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二眼の深海魚(結)Yashicaflexの1stロール

こんばんは、薄明です。先日、故障していたはずだった、祖父の遺品のヤシカフレックスが動いたという話を書きました。

きちんと整備に出したわけではありませんが、とりあえずシャッターは切れて動いているらしい、ということはカメラ屋さんに見てもらったので、一本フィルムを詰めて歩いてきました。

手元にあるヤシカフレックスは、1955年発売のC型と言われるタイプのようです。ヤシコール80mm F3.5のテイクレンズで、シャッタースピードは最高で1/300。絞りはf3.5~f22です。

結果を先に言うと、6x6フォーマットで12枚撮れるはずでしたが、撮れていたのは9枚だけ。最初の3枚はフィルム送りがうまくいっていなかったようでした。フィルムに印字されている1コマのところは最初の一枚が見切れるような本の数ミリ写っていただけでした。フィルム上部のコマの数字をご覧いただくとわかると思います。

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これは最初の一枚目の時点で、写るところまでフィルムが送れていないのではないでしょうか。そのあとから9枚ちゃんと写っていて、最後3コマ分くらいは未露光で終わっています。ブロニカのネガと見比べてみると、写っている範囲がかなり前にずれてしまっているみたいな印象です。ヤシカは16-19コマのところは何も写っていない。ブロニカは19まで写っている。

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最初2枚くらい空送りすればいける…? しかしカウンターが12以降もちゃんと止まってくれなければ同じことを繰り返してしまう…。悩みます。

気を取り直して。

さて、歩くとはいっても本当にいつも撮って歩いている、いつもの道です。少し違うのは持っているカメラが初めての二眼レフであることと、それが祖父の遺品であること。

とはいえ祖父がどのような心持で写真を撮っていたのか(少なくともこの二眼レフを持っているところなど見たこともなかった)わかりませんし、そんなに没頭した趣味でもなかったのかもしれません。そもそも祖父は職人の家に婿入りしてきて、一家と店を曾祖父からまかされて戦後ひとりで盛り立てた人です。(めちゃくちゃ忙しかった) だからこそ父が職人の見習いから帰ってきたら早々に店の舵取りを父に受け渡したのかもしれません。父が子供の頃は一年で休みの日は1日だけだった年もあったそう。364日勤務。職人はそんなものだと言われればそうかもしれませんが、それだけ仕事があったということも時代だなと思います。

はじまり。

祖父母は金沢に旅行に来たことがあっただろうか。海外旅行の写真を何枚か見たことがあるので、国内旅行も行っていたような気がします。金沢も来たことがありそうな気がする。親に訊けばわかるだろうか。実際どうだったかはさておき、亡くなった祖父の眼を持って一緒に散歩している気持ちでした。私が普段見ているものを案内していく。

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この日はイベントでしいのき迎賓館裏はたくさんの人がいた。ちょうどアメリカ楓の並木も紅葉で一番の見ごろの週末だったと思う。この日の後、雨が降った。この前にも何か撮っていたと思うのだけど、記録されている最初の一枚はこれだ。びっくりした。空の青、紅葉の赤、人はわらわらとしたけどどこか静かな雰囲気を感じる。自分の好きな写真の雰囲気だ。いつも通りの写真だと思う。私は祖父の手を引いて歩く。

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枝ぶりが気になって、天気がよくて影も落ちているしスクエアで撮りたくなって構えた。それにしても(他の写真も含めて)しっかりと写っている。何十年も段ボール箱に眠っていたとは思えなかった。見る人が見たら曇ったりカビたりしているのかもしれないが。ファインダーを覗きながら、あたたかいなと思った。彼我。

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祖父の手を支えるように兼六園へ進む。というのも兼六園の入り口の坂はじゃりが細かく、滑りがちなのだ。何度もこけそうになったことがあるので、カメラを壊さないように気を付けて歩いた、という意味である。進んでいくとお土産屋の入り口に「歓迎」の看板があった。昔はここに「~御一行様」という札をさげていたのだろうと思う。いまは個人客がほとんどで使われているのかどうかはわからない。蜘蛛の巣が張っていた。祖父母が来ていたとしたら、きっとその時代は使われていただろう。

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いい天気で陽射しが温かい。少し風が吹いて、ぱたぱたと暖簾を揺らす。座ってぜんざいなんかも美味しいだろうなと思った。水色のポスターはGoToのものだろうか、これもある意味時代の記録だと思う。

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金沢では雪吊りが冬の風物詩ではあるけれど、この11月頃に張られる。その前準備は今まで撮ったことがなかった。雪の時期もいいけれど、こんな景色も面白いでしょう、と祖父に語る。

そのあと金沢城の方へ渡り、いつもの場所へと向かった。写ってくれるだろうか、それが気がかりだった。どうしてもこのカメラで、今日、その景色を撮りたいと思った。ただの写真だけど。

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頻繁にではないけれど、定点観測みたいにここでよく撮っている。好きな場所だし、何かイベントごとがあるとちょっと人の流れが面白い。木々の色が季節を伝えてくれる。雨や雪の日もいいんだよ、と語る。見えているだろうか。PRO160NSはぼんやりした淡白な印象を持っていたけど、なかなかいい色を出している気がする。確かf11くらいで撮影した。

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金沢城から降りてきて、香林坊付近へ。ここのところ、アトリオ前ではこのお店が設置されて結構にぎわっている。黒い車に金文字がフィルムで撮ったらなんだか気持ちよさそうだなと思った。撮れてよかった。祖父はハンバーガーは食べたっけか。食べなかったような気がする。私が小さい頃はファーストフードを食べる習慣が家庭には存在しなかったし、外食も稀だった。だから私は今でも外食はそんなに好きではない。(おいしいのはわかる)

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最後の写真だ。12枚目だ、と思って撮った。国立工芸館がオープンしたばかりで行列がこの後ろに存在する。そしてここもまた日曜日のイベントだ。コロナで鬱々しい時期もあったが、いまは皆気を付けあいながらも外をふわりふわりと歩いている。旅行者も多いだろうから、より気を引き締めなければならないとも言えるけれど。これを撮る前、シャッターチャージをし忘れて、とても楽しそうに駆けて行った子供を見送った。とりあえずテントの印影とかたちがとても美しい。レンガ建築も美しい。

この前に香林坊でフォロワーさんと合流してこのあたりで一枚撮らせていただいた。それは肖像写真なのでここには載せないが、f4で撮ったら背景がかなりぐるぐるしていた。撮影失敗していなくてよかった。

12枚、すべて撮れていたらもっとよかったものの、正直動いたこと自体が不思議な気持ちでいたし、放置していた期間が相当に長かったので光学系もあまり期待はしていなかった。けれど上がってきた写真をみたらびっくりするくらいよく写っていた。写っていなかった範囲は機械の不調なのか、それともセッティングミスなのかわからないが、今度はモノクロで撮ってみたいと思う。

それでは、皆さんもよき写真生活を。

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