求人広告の募集データの書き方 Vol.2
前回は募集データの書き方をレクチャーしますとかいいながら精神論というか、求人広告界隈に対する愚痴みたいになってしまい申し訳ないス。
今回こそ具体的なテクニックについてお話したいと思います。
大切なのはバランス
もはやデータの「書き方」というより「扱い方」に近いのですが、求人広告、特に中途採用における情報提供の場合、いちばん意識を注ぐべきは全体感になります。
たとえば未経験者募集なのに、月給60万円ってにわかに信じがたいですよね。よっぽど頭の中がお花畑な人でもない限り、何か裏があると疑ってかかるはず。
でも実は、少し前までは実際にあったんですよ。未経験で月給60万円。景気がいい頃の運送業界がそうだったんです。ヤ◎トさんとか佐◎さんとかのセールスドライバー、あるいは中距離ドライバーの募集では「いきなり60万円支給!」みたいなモメンタムあふれる文言が踊っていました。
ただ、もうおわかりだと思いますが、この手のガテン系職種はかなりハードワーク。なり手も少ないし、離職率も高い。人手不足が常態化しています。そこで給与額を限界まで引き上げる策を取らざるを得なかったんですね。
ことほど左様に、バランスの悪い募集データというのは裏に必ず何かあるわけです。
逆にいえば、ある程度キャリアやスキルを求めているにも関わらず、給与が低いなんていうのもよくないですね。
給与だけでなく、ハイエンドな人材を求めているのに契約社員だったり、夜勤があったり、週休1日だったりするのもよほどの事情がない場合、応募数をグーンを落とすことになります。
ただし上記の場合でも納得度の高い理由や背景があり、その代わりに給与が相場の水準より高いといった好条件があれば求人として成立します。
結局はトレードオフ
このバランスについて、求人広告制作初心者のうちはなかなか直感でつかむのが難しいかもしれません。ある程度数をこなして相場観が身につけば、自然と「臭うな…」となります。
ただ、初心者でも違和感を覚えるようになるため、ひとつアドバイスすることがあるとすればそれは『トレードオフ』で考える、ということが言えるでしょう。
未経験者募集なのだから給与は平均的な水準であればいい。にも関わらず高い給与を払う場合は、必ずその給与とトレードオフ(相容れない関係)となる何かがある、と見るべきです。
ハイエンドな人材を求めているのに契約社員、またはシビアな労働条件の場合。それとトレードオフの関係となる好条件があれば成立するわけですね。そしてその場合、トレードオフのどちらかが突出していればいるほどインパクトがあり、応募に好影響を与えることになります。
場合によっては広告クリエイティブの訴求内容そのものになることも。
「タイの工場長はお金が貯まる。」
いまから30年ほど前の求人広告です。ある中堅メーカーがタイにある自社工場の責任者を募集しました。大手とは異なりそんなに給与は出せません。転職と同時にタイ勤務。経験者とはいえなかなかチャレンジングな条件です。
そこで求人広告クリエイターが着目したのが現地の物価。衣食住の全てが日本に比べて相当安い。平均の金額を調べて列記しつつ、上記のキャッチコピーで構成された求人広告は大成功。当時の掲載媒体版元だったリクルートの制作版社内報にも取り上げられ、審査員から絶賛されました。
ちょっと募集データの書き方からは脱線してしまいましたが、ただこれも勤務地というデータをどう料理するかというアイディアですので取り上げさせていただきました。
ちなみにこの広告を作ったのはぼくの前職の上司でした。
入稿前にもう一度
と、いうことで募集データを書く時のポイント、トレードオフを意識した上でバランスを取るというテクニックのお話をしました。いま手元に入稿前の求人原稿を持っているクリエイターのみなさんがいたら、ぜひもう一度、ザッと目を通してみてください。
仕事内容…きちんと対象者に合わせた情報提供ができているか
応募資格…仕事内容や給与との見合いはとれているか
給与額…高すぎる、または安すぎるなどの異常値はないか
勤務地…通勤に関するメリデメはないか
勤務時間…労働基準法を遵守しているか
待遇・福利厚生…コメントを添えられるものはないか
たったこれだけです。これらのバランス、釣り合いがきちんと取れているか。違和感を覚えるところはないか。
もしおかしな点があればすかさずクライアントに提言しましょう。クライアントは悪気があってデータを出しているわけではありません(きっと)。せっかくお金を出して求人広告を出すのだから少しでも効果が良いほうがいいでしょう。その視点で提案すれば必ず理解してくださるはずです。
さらに、ネガティブポイントがあった場合、フォローのコメントがあるか。応募の足を引っ張りそうな条件があっても、納得性の高い背景や理由、裏付けが書いてあればプラスにはならないまでもマイナスをゼロに近づけることはできそうです。
キャッチコピーが鋭かったり、ボディコピーで泣かせたり。そういうのもクリエイターとして腕のふるいどころだったりしますが、しかし、最後は水面下、つまり地道な募集データのチューニングがCVにつながる。
ぼくはこれもまた、求人広告の醍醐味であると思うのです。
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