いっしょにお風呂に入る。

その時の彼の口癖が「雑談しよ」。
で、どんな雑談かというと・・・「ゾウの前足ってどんなだと思う?」「かかとにクッションみたいなのがあってつま先立ちで」「竜脚類の前足は・・」
延々、生物の脚についてのクイズ。

クイズ形式だから面白い、と彼は思っているわけで、わたしもそれには答えようと頑張る。ところが今度は「じゃあ、おかあさん問題出して」といわれて・・(汗)

画像1


このように、たかがお風呂の雑談といえど決してざっくりした話にはならず、専門的かつ正確な知識を要求されるのが息子との会話の常。

これってどうしてなんだろう?
って考えると、言葉が持つ役割をどう捉えるか、なんだと思う。

ヒトは、獲物の位置など必要な情報を仲間とシェアするため、言葉を発達させてきた。
一方で、傷つき、弱った仲間をいたわるための言葉も編み出してきた。
前者は、具体的で客観的な言葉、後者は、抽象的で共感的な言葉。

このどちらをも、同じ「言語」として扱えるのがヒトの脳だと思うけれど、その発達具合には個人差がある。

どちらかといえば、わたしは客観的な言語に偏るタイプ。目の前の人が傷つき、共感を求めていたとしても、「どこがどのように痛むのか?どんな対処が必要か?」と具体策を求めてしまう。
幼い子が、ただなんとなく不安で甘えたい気分のときも、「ごはん?眠いの?調子悪いの?」と原因を探したくなる。

画像2


このようなタイプ、おそらく自分自身に対しても「共感的」になりにくい傾向があると思う。
自分の中にネガティブな感情が湧くと、瞬時に「なぜ?」「どうしたら良くなる?」と問題解決思考が働き出す。
ある意味、傷ついてる自分に耐性がないのかも。

人が愚痴をこぼしたり、ただ話を聞いてほしい、という時も、いらんアドバイスや知らんふりをしてしまう。
実は自分が一番、愚痴を聞いてもらいたかったり、なぐさめてほしかったりするんだけど・・それに気づけない。



わたしが「自己共感」というスキルに出会ったのは、そしてNVC(非暴力コミュニケーション)を学びだしたのは、ここ1年くらいのこと。初めは、学んだことをどう実生活に活かせばいいか分からなくて、いくつかの事例を追体験するだけだった。
ある時、人から誤解されて「悲しい」「恥ずかしい」という感情にしばらく耳を澄ませていたら、「仲間にいれてほしい」という心の声が聞こえてきた。


ああ、仲間に入れてほしかったんだね、君は・・!

その声が、NVCの言葉でいうと「ニーズ」。

人はみな、「ニーズ」を満たすため行動したり、コミュニケーションを試みている。
でも、ニーズを認識する前に「感情」というフィルターがかかって、わからなくなる。「恥ずかしい」と思ったら、その「恥ずかしい」を隠そうとしたり、消そうとして頑張っちゃうから、その奥の「仲間に入れてほしい」というニーズが見えなくなる。

画像3

ネガティブ・ケイパビリティ(※)という言葉がある。Negative(=後ろ向きな)Capability(=能力)という一見矛盾するこの言葉。何かを決断したり実行するのではなく、「なんもしない」という状態に耐える力。
これって、子育て中は絶対に必要な気がする。
別の言い方をすると「見守る」が近いかな。

親という字は「木の上に立って」「見る」が語源だそう。
うう、口も出したい手も出したい、そんな状況でもあえて「黙って、見守る」そんな能力、子育ての中で知らずしらず培われてるのかも。
それを自分に当てはめてみると・・・「不安」「もどかしい」「途方に暮れる」そんな感情に自分を宙吊りにして、耐える。

耐えるのが辛い時は、「不安なんだね」「〇〇だったんだね」と自分に寄り添うように言ってみる。
するとなぜか、急に呼吸がしやすくなり、「そうなの〜。不安だったのー」と素直に吐き出せる。他でもない自分自身が、自分に共感してはじめて、「本当は安心したいんだよねー」というニーズを表に出せるのだ。

画像4

このやり方を覚えてから、格段にラクになった。誰かとコミュニケーションがうまくいかなくてモヤモヤしたときも、「その感情、どこからくるのだろう?」と考えると、スッと腑に落ちる。

「仲間に入りたかったんだね、はいはい」
ニーズに気づいたあとは、それを満たせなかった自分をヨシヨシしてあげればいい。うまくいかない時ほど、自分の落ち度、と捉えて落ち込んでいた以前と比べると、真逆の対応だ。

そうやって、自分に許しを与え、なぐさめる習慣ができつつある今日。
よく考えれば、人は生まれた時から数知れない失敗を重ねて、いま生きている。どれだけ失敗して、自分に失望しても・・最終的に、生きている。
それこそが、希望であり、ネガティブ・ケイパビリティが日々育まれてきた土壌なんだと思う。

(※)https://wired.jp/2020/03/19/negative-capability/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?