求人広告の「応募資格」の書き方 Vol.2
<前回までのあらすじ>
求人広告における「応募資格」は求職者にとって最大の関心事。ゆえに具体的に書くこと。特に経験者向けのマスト条件はピンポイントで絞り込んだほうが効くぜ。また就職差別に繋がる情報は書いてはいけません。
みなさんこんばんわ。毎週月曜日にお送りしています、求人広告の書き方講座。前回に続き「応募資格の書き方」についてコロコロとお話しして参ります。
今回は未経験者募集の場合と「ベター条件」の書き方がテーマです。
未経験者の場合は幅を広めに
この見出しを見て「あれ?いつもと言ってることちがくない?」と思ったあなた。すごいですね愛読者ですね。そこまで読んでくださってありがとうございます。
そうです。ぼくは求人広告というものは基本的に1名採用予定の場合、1名応募の1名採用がベストだと思っています。
しかしそれはあくまで採用要件が明確な経験者の場合。経験を問わず、どちらかというとマインドやポテンシャル重視で採用する未経験者募集の場合は、入口をあまり狭め過ぎると事故ります。
では、どうすれば狭めすぎないことになるのか。入口の幅をある程度ひろげることになるのか。
それは、書きすぎない、ということです。
これぜったいに応募できないヤツ〜
よくあるパターンが以下のような応募資格です。
なんやねん。誰やねん。おるんかいこんなヤツ。
というツッコミが関西方面からうおおおンと聞こえてきそうです。確かに何らかの職種経験は問うてはいません。しかし、だからといって欲しがりすぎではないか。
未経験だからって資格やスキル以外をたくさん求めていいってわけじゃないよ!
で、作り手に聞くと「いや、全部じゃなくていいんです。どれかひとつに当てはまれば」とかエクスキューズするんですけど、だったらそう書けや、です。そしてたとえそう書いてあったとしてもこんないろいろ欲しがる募集においそれと応募なんてできないですよね。
未経験、幅は広めに。といいつつも押さえておくべきは「これ私のこと?」感。求職者が募集をジブンゴトととらえてくれるようにするには、きちんと要望を整理して厳選すべき。
少なくとも相反するような内容はひとつにぶちこまないこと。上の例でいえば「チームリーダー」系の要素と「ひとりでコツコツ」系の要素はバッティングしますよね。そういうのを混ぜるなキケン、というわけです。
クライアントとの共通認識を持つ
やはり大切なのはクライアントに取材する時に、どんな人が理想的なのかの共通認識を握ることだと思います。
たとえば、こんな◎◎な人?というやりとりですね。こんな人の空欄に入るのは具体的な企業名でもいいし、キャラがハッキリしている芸能人でもいい。お互いのイメージがブレてなければそれでいいです。
いかにもリクルートにいそうな、とか、JALっぽい感じの、といった会話でわかりあえるのが理想ですよね。ツーカー、みたいな。
そのためにはふだんから雑談を通してお互いを深く知ることが欠かせないのですが、おそろしいことにコロナ以降ではリモートでの取材がスタンダードになってしまいました。
効率はいいんだけど、ふだんの蓄積がないから、まあ引き出せるネタが浅いんですよね…あれ、なんとかならないもんでしょうかね。リモート飲みでもいいのでクライアントとはコミュニケーションを深めておくべきです。
「未経験歓迎=誰でもいい」じゃない
採用側の話をしますと、時々あるんですよね、誰でもいいから来てくれれば、みたいな募集。だけどそれって本当に一握りの不人気職種です。
ですし過去の経験則からいくと「誰でもいいよ」と言う採用担当ほど、あれがダメ、ここがアウトといってぜんぜん選考通過しなかったりします。
そして応募する側のマインドとしては、未経験募集に応募するけど私は「世界で一つだけの花」なわけ。誰だって自分のことを大量生産汎用品というつもりはさらさらないわけです。それはプライドなんていう高尚なものではなく、ごく当たり前の自尊心。
だから、そこをきちんと掬ってあげる。これができるかできないか、が「経験こそないけど採用したい人材」を引き当てる勘所になります。
そのためには前述したようにクライアントの採用担当者と密にコミュニケーションを取りながら、その会社のその仕事に未経験から就いたとして、どんなタイプ、どんな思考性、どんな志向性の持ち主なら一人前になれるか、活躍できそうかを解像度高めにイメージすること。
そうして立ち上げた人物像を要素分解して、上位3つぐらいを資格として記述するのがベストです。
前回同様に身近な例で恐縮ですが、ぼくの前職でメンバークラスのコピーライターを未経験から募集するとき、どんなタイプかを想定しました。
これをこのまま応募資格に明記してもいいのですが、若干夢がないというか、理解は早いけど共感や感動は薄いですよね。つまりコミュニケーションスピードが遅い。
そこで
おそらく当時(2000年)だから成立した、というか許された表現ではありますが、この応募資格を掲げたコピーライター募集に応募してきて、狭き門を見事に通過した人材は、見事なまでの根性の持ち主でした。地獄系プロダクション仕込みのぼくのモーレツしごき教室によって髪の毛が真っ白になってでも喰らい付いてきましたね…。
ベターの書き方
最後にマスト条件に対するベター条件の書き方について。マストというのはスペックに近いからある意味シャープですね。絶対にこれは必要ですよ、というハードルです。
一方でベター条件というのは「あったらいいな」という条件。なのでついいろいろと盛り込んでしまったり、欲が出てしまいがち。
ですが、安易なベターの上乗せは危険です。せっかくマスト条件を満たして「よし、応募してみるか」と意欲的になった応募者に冷や水をぶっかけるようなマネはしてはならない。そこは慎重にならざるを得ません。
掲載する条件として選ぶ基準は「これがあれば即戦力として活躍できる」一本に絞りましょう。あくまで応募者の目線でチョイスしてください。
たとえば未経験から調理スタッフを募集するなら・・・
これを会社側の都合目線で選ぶと「これがあればこのポジションも任せられるな」とか「これがあると事業拡大の速度が一気に上がるな」みたいなベター条件だらけになり、応募する側から見ると「なんだかんだ言ってこの辺りの経験がないと採用してもらえないんじゃ…」と猜疑心がどんどん膨らんでいってしまいます。
そう、求職者のマインドはいつだって満月の夜の黒鯛ばりに猜疑心満点なんです。
不安でいっぱいの未経験者の背中を押してあげるような応募資格を書いてあげてください。大切なのはやさしさ、思いやりかもしれません。
以上、応募資格の書き方でした。
次回はいよいよ書き方について解説する箇所がなくなりつつありますが、そうだ!データの書き方についてお話します。
そんじゃーね!
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