見出し画像

求人広告のキャッチコピー Vol.2

求人広告におけるキャッチコピーの作り方、第2回目になります。

あらためて前回の記事を読み返してみたのですが、ものすごく当たり前のことしか言ってなくて自分で書いておきながらちょっとひきました。この流れで大丈夫なのか甚だ不安ではあります。

読んでくださる方がどんな方かによって、もっと絞り込んだり有益な内容にブラッシュアップできるのだなあ、ということがあらためてわかりました。不特定多数に向けて書くと届いたり、届かなかったり、あるいは届きにくかったりする。

そういう意味でも「誰に」「何を」という設計はとても重要だなと再確認した次第です。この実感を得られただけでも、ぼくにとっては有意義なnoteになっているのでした。

さて本題です。

何軸でいくか、を決める

前回も書きましたが求人広告の場合、コンセプトワードがそのままキャッチコピーに使われる確率が高いです。つまりキャッチで何を言おうか、と考えることはこの広告で何を伝えるか、を考えることに等しい。

一般的な商品広告の場合、商品が持つ物性そのものから、その周辺に漂う気分、消費者との関係性、社会における立ち位置、あるいは過去や未来など何を語るかについて無限に広がる大宇宙ということになります。

幸い求人広告の場合、その宇宙がとてもコンパクト。仕事のこと、会社のこと、休みや給料のこと、福利厚生のこと、キャリアのこと。だいたいこのあたりに絞られてきます。

すごくざっくりと整理しますと…

  • 仕事軸

  • 会社軸

  • 環境軸

この3つのいずれかに集約できるのではないでしょうか。

仕事軸は読んで字のごとく仕事そのものの魅力。あるいはキャリアについても語れそうです。会社軸も同じで会社が持っている魅力を語る打ち出し。急成長中のベンチャーで、またその対極である大手企業でも使えるのではないでしょうか。

いちばんわかりにくいのは環境軸かもしれません。これは給与・勤務時間・待遇面その他モロモロの魅力で勝負するやり方。労働環境におけるベネフィットですね。

少なくともこの3つの軸の中でどれでいくか、を考えれば自ずと方向性が決まると思います。シンプルでいいでしょ。だから打ち合わせ中に営業やディレクターの話を聴きながら考えることができるのです。

こういうところで効率の良さを追求し、時間や労力を稼いだ分、表現面でああでもない、こうでもないと無駄を楽しむのを推奨します。

削っても文意が通じる言葉は削る

さて、キャッチコピーを書くとき。人によってさまざまだと思うんですが、おそらく多くの人がプリントアウトしたコピー用紙の裏側に手当たり次第に書き付けていくのではないでしょうか。

ぼくの場合はまさに裏紙と呼ばれる不要となったコピー用紙に、とにかく思いついた言葉を書いていきます。このとき「誰に」は考えないです。「何を」は軸を固めた時点で決まっている。なので「どのように」伝えるかにのみ集中して言葉を探しにいきます。

だいたい3分1ラウンドで、5ラウンドぐらい?やった後に「これはまあまあ」というフレーズだけ集めます。その中からブラッシュアップをかけていくのですが、ここでようやくノートかパソコンのワードに移ります。

最近ではグーグルドライブのドキュメントでブラッシュアップをするケースが多いです。

ここで大事なことを2つ。

ひとつは、キャッチコピーは求人広告の場合でも短いほうがよい、ということ。そしてもうひとつはフォントサイズを大きくしない、ということ。

いくら精読率の高い求人広告でもダラダラ長い文章を読まされるのは求職者にとってストレスでしかありません。さらにインパクトはともかく、覚えやすさは求人広告にとってもまったく必要ないわけではありません。

そこで、短くするコツを伝授します。といっても至極当たり前なんですが、要は削っても文意が変わらない単語は削る、というルールです。

例としてすごく以前にこのnoteでも紹介したキャッチフレーズをあげます。

【広報マンが書いたキャッチ】
未経験からはじめるメールマガジン編集スタッフ。あなたにお任せするのは日本最大級の規模を誇るステージです。

【それを直したキャッチ】
メルマガデビューは、日本最大規模で。

いかがでしょうか。劇的に短くしたのですが文意は変わりありませんよね。最もダイナミックな言い換えは「未経験からはじめる」を「デビュー」という4文字に圧縮したことです。

いま圧縮といいました。

言葉は削る行為も大事ですが、それ以上に重要なのが圧縮することです。より短く言い換えたり、いくつかの意味をひとつの単語にまとめたり。ボキャブラリが問われるのも言葉の圧縮です。

なのでコピーライターを目指す人(っているのか?)はボキャブラリを豊富に持っておくべきでしょう。紙の類語辞典はマストです。

なお「広報マンが書いたキャッチ」はコンセプトワードに他なりませんが、決して悪いフレーズではありません。コンセプトワードに新しい魅力があるからこそ、クリエイティブジャンプが上手く着地するのです。

デザインに頼らないこと

前の章でキャッチをつくるときに意識したほうがいいことの2つ目として、フォントサイズを大きくしない、と言いました。

これは求人広告ならではのお作法といえるかもしれません。

たとえば最近、特にお声がけを多くいただいている企業のパーパスやミッション、ビジョンなどのワーディングのお仕事。こういった仕事の場合、アウトプットはパワポに大きめのヘッドライン、そして小さなフォントでリード文を書いてプレゼンに臨みます。

なんかそれっぽく見えますがボツ案です

でもこのやり方、求人広告ではご法度かなと。と、いうのも現時点でのほとんどの就職・転職サイトではフォントの大きさを変えることが不可能だからです。文字の勢いや字面で魅せることができないんですね。

ついせんだってまで自由度が高かったリクナビネクストのN5という最上位プランも遂にフォーマット化されてしまいました。それぐらい求人広告におけるクリエイティブやアウトプットには規制がかけられています。

そしてこの傾向は不可逆です。これからも決まったサイズの文字を決まった配置でレイアウトされる状況は継続することでしょう。

なので、コピーワークの時点から表現はミニマルに作るべきなのです。そう考えると自ずと11ポイントぐらいでタイプして、それでも輝きが失われないフレーズに昇華させる必要があります。

しかも求人広告ではビジュアルもイメージイラストや美しい写真などは求められていません。多くは募集企業で働く人や職場風景になるでしょう。で、あればこそ、ビジュアルに頼らず自立したキャッチが求められるのも当然のこと。

このあたり鍛えられるといえば鍛えられますが、クリエイティブの拡がりがないといえばないんですよね。ずっとやってると限界を感じてしまう。それがこの世界で長く活躍するコピーライターが存在しない理由のひとつかもしれません。

時代の先取りはしない

求人広告とはいえ腐ってもコピーライター。クリエイティブの端っこで時代を創るんだ。そんな心意気で仕事に取り組む人も中にはいらっしゃることでしょう。

そういう方はおそらく一般のクリエイターに近しい感性をお持ちでいらっしゃる。時代の気分を敏感にキャッチアップして、自分の仕事に取り入れよう。そう思うのも当然のことです。

しかしここで気をつけなければいけないのは、あなたが作るのは求人広告であるということ。求人広告である以上、時代の先取りはしてはなりません。一般の広告でも時代の半歩先、と言われているのです。いわんや求人広告においてをや、です。1ミリも前に出てはならぬ。

なぜか。

このあたりは明確な答えを持っているわけではないのですが、仮説として立てているのは、やはり求人広告というものの性質に由来するのではないかということ。

転職は(就職も)人生においてかなり重要な決定事項です。その情報仲介が求人広告だとすると、時代を先取りすることの必要性と意味、意義は100パーセントない、と断言できます。

その昔、ぼくの部下だったコピーライターがぼくの上司に自分がつくったキャッチコピーを見せにいきました(それが頻繁にあったので、ぼくは相当信頼されていなかったのだと思います)。

そのキャッチには、確か「ググって云々」みたいなフレーズがあったんですね。当時はまだグーグルはさほど存在感がなくてYahoo!全盛でした。なので「ググる」という言葉はかなり先取り感あるフレーズだったのです。

すると件の上司は「なんやねん、ググるて。意味わからん。コミュニケーションスピード遅いねん。バツ」と一刀両断。「いや、ググるというのはですね…」と部下が説明するも「ほんならおまえ、Yahoo!で検索することはヤフるっていうんかい?あ?いわへんやないかい!」とザックリ斬られてました。あくまで当時の話です。いまならまあ、通用するでしょうけどね。

ことほど左様に、ナウい言葉、若者言葉、流行り言葉、ネットスラングなどには手を出さないほうがいいわけです。

これだけでいいのか

はなはだ心もとないところもありますが、一応、求人広告のキャッチコピーを作る時に気をつけなくてはならないポイントについてはひととおり攫えたかな、と思います。

いま攫えたと書きました。
さらえた、という言葉を漢字にしました。

こういうのもやめたほうがいいでしょう。難しい漢字、あまり一般的ではない漢字は使わない。基本的にひらがな中心で構成すること。

とにかく精読率の高さに甘えることなく、コピーは「トク・ラク・ハヤク」のサービス精神でつくるよう心がけてください。

次回は「求人広告の仕事内容の書き方」です!そんなに楽しいものではありませんが続けて読めばそれなりの求人広告が書けるようになるので、まあ、お楽しみに!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?