求人広告クリエイティブにおける虚偽誇張と拡大解釈の違い
前回、タイパ世代が主流となっていく世の中で、果たして求人広告は旧態依然としたままで良いのだろうか、という問題提起をしました。
問題提起はしたものの、特に結論のようなものはでませんでしたが、思考をたどっていくうちに求人広告クリエイティブにおける虚偽誇張と拡大解釈の線引きが存在しない、という話に。
そして、特に誰かに頼まれたわけでもないのですがぼくがやったるわ、線引きしたるわ、という展開になったとさ。
もうしばらく前回の流れにおつきあいください。
求人広告における虚偽誇張とは
これはいちばんやったらいかんやつだでね。ようするに、嘘んこを書いとるわけだでよう。嘘の情報で人を集めようとおもったら、そらカンタンだでね。そんなもん月給100万円!未経験からウハウハ稼げるよ!って書きゃ誰かて応募するて。
と、のっけから名古屋弁でまくしたててしまいましたが、求人広告における虚偽誇張とはまさしくウソ・大げさ・紛らわしいというヤツです。いたずらに応募数を伸ばそうという意図のもと、ありもしないことを書く。この行為は断罪されるべきだと考えます。
なぜなら求人広告とは人の人生を大きく左右する可能性を孕んでいる広告だからです。
何を大げさな、という方もいらっしゃるかもしれませんが、いやいや、決して大げさな話でもありません。
ジュースの広告を見ていいな、と思って買ったらまずかった。二度と買わなければいいわけです。損失は150円ぐらいでしょうか。
ある企業の募集広告を見て応募したら採用されたがとんでもないウソの情報ばかりでブラック企業だった。あるいは犯罪行為の片棒をかつがされた。その会社を辞めたらそれは履歴書に残ります。だからといって在職し続けても心や身体にダメージを受けます。意図せず犯罪に巻き込まれてしまった場合も賞罰の欄にありがたくない履歴が残ってしまいます。
しかも仕事は生活に直結しています。嘘の情報に騙されて入社したはいいがすぐに退職、となると即失業者となるわけです。
そこからふたたび求職活動を、というのはあまりにもしんどい。しかも履歴に傷がついている。
面接時に「転職回数多いですね」と言われて「いや、前の会社は虚偽の求人広告で…」と説明したところでどれだけの面接官が「それは仕方がないですねあなたは悪くない」とおもってくれるか。
下手したら(嘘の情報も見抜けないほどのリテラシーなのか?)とネガティブなポイントが加算されてしまいかねません。
ないことをあるように見せること。
事実と異なる情報を載せること。
これが求人広告クリエイティブにおける虚偽誇張の定義です。
求人広告における拡大解釈とは
結論から言います。
ある事実をもとに、その事実を正面から見るだけでなく縦横斜め、あらゆる角度から切り取ってみる。その上で最も求職者、あるいはターゲットにとって魅力的に見える切り取り方を選択する。
これが求人広告クリエイティブにおける拡大解釈の定義です。
わかりやすくするために例をあげます。
たとえばベンチャーで、オフィスがとても狭い、という場合。事実としてはオフィスが狭いということにほかならないのですが、その狭さによってポジティブな何かがないかを考える。
オフィスが狭い…だからいいことは何か。
社員同士の距離が近い。しかも物理的に近い。
そうなると意思疎通が図りやすい。
コミュニケーションも活発になる。
共通の話題が多くなる。
もともと人間関係がよさそうな会社だ。
ここから…
【転職後のお父さんは会社の話をやたら楽しそうにする】
みたいなコンセプトを立ち上げる、と。
その上で、虚偽にならないように実際に働いている人にヒアリング。ここでまんま事実として裏付けが取れれば最高なんですが、まあ、若干の軌道修正は求められたりします。
(でも、不思議とこの仮説が当たることが少なくありません)
ひとつの事実からストーリーを発展させていき、ハッピーな魅力をみつける。あるいは社員も気づいていなかったような特徴をあぶりだす。
そうすることで求職者へのアピールになる、だけでなく、既存社員にとってのモチベーションやコミットメントの向上にも寄与する。
それが、拡大解釈の正体なのです。
虚偽誇張と拡大解釈の違い
ここまで読み進めていただければおわかりだとおもいます。
求人広告クリエイティブにおける虚偽誇張と拡大解釈の違いは、誰も幸せにならないか、みんながハッピーになるか、です。
え?虚偽誇張は採用側にとっては都合よく労働力を確保できるからハッピーじゃないのか?
いやいや、嘘の情報で人を集めてもなんにもならないことぐらい、わからないのかなとおもいます。入社しても辞める、を繰り返すことって経済合理性から考えるまでもなく何のプラスにもなりませんよね。
そして、そのような情報を流し続けること、その情報で面接や採用を行ない続けていくと、ネガティブなバイブレーションが澱のようにたまっていく。気づけば本物のブラック企業になっていたりして。
たぶんそういう会社はこの先、どうあがいても大きくなれないどころか存在自体が危ぶまれるんじゃないか。
それぐらいには世の中、ヘルシーになりつつあるとおもいます。
AIがそのへん、一掃してくれるんじゃないかと期待しています。
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