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『「やりがいのある仕事」という幻想』/ 森博嗣 読了
母におすすめされて、買ってもらった、「やりがいのある仕事」という幻想』を読了。
この本の中身を雑に表現すると、「仕事にはお金を生み出す以外に特に意味はなく、ましてや『やりがい』を仕事に求めるのは大変アホくさい話である」ということ。
両親の、特に母の教えのおかげで、私は仕事にやりがいを求めることはないと思う(まだ働いていないので知らん)。少なくとも、働いた分、お給料がいただければよいと思うタチの人間である。できるなら、働きたくない。"遠い親戚のおじいさんが大富豪で、会ったこともないのに遺産を相続してくれて、私が不自由なく生きられるほどのお金が突然手に入る" とかいうことが起きれば是非働かずに生活したい。
そう思うのは私の勝手で、そう生きるのも私の勝手だ。しかしながら、他人とコミュニケーションをとるとどうしても、私の価値観がズレていることを感じる。「どこの企業に就職したいの?」「仕事で成し遂げたいことはある?」「20年後、会社でどんな立場にいたい?」就活をしていると、こういう質問を最近よくされる。
そこでバカ真面目に「実は仕事はあんまりしたくない」とかいうと生きられるものも生きられないので、テキトーに「メーカーとか行きたいですね」と回答する。
自分の中の価値観は定まっていると思っているけれど、こうも何度も「仕事にやりがいを持たせる系」の質問をされると、不安になってくる。
やっぱりこんな甘い考え、通用しないよな。
そんな私の揺れる気持ちを、森博嗣さんは真っ正面から肯定してくれた。
「人は働くために生きているのではない」
~(中略)~
僕は、働くという行為が、そんなに「偉い」ことだとは考えていない。
(まえがきより)
働いている人に対して、「頑張って自分の身を削っていて凄いなぁ」という意味で「えらいなぁ」と思うことはある。だからといって身分の差が現れるわけではない。自分でいうのもなんだが、学生だって「えらい」(心のコウペンちゃんが叫ぶ)。
森博嗣さんの考え方は大変合理的で、理にかなっている。ズバズバ感情的なものを切り捨てるので、少し冷たい印象を受けるけど、私はこの方の考え方が好きだ。
以前、私の友人が、パートナーと喧嘩した話をしてくれた。友人は、分担した家事を丁寧にやらないパートナーに、少しおどけた感じで注意したそう(水出しっぱなしにしないで、とか、出しすぎないで、とかそのぐらいの注意)。するとパートナーが言った言葉が信じられなかった。
「俺は働いてるんだ」
働いているからなんだ。そんなに偉いのか。だったら「俺が働いてるし、家事代行サービスでも頼もうか」ぐらいの気概で言えよ。ちなみにそのパートナーさんは学生である友人の家に居候している。人のパートナーの話だけれど、本当にキレそうになった。
働いていようといまいと、何も立場は変わらない。考え方、スキルは変わるかもしれない。それでもそこに身分の差は現れない。少なくとも、『これは経費で落ちません!/ 青木祐子著』の森若沙名子が言うように、仕事をしてお給料をもらっているなら、それで"イーブン"だ。ボランティアでやってて給料も出なくて、身を削ってやってんだっていうなら、凄いえらいと思うが、それはこちら側が「えらいなぁ」と思うだけであって、「自分は働いていてえらいんだぞ。ハッハッハ」的に誇示するのはちゃんちゃらおかしい。
人は、特に日本人は、「仕事」にとらわれすぎているように思う。「仕事はつらいものだから、逃げないでやっている人がえらい」とか、「働いていないと生産性がない。生産性がない人は生きている価値がない」とか。私からすると、自分が辛い思いをしていることをなぜ人に対しても強要するのかわからない。この本では、なんで日本人が「仕事」に執拗に思いを馳せるのか、についても歴史的な面から説明してくださっている。
私は働かない割に、趣味にお金を使う。これが面倒を起こしている。やっぱり働かないと趣味にお金をつぎ込めないので、私の生きがいは得られない。きっと数年後、みんなと同じように就活をして就職していると思う。けれど、そこに「やりがい」とか「いきがい」をのせることはない。この本のおかげで、お金を得ることを目的に仕事をすることは何ら引け目を感じたり、悪いと感じたりすることではない、と思える。
仕事に対して、人と違う感覚を持っていると感じている人には、迷わず進めたい一冊。そうでない人にも、オススメ。
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