トラック野郎に憧れて

今回は映画の話です。

日本のお正月映画の決定版、といえば「寅さん」ですよね。大晦日が近づくと封切られる、あの国民的娯楽映画。ぼくの子供の頃は夏休みと冬休みは必ず「寅さん」でした。あるいは東映まんがまつり。

ちなみに正式名称は『男はつらいよ』ということをご存知でしたか?ぼくはずいぶん長いこと知りませんでした。男はつらいよというタイトルの映画ならきちんと男はつらいよと呼んでほしかった。それを主人公の、しかも愛称で呼ぶからややこしいことになるんです。

これ、外国映画にあてはめて考えるとおかしなことに気づけますよ。

誰が『ゴッドファーザー』のことを「コルレオーネ」と呼びますか?
誰が『バックトゥザフューチャー』のことを「マクフライ」と呼びますか?
誰が『パルプ・フィクション』のことを「ヴィンセント」と呼びますか?
誰が『シャイニング』のことを「REDRAM」と呼びますか?
誰が『2001年宇宙の旅』のことを「HAL9000」と呼ぶでしょうか?

最後のはなんかカッコいいですけど。
そのひとつ前はセリフですけど。

いささか(いささか、って日常生活で言ってみたい言葉のひとつです)引用がくどくなりましたが、本題。

「寅さん」は音にすると「とらさん」ですよね。この「とら」がぼくの中では「寅」ではなく「トラ」と変換され、結果的に「トラさん」≒「トラック野郎?」という勘違いを起動させてしまったのです。

あるお正月休みの出来事です。

父親「おいひろみち、映画でも行くか?」
ぼく「うん!」
父親「なにがええかな、とらさんやっとるかな」
ぼく「トラさん?みたいみたい!」
父親「よしわかった!とらさん観に行こう」
ぼく「ヤッター!!!」

そののちの映画館における1時間30分は子供にとって苦痛以外のなにものでもありませんでした。そりゃそうでしょう、菅原文太とキンキンが繰り広げるシモネタや小学生レベルのギャグを楽しみにしていたところに、かなりソフィスティケートされた笑いと人情噺をこれでもか、といわんばかりにぶつけられたわけですから。

いやもちろんいまならわかりますよ。いまなら「寅>トラ」ですよ。しかし当時はただの地方都市の鼻垂れ小僧の真似っ子小猿ってなもんです。粋だの鯔背だの言われてもピンともこないわけです。

父親「寅さん面白かったな~」
ぼく「…いいや」
父親「なんだあ、お前、寅さんきらいか」
ぼく「すがわらぶんたがでてこん」
父親「は?」
ぼく「きんきんもでてこん」
父親「は?」

おもえばこのときぐらいからですかね、父親とコミュニケーションが上手く取れなくなったのは。ってここまで書いてまだやり残しの仕事があることを思い出したので『トラック野郎』に寄せるぼくの熱い想いはまた次回に!

そういえば前職の大阪オフィスのビルには『男はつらい』という居酒屋がありました。出張のたびに行こうよ、と部下を誘うのですが「ハヤカワさん、あそこほんまつらいですわ。がんこいきましょ。がんこいってからおいちゃんの屋台餃子でシメましょ」と頑なに拒まれました。つらい。

BGMはいすゞ歌うヘッドライトのオープニング曲でした。
これね。わかんないひとおおいとおもうのでようつべ貼ります。
https://www.youtube.com/watch?v=InRiYPhbrWQ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?