図1_初形図_

【06:渺茫/盤瀛の揺籃の完全性】(x3_ヽ)_ 19.12.07.

本NOTEは先日発表した「渺茫/盤瀛の揺籃」の完全性について綴る。

1.検討を始めるに当たって

基本方針として、玉は九段目の方に向かって逃げることとし、角打ちの検討対象を次の通りとした。

   玉の居る段数      検討対象とした角打ちの段数
―――――――――――――――――――――――――
――――――――
    四段目      二~八段目(一・九段目は以遠打扱い)
   五~九段目     三~九段目(一・二段目は以遠打扱い)
―――――――――――――――――――――――――
―――――――
※例外として、初手▲4二角は以遠打扱いせずに検討を行った

2.初手▲2四角・▲3三角・▲4二角・▲5一角

あらかじめ言及しておくと初手の検討量は全体の95%を占めており、2手目以降の検討量はたった5%しかない。検討量が膨大なので初手はいくつかのNOTEに分けて貼り付けていくことにした。リンク先のNOTEのままでは見づらいはずなので、その時はメモ帳などにコピペしてご覧いただきたいと思う。

図21 初手▲3三角▽2四歩

さて、初手▲2四角はもちろん▽同玉と対応するわけだが、初手▲3三角の時▽2四歩▲同角成/不成▽同玉とした図と比較すると持駒が歩1枚多いだけの図になる。すると、右図の不詰を確かめれば、必然的に左図の不詰が確定するのだが、気がついた時には初手▲2四角の検討を終わらせてしまっていた。一応検討した結果を下に示そう。

ーーー(※1GF)はじまりーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
24角ー同玉34金ー15玉で不詰
24角ー同玉35金ー同玉45金ー同玉で不詰
24角ー同玉35金ー同玉46金ー同玉で不詰
24角ー同玉35金ー同玉34金ー46玉で不詰
24角ー同玉35金ー同玉36金ー同玉で不詰
24角ー同玉35金ー同玉25金ー同玉で不詰
24角ー同玉35金ー同玉26金ー同玉で不詰
24角ー同玉35金ー同玉44銀ー36玉で不詰
24角ー同玉35金ー同玉46銀ー同玉で不詰
24角ー同玉35金ー同玉36銀ー同玉で不詰
24角ー同玉35金ー同玉24銀ー36玉で不詰
24角ー同玉35金ー同玉26銀ー同玉で不詰
24角ー同玉35金ー同玉47桂ー36玉で不詰
24角ー同玉35金ー同玉27桂ー36玉で不詰
24角ー同玉35金ー同玉36歩ー46玉で不詰
24角ー同玉23金ー15玉で不詰
24角ー同玉25金ー同玉で不詰(1m5)
24角ー同玉14金ー同玉で不詰(50)
24角ー同玉15金ー同玉で不詰
24角ー同玉33銀ー15玉で不詰(1m9)
24角ー同玉35銀ー同玉で不詰(2m5;※1GG)
24角ー同玉25銀ー同玉で不詰(1m15;※1HL)
24角ー同玉13銀ー15玉で不詰(1m45)
24角ー同玉15銀ー同玉で不詰
24角ー同玉36桂ー15玉で不詰
24角ー同玉16桂ー15玉で不詰
24角ー同玉25歩ー15玉26金ー同玉で不詰
24角ー同玉25歩ー15玉14金ー26玉で不詰
24角ー同玉25歩ー15玉16金ー同玉で不詰
24角ー同玉25歩ー15玉24銀ー16玉で不詰
24角ー同玉25歩ー15玉26銀ー同玉で不詰
24角ー同玉25歩ー15玉16銀ー同玉で不詰
24角ー同玉25歩ー15玉27桂ー16玉で不詰
24角ー同玉25歩ー15玉16歩ー同玉26金ー同玉で不詰
24角ー同玉25歩ー15玉16歩ー同玉27金ー同玉で不詰
24角ー同玉25歩ー15玉16歩ー同玉15金ー27玉で不詰
24角ー同玉25歩ー15玉16歩ー同玉17金ー同玉で不詰
24角ー同玉25歩ー15玉16歩ー同玉27銀ー同玉で不詰
24角ー同玉25歩ー15玉16歩ー同玉17銀ー同玉で不詰
24角ー同玉25歩ー15玉16歩ー同玉28桂ー17玉で不詰
24角ー同玉25歩ー15玉16歩ー同玉17歩ー26玉で不詰
ーーー(※1GF)おわりーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※以降貼付したリンク先のNOTEに記載してある検討結果の表記もこのような感じになっている。
検討に使った(※1GF)や(※1HL)などという記号について説明しておこう。数字は手数(初手は1)を表し、アルファベットは全く同図となった場合に検討を省略するために振った図番を表している。予想以上に初手の検討量が膨大だったので(※1A)~(※1Z)を早々に使い切ってしまい、(※1AA)~(※1AZ)、(※1BA)~(※1BZ)、(※1CA)~(※1CZ)・・・・・・というようにどんどん増えていった。結局、最後は(※1PR)まで使用することとなった。

また、文末の(〇m〇〇)はソフトの不詰判定が出るまでにかかった時間(30秒以上の場合のみ)を表している。例えば、不詰判定が1分23秒で出た場合(1m23)と記述している。

次に、初手▲3三角と▲4二角の検討を下記のリンクに示す。

ところで、角成/不成という表記の仕方はどちらでも王手が可能と言う意味がある。打ち歩詰めとなるような局面が検討中に一度もなかったので、全てにおいて角成の方で検討を行っている。角成の方が不詰と確定すれば、角不成も不詰だと判断した。

初手▲3三角▽2四歩の検討をして▲4二角の検討を始めようとした際に、代わりに金を合駒に使えば検討が楽になるのではないか?と考えた。理由は2つある。1つ目は、3手目から▲2六(金/銀)▽同玉▲4四角成/不成▽3五合とした場合、3五の合駒にヒモが付いていると不詰になりやすいだろうと予想したため。2つ目は下図に示す通り、先に▲4二角▽2四金▲同角成/不成▽同玉の検討をしておくと、より持駒が少なくなる▲4二角▽2四金(▲2五金/▲1四金)▽同玉▲2四角成▽同玉の検討を省略できると思ったためだ。

図22 初手▲4二角+

だが、この助平心が命取りとなり、▲4二角の検討量は▲3三角の1.5倍に膨れ上がって余計に時間がかかってしまったというオチがついた。▲4二角に対しても▽2四歩で良かったな、と今になって後悔している。検討の結果、▲3三角も▲4二角も▽2四合以下不詰であることが分かった。しかし、▲3三角▽2四歩と▲4二角▽2四金以外の合駒については検討していないので、それぞれどの合駒が最善なのかは分からない。

初手▲5一角に関しては▲4二角の以遠打扱いとして検討を省略した。

3.初手▲2六角・▲3七角・▲5九角

▲4八角は作意手順なので検討対象から外れている。▲2六角は▽同玉以下、▲3七角・▲5九角は▽2六銀以下不詰である。

4.初手▲2五金・▲2六金・▲1四金・▲1六金

初手金打は全て▽同玉以下不詰である。▲1四金▽同玉は九段目の方へ逃げるという基本方針に反した手を指しているようだが、この理由は検討量を減らすためであり、詳細は次の5項で述べる。

5.初手▲2四銀・▲2六銀・▲1六銀・▲2七桂

初手銀打は全て▽同玉以下不詰である。▲2四銀▽同玉も(4項の▲1四金▽同玉と同様に)基本方針に反した手なのだが、下記の検討に示す通り、4項での検討で不詰と明らかにした図と被る図を省略できるメリットがある。例えば、▲2五金▽同玉▲3四銀▽同玉(※1FA)と▲2四銀▽同玉▲3四金▽同玉は同図なので以下(※1FA)で不詰と略記しているわけだ。

24銀ー同玉34金ー同玉以下(※1FA)で不詰
24銀ー同玉35金ー同玉以下(※1FR)で不詰
24銀ー同玉23金ー同玉以下(※1FM)で不詰
24銀ー同玉25金ー同玉以下(※1DWより少ない持駒)で不詰
24銀ー同玉14金ー同玉以下(※1EZ)で不詰
24銀ー同玉15金ー同玉以下(※1ER)で不詰

「より少ない持駒」の意味についても記しておこう。▲2五金▽同玉の検討の図番は(※1DW)と振ってあり、不詰だという検討は済んでいる。よって、(※1DW)よりも持駒が銀1枚分少なくなる▲2四銀▽同玉▲2五金▽同玉の不詰は検討せずとも自明なので、図番を振らずに(※1DWより少ない持駒)と表記してある。

図24 ※1DW

残りの、初手▲2七桂は▽1六玉以下不詰であった。

6.初手▲1六歩

初手▲1六歩は検討量全体の50%を占めるほどにウェイトが大きい。いくら検討しても終わる気配が無かったので、何度も心が折れかけた。▲1六歩に▽同玉は詰んでしまうので▽2五玉と逃げる。▽2六玉でもいいのだが、1六に歩があることで▲1六角・▲1六金・▲1六銀による王手の検討を減らそうという意味合いが強い。

しかしながら、現実は無情だ。今まで死ぬような思いでやってきた角打・金打・銀打・桂打の検討セット(NOTEの06A~06E)を”1周”とすると、▲1六歩▽2五玉の局面というのはいわば”2周目”のスタート地点に立っている状態に過ぎなかったのだ。

図25 歩打

思わず「鬼ってるわ……」と呟く。そして、これを図のように歩が枯れるまで”3周目”、”4周目”と繰り返さなければならない。まるで阿鼻叫喚の暗夜行路……玉が横にゆらゆらと移動していく様子はタイトルに「瀛」と「揺籃」の文字を添える理由にもなっている。

残り3周分も検討する必要があるという事実に気づいた時には、想像を絶する絶望感に意識が遠のいた。検討は苛烈で、▲1六歩だけで二ヶ月にも及んだ(トータルは三ヵ月)。そして、ついに▲1六歩には▽2五玉(以下、▲2六歩に▽3五玉、▲3六歩に▽4五玉)と横に逃げれば不詰であることを突き止めた。貼付した2つのNOTE(06F1、06F2)の文字数は合わせて56万3千。この試練をくぐった者からすると、人間を辞める感覚がなければこんな芸当はできない、と言っておきたい。

不幸中の幸いだったのは、”4周目”まで全ての分岐が30手未満で割り切れたことだろうか。手数がもっと伸びていれば発表は来年以降になっていたに違いない。

7.2手目~45手目の検討

2手目に▽2六銀と▽2六角が長手数になるのは、▽2五玉と逃げた形の耐久力が高いためだ。▽2六角の場合▲同角▽同玉でまた裸玉状態になるが、最終的に一段目まで追いかけまわして最長33手で詰むことが分かった。詳細はリンク先を参照して頂きたい。

8.感想

生きているうちに、自分が発見者でなくても完全作の天王山裸玉が見たい。
('、3[___] .。oO( ♪ コトノハ/MintJam を聴いて寝よう……

「ためになるわ」と感じて頂ければサポートを頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。