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マネジメントの盲点

会社という世界にはマネジメントというものがあります。

「いや、うちの会社にはそういうものはないんですよ」

という人も中にはいるかもしれませんが、かなり少人数で運営されている組織ではないでしょうか。マネジメントは業態にもよりますが20人ぐらいから自然発生し、50名を超えるとかなり意識的にポジションが作られるようになってきます。

このマネジメント、大きく分けてヒト・モノ・カネの3つに分けられます。モノは業務に置き換えたほうがわかりやすいかもしれません。つまり人のマネジメント、業務のマネジメント、そして予算のマネジメントですね。

会社社会では現場で成果を上げると「よしよしこいつはデキるな。こいつに何人か兵隊を持たせてコピー人間をたくさん作れば成果×人数になってホクホクだぞ」と経営側の人たちがそろばんを弾きます。

かくして金の卵を産むガチョウ新人マネージャーが誕生するのです。

しかし、ここで大きな問題が発生します。

ほとんどの成果を上げたデキる人はそれまでの人生でマネジメントについて学んできていません。おそらく義務教育では習っていないはず。

なんとなく大学にはそのようなものを専攻する学部があるような気もしますがなにぶんわたしは大学に行っていないのでわかりません。しかしあったとしても大学生の本分はいつの時代もサークルかバイトかゲームかTikTokなので、まともに学んでいない可能性があります。

「お前、来月の昇格枠に入ってたぞ。おめでとう、マネジャー爆誕だな」

みたいなことを上司に言われて、お、ということは昇給もするのかな?やった、今夜はあゆみをアパートに呼んですき焼きでもやるか!そしてそのあとはムフフ、というような昭和な妄想に耽っていたデキる人は、マネージャー就任するやいなや途方に暮れることになります。

マネジメントって何するんだっけ?

デキる人はそれなりに現場でデキていたので、業務のマネジメントは上手くいく確率が高いです。

成果が出るまでのプロセスを細かく分解して、それぞれの手法を汎用化・明文化します。その上でメンバーごとの進捗を管理すれば、人にもよりますがおおむね職務を果たせると思います。

予算のマネジメントもそのうちに慣れてくるでしょう。

最初は期待に答えたい気持ちからつい背伸びした目標を設定するのでズッコけることが多いのですが、そのうちマーケットの状況や競合の動きなど日経新聞に書いてあることを織り込んだ現実味プラスアルファな計画を立てられるようになります。諸君、学校出たら勉強しよう。

問題は人のマネジメントです。これが一筋縄ではいきません。

昔、昭和から平成の真ん中あたりまではナニコラタココラでなんとかなっていました。しかし今は令和です。どんな行為にもハラのふた文字がつけばアウト。しかも空前の人手不足ですからメンバーが辞めてしまったらハイ補充、というわけにもいきません。

故に最近のマネジメントの現場では部下をいかに褒めて伸ばすか、がポイントに。そのためにもマネジャー自身が尊敬される人物になるべく、日頃から徳を積まなければならないというハードモードに突入しています。

しかも令和のヤングはワークライフバランス重視かつ競争意識が皆無。ちょっと叱るとすぐに泣き出して部屋から出てこなくなるのでニトログリセリン並みの慎重な取り扱いが必須です。

わたしは15年ほど前、最大170名の組織をマネジメントしていたのですが「現代でなくて本当に良かった」と心底ホッとしています。当時だってまともにワークしていないのに令和のマネジメントなんて無理無理ムリムリカタツムリです。

かくしてデキる人だった新人マネージャーは笛ふけど踊らずのメンバーに翻弄され、また人としての徳を積むために滝に打たれたり片眉を剃って山に籠ったりを繰り返すうち自らのメンタルが崩壊する羽目に。

そんな彼をみて、抜擢した経営陣がタチカワブラインドを指で広げながら窓の外を眺めて苦々しく放つフレーズはこれです。

「やはり名選手、名将にあらず、か…」

自らの任命責任はどこ吹く風ですね。


  終
制作・著作
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では身も蓋もないので、

ここで過去マネジメントでやらかしまくってきたわたしから、たったひとつだけ、上手いこといったやり方を伝授いたしましょう。

それは、部下のマネジャーになるのではなく上司のマネジャーになること、です。

何を言っとるのだこいつ頭が終わっておる、と思わないでください。これはマジです。自分が実践してどえりゃあ上手いこといった手法です。

聞いてください。


前職のネット求人広告ベンチャーに入社して2年目のこと。高卒で無学無芸の大食漢だったわたしがひょんなことから組織のマネジメントをすることになりました。

しかしわたしの拙い語彙にマネジメントの文字はありません。はて、どうしたものかと悩みに悩んだ結果、パッとひらめいた。

まてよ、マネジャーの代名詞といえばあれだよな、芸能人のジャーマネだよな。芸能人のジャーマネは担当のタレントを売り込むのが仕事だな。これを当てはめると…まず部下を売り込むのはおかしいな。俺自身を売り込むのもなんか違う。ってことは、そうだ上司だ!上司をタレントのようにプロモーションかけて売り込んで、部下をまるごと俺の上司のファンにしちまえばいいんだ!そうだそうだ、なんだよマネジメント楽勝じゃねーかよ。

かくしてその日から毎日コツコツとわたしは自分の上司、つまり組織の管掌役員のブランディング&プロモーションに力を入れていきました。

・いいか、Kさんはすげー男なんだ
・伝説のコピーライターなんだぞ
・賞もいっぱい獲ってな
・実はこの会社が設立されたのもKさんの力だ
・男気あふれる人なんだ
・俺は心から尊敬している
・マジ一生あの人についていくわ
・あの人が白と言ったらカラスも白だな
・あと、怒らせるとこえーぞ…
・過去に部下が何人か消されたらしい

今から思えば発想や発言が暴走族並みのIQと民度の低さで恥ずかしいんですが、まあそれでも効果テキメン。メンバーも素直でまっすぐな子たちばっかりだった(そうじゃない子は辞めていきました)おかげで、一枚岩のブレない組織がいっちょう上がりです。

この構図の何がいいかというと、メンバーの不安や不満がぜんぶ自分のところに集まることです。メンバーはみんな、自分たちの上司はわたしではなく役員だと思うようになるんですね(実際にそうなんですけど)。となるとわたしには結構なんでも話してくれるようになる。

そしてわたしも「お前それはいかんよ」を役員の威を借りて言える。Kさんだったらこう思うぞ、と間接的に注意、指導、叱責ができるんです。メンバーも直接怒られているわけじゃないと思えばメンタルに及ぼすショックをいくぶんやわらげることができる。

ま、このマネジメントスタイルが成功するには上司に人間的魅力がないと難しいんですけどね。しかしそのおかげで最大170名の構成員がショッカーのように一糸乱れぬ組織ができました。


というわけでこの春からマネジメントを仰せつかったはいいが、いまひとつうまく組織がまわんねえよ、とお悩みの新人マネジャーさんがいらっしゃったら、ぜひ一度お試しいただいても損はないかと思います。

「マネジャーは部下をマネジメントするのではなく、上司をマネジメントするべきだ」

え?出世するだけしまくってもはや上司となる人物がいない?このままだとピーターの法則のように無能になってしまう?

そういうときのためにあるんだぞ会社の「ミッション」「ビジョン」は。最後の最後、つまりあなたが経営トップになったときはミッションやビジョンをマネジメントすればいいんです。

これまでそういう目でミッションやビジョンを見たことがなかった、という方はぜひ、これからはこの視点で確認してみてください。そうすれば、そのミッション・ビジョンが飾りものかそうじゃないかわかるはずです。

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