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求人広告の意外な使われ方

ついこないだ、あるNPO法人の代表の方とお話する機会をいただいたんですね。NPOといってもいろいろあるんですが、その団体は経済的に困窮している家庭を食で支える事業を展開しています。

非常に理にかなっているというか、食で支えて終わりではなくその先の手立てまで考え抜かれていて、最終的には格差を減らしていくことにつながるモデルになっていました。

ぼくはその方の話を聴いて心の底から共感したり感心したり、と、まあいつもそうなんですがグッときていたんですね。

その場はエネルギー供給事業会社のプロモーションコンテンツについての打ち合わせの場だったのですが、うかがっている話の中で「!」というものがあったので忘れないうちに書き留めておくことにします。

事業会社とNPOのコラボは難しい

NPO法人とエネルギー供給事業会社がコラボレーションして新しいサービスを創った経緯の話になります。

最初にアプローチしたのはエネルギー供給事業会社のほうでした。ある人を通してNPO法人の話を聞き、ぜひ一緒になにかできないか、と声をかけたんだそうです。

ところがNPO代表いわく、そうやって声をかけてくる同様の事業会社が非常に多く、実際に数社と会って話したこともあったと。その結果、ちょっとなかなか難しいんじゃないかという手応えだったそうです。少なくともいますぐではなく、エネルギー系の会社と何か組んでやるのはずっと先になるのではないかと。

と、いうのもやはりエネルギー関係はインフラになるわけです。NPOとしては相当信頼できるパートナーじゃないと責任がとれないと。なにかあったとき、たとえば電気だとしたら止まったらどうなる。水やガスでも困ってしまいますよね。

ところが声をかけてくる相手の多くは新興会社、あるいは歴史ある重厚長大な企業の両極端なんだそうです。新興会社はいわゆるベンチャーですよね。ベンチャーのスピード感はNPOにマッチするのですが、一方で信頼性の担保には欠ける。「まあ、とりあえずやっちゃいましょうや」的なノリなんだそうです。

そして重厚長大な企業はとにかく話が動かない。何か決めるにしてもハンコも書類もたくさん。しかも大きな会社につきものの「異動」です。担当者はそれなりに熱量を持ってプロジェクトを動かしてくれたとしても、途中で顔が変わった瞬間に急速に冷めていく…こういう経験がNPO法人の代表の腰をさらに重くしていたんですって。

つまるところ、最後は人だから

なので、今回もどうせ…ってかんじだったそうです。が、間に入ってくれた方の手前もあり、どんな企業か調べることにしたNPO代表。

その会社はもともとガスの販売を祖業に50年近くの歴史を刻んできました。規模こそ大きくはありませんが、地域に根付いた着実というか手堅い事業展開は想像するだけで「堅そう…」です。

NPO代表も「これはなかなか難攻不落なんじゃないのか」という先入観でホームページを開きました。しかし、そこで謳われているメッセージはかなりアグレッシブ。ベンチャー企業のそれと変わりません。

堅いエネルギー供給事業として歴史がある会社にしては、ちょっと変わっているな、と思ったNPO代表は次にあるアクションをします。それが今回、いちばんお伝えしたいことなんですが。

なんと、求人広告を読みこんだそうです。

なぜか。NPO代表曰く、求人広告を見ればその会社がどんなタイプの人材を集めようとしているのかがわかる。結局企業とは人の集合体。どういった志向性、どういった適性を持った人材の集まりかは、その会社の柄を何より雄弁にあらわしているはず。

なおかつ、窓口となった人が異動などで別の人に変わったとしても、同じテンション、属性の人なら持続して付き合い続けられるだろう。だから求人広告をくまなくチェックしたとのことでした。

その結果、表でうたっているベンチャーマインドは口だけでなく、中身にも浸透している、あるいはさせようとしている企業姿勢がわかった。そして、こことなら組んで新しいサービスが創造できるんじゃないかと思ったんだそうです。

「つまるところ、最後は人ですからね」

たかが求人、されど求人

NPO代表の話を聴いていたぼく、そしてエネルギー供給事業会社の代表や担当者は一瞬、言葉を失ったのち、大きなため息と「そうだったんですね」という納得とも喜びともいえない、驚きを隠さず表現しました。

そしてぼくは「なるほどなあ」と思いつつ「だからちゃんとしなきゃ」とあらためて求人広告の持つ意義と立ち位置を見つめ直しました。

見ている人は見ている。だからしっかりと求人企業が求める人物像がどういったものなのか、わかるような広告をつくるべき。そして媒体だけでなく、自社ホームページとの連携、情報の統一などにも細かく意識を向けるべきだし、採用チャネルの全体像を俯瞰してディレクションしなくてはならない。

ここで間違えてはいけないのは「だから顧客や事業パートナーにもいい顔をする」ということではないということです。求人広告の目的はあくまで求めている人材を採用するためのもの。そこをズラすと本末転倒。これ、よくあるパターンなんですよね。

その目的性の違いぐらいは理解して見てくれるはずですし、逆に目的を混在して指摘するような方であれば、事業パートナーとして組むにふさわしい相手とは言い難いでしょうね。

組織をつくるのは人。で、あればどのような人を募集しているかを見れば、その組織が目指している姿はわかる。これは本当にその通りだし、勉強になったなあとつくづく思いました。

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