白悠(Hakuyu)

白悠(Hakuyu)

最近の記事

『瀬』

記憶が切れる、 切れる 断絶された記憶が 寄せては返す波のように 水際で、すくわれない機微を思う夜 憐憫が透けてしまったあの夜 一夜にして回り続ける僕の記憶 嗚呼、暗鬱とした記憶よ、このあぶくと共に流れておくれ___ 断絶された絶無の中、鈍い郷愁を託した夜のこと 思い出す、 夜のこと 白く、静かに、小さくほの光る繊月のことを

    • 『夢幻郷』

      明け方、夢が割れる音がした 夢幻の丘を駆けていたまどろみの裂け目で 嗚呼、 私はここからどこへ流れるのだろうか 私たちは、 このままどうなってしまうのだろうか これからに、おののいていた深く哀しい朝 夜が明けていく 夢が、裂けていく 微睡に、溶けていく

      • 『深海』

        長い、長い思考の海を泳ぐ私は魚 息継ぎの仕方も忘れて、およぐ、およぐ、 メランコリックなあぶくが湧き立つ            (わ) 記憶の尾びれと、あぶくが交差する 嗚呼、夜は長い

        • 『壮天』

          蒼白な天を飛ぶ夢をみた 手のひらを離れたカーテンのように軽やかに 渡り鳥の大群のように壮大に それでいて音はなく静かに 草花の願いを掬うように

          『Tobari』

          午前四時 希望は、まだない。 窓を覗くと、無機質で幻想的で不思議な光がゆれていた。 悲しくも、甘美な記憶をふと思い出す。 無機質な東京の空の下で一人 無機質になっていく自分の中に。

          『綻び』

          時間と共に、僕の精神は綻ぶ        (こころ) 時計と共に 心の重みのチューニングがされていく 昨今は、自動の人も多い 僕は未だに手動でゼンマイを巻く 心の重みをほどくように 昼下がりのカフェインをとるように 働き納めの後、冬の夕暮れを見るように

          『蛍』

          蜃気楼の中を、ゆれる ゆれる蛍 透けるような光が、水中を射す 明日におののく貴方が、くしゃみをしている なだめるような彼の声を思いだしながら ゆれる、ゆらめき光る蛍____

          『凍』

          回顧、回顧の渦が巻く。 時空の鈴は、虫のように鳴り響いている。 澄んだ湖に、薄氷が張る。

          『流転』

          回る、すべる、めぐる_____ なめらかな流転の中で 私たちは、呼応する 歪みの間から銀の芽が生えた あゝ、無常、無常_____。

          『朝ぼらけ』

          羨ましかったのは、なぜだろう。 含ませた憐憫は、何を種としていたのだろう。          (たね) 鮮烈な音階で、彼は打たれた。          (ぶ) 不正解の轍を、全員が踏んでいることに気付いたのは、いつのことだっただろう。 空が薄明るい。

          『朝ぼらけ』

          『漣』

          海の波に恋慕した。 全部、全部、振り捨てて。 くしゃくしゃになった忘れじの花束。 憐憫のよどみは小さくなっていく。 掠れた声で、微かでも生きていく。 「もう一度会ってくれますか」 残響めいた波を、 月明かりが照らす。

          『艶海』

          闇を統べる者は、瞳に閃光を飼う。 艶やかなる王は、声で姫を包む。 王は霧の中、憂いを鎮める。 暗晦たる海の中、見上げると 褪せぬ燐光がさざめいている。 『幻影の波に魅せられていたい。』 深いところから、小さく祈った蒼い夏。

          『渡り鳥』

          拝啓 晴れるかどうかわからない 明日を生きる貴方と私へ。 どうか、どうか と、 呼びかける。 音もなく。 渡り鳥は高く飛ぶ。

          『波の羽衣』

          届かない、海の底。 孤独の底、光る息吹。 「海の底には、どんな気持ちでも持っていっていいの?」 懐かしいあの声を響かせて。 鼓膜は、憧憬に慣れてはくれない。 しじまに身を任す朧夜。

          『波の羽衣』

          『ガーベラ』

          邂逅。 嬉々としている貴方。 自明を奇跡として描けるような時間を育てて。 貴方の前で、私は時に虫になる いくじなしの私の胸臆を 抱いている貴方は銀河の如く流麗。 夜明け前、私の轍が綻ぶ。

          『ガーベラ』

          『リア』

          慟哭。 王は、婀娜な瞳に酔う。 姫は、画の如き瞳孔に狂う。 時間が、王を引き裂いた。 永遠のファルセットが、塔の中で響く。 記憶の中に、蓮が咲いている。