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写真集『私は石ころみたいな写真が撮りたい』をつくったこと。

こんにちは、薄明です。

6月末に、今まで自分が撮った写真で、自分が好きな写真をピックアップして一冊のフォトブックにまとめました。4月~5月と思うように出歩けない時期があり、どこか鬱屈とした気持ちが積もっていたのだろうと思います。それを昇華したかったのかもしれません。それまで何人かのフォトブックは購入したり頂いたりして、時折開いて感嘆していたもので、いつかは自分も作りたいなとは思っていました。

写真集のテーマ

しかし自分の写真でひとつの冊子にまとめるとき、テーマはどうするのか、というのが大きな壁でした。対象をテーマに採るというわけでなくとも、何か一連に一本の芯がないと、私の撮る写真はただでさえ雑多なスナップが多いので、散漫な印象を与えて残念になってしまう。しかしモノを絞ってしまうと、私の場合はなんだか面白くないような気がしました。

自分が写真を通じて何かを見ようとしているとしたら、何だろうかと思います。自分が創作するものでもっとも重きを置いているのは詩です。そしてことば、字、写真…。いずれも、自分のこころの裡を探るような行為ばかりです。では、きっと私の写真で私が気持ちよく感じるものには、自分の中の何かが反応するだけのものが写っていて、そういう写真を撮りたいと思っているのではないかと思いました。写真の中に自分、あるいはそれに類するものを探す行為。過去のnoteにはそのあたりに触れたものもありました。(2019年の9月!時間が経つのは早いですね)

そういったことを考えていたとき、以前書いたまた別のnoteを思い出したのです。

雑多に見えるスナップの中に、自分の筋が通っているものがあるとしたら、ひとつはこれなのかもしれないと思いました。そしてこれがそのまま、1st写真集のタイトルとなったのでした。

つくる作業

主にいろんなフィルムカメラで撮ったフィルム写真と、Nikon Dfで撮った写真で構成し、過去にNikon D200で撮ったものやRICOH GR-DIGITAL(初代)で撮ったものも含めました。とにかく最初好きな写真を仮のフォルダに放り込んでいくという一次選定の作業から入ったのですが、それなりのボリュームになってしまい、カラーだけで想定していた枚数をオーバーしてしまいました。混在させるつもりだったのですが、実際に並べてみるとやはり色の流れがちぐはぐになってしまいます。前後編の構成にするか、別に冊子を作るかと考えましたが、とりあえず今回の第1弾はカラーメインとすることにしました。

写真を見返していくと、ああこれはあそこでシャッターを切ったなとか、この写真のことであの人とこんなやり取りをしたな、といったことが思い起こされます。全部が全部覚えているわけではないにせよ、それなりに出てくるものだなと思いました。

ともあれ、何日間もかけて足したり抜いたり、並べてみてああでもないこうでもない…と悩んでいました。しかし悩めば悩むほど、作っても無駄なのではという考えも首をもたげてきます。幸いにもフォロワさんらに励ましていただき、最後はえいやと完成させました。

あまり凝ったものを作ろうとしても完成しないなと思ったので、構成は私らしく淡々と、レイアウトもほぼ一本調子の単調なものにしました。並びにも特別ストーリー性はなし。ただ、見開きで見た時に自分が違和感や気持ち悪さを感じない程度に組み合わせていったのでした。

見開きの二枚の写真には、あとから見ると不思議と共通のモチーフだったり要素や匂わせるものが存在していたのが面白かったです。自分でも気づかないうちに選んだ、というよりはそういう符号があるから気持ちいい組み合わせだと感覚が判断したのかもしれません。

最初は48ページくらいを想定していたのですが、最終的に72ページびっしりと写真が並びました。本当は詩やキャプションも入れたかったのですが、詩集はまた別に作っているので、今回はただ写真を羅列したような形になっています。ただ、どれも好きな写真なので、いま(何度)見返しても自分はとても楽しめています。

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表紙デザインも、最初はテンプレートどおりにタイトルが入ったものから、フォントでタイトルを入力してデザインしてみたり、いややっぱり手書きの方がしっくりきそう…とすぐ万年筆で書いてレイアウトしてみたりとコロコロ変わっていました。が、最終案がやはりしっくりきました。

頒布数は前回の写真詩集が10部程度だったので同じくらいか、よくて20くらいかなと思っていたのですが、ありがたいことに予想をはるかに超える数の方々に興味を持っていただけました。ありがとうございます。

ただ、いつも私の写真を見ている人であっても(そうでないならなおさら)、本当に楽しんでいただけるのだろうかという不安はついてまわりました。なにしろ、華がない写真。薄味で胃には優しいかもしれないけれど、伝わるものも、なにもない。何故なら私が伝えたいことがないから。ただ私の視点が、感応した私の感覚が、そのときの時間と空間がそこにあるだけです。ほとんどの人が素通りするであろう写真ばかりなので、そこに興味を持つ方々のこころや目には何が映っているのだろう、と少し興味があります。

なにはともあれ、私は仕入れた写真集を発送するとき、この最初の分は最低でも全員にお手紙をつけてお送りしようと決めていました。(その初回発注分もおかげさまで売り切れました) 手書きの手紙がついてくるなんて気持ち悪いという人もいるかもしれませんが、そのときは捨ててもらえばいいかなと思い、ただひたすらに感謝の気持ちを込めて(本当に込めて)手紙と、宛名を書きました。なにか可愛らしい装飾や、人を驚かせるような仕組みを作ることなどは私にはできないので、せめて丁寧にことばを届けようと思ったのでした。

頂いたご感想

7月にはいって、無事みなさんの手元に届き始めると、ご感想などを頂戴することも出てきました。感想をもらう、ということがなんともにわかには信じられないことでしたが、本当にうれしかったです。どれも、宝物のようなことばばかりです。

何人かの方のご感想を、名前などは伏せてご紹介したいと思います。(特定を避けるため、一部の表現を変更しているものもあります) 感想ツイートは公開しているものとして、そのままツイートURLをはりつけます。順序は適当に散らしてあります。他にも頂いておりますが、全部は紹介しきれないので公開するのは一部のみとして…全部大事に読ませていただいております。

「どの写真も気持ちよく、ずっと手元に、それもデスクの近くに置いてすぐ読み返したくなるような一冊でした!」
「薄明さんのお写真も文字もとても好きなので眺めてはにやにやしています…はい…本棚に大切なものがまた増えました!ありがとうございます」
「薄明さんのお写真は、ほとんどは引いた広い画なのに、見た瞬間に何に惹かれてシャッターを切ったのかがフワッと伝わってくるんですよね。全く押し付けがましくなく「心地よい気づき」と言った感じで。」
「ページをめくり終え、タイトルに込められた思いに、じんときてしまいました。たくさん歩こう、いつもカメラを持って出かけようという気持ちも高まりました。ありがとうございました。とても素敵な写真集です。」
「フォトブックとても良かったです!薄明さんらしさ を自分は言語化はできないんですが、いつも投稿されている写真の雰囲気に加えて、その中から丁寧に選定、配置された一冊の本の作りに感動しました!やっぱり薄明さんの視点、写真が好きです!」
「写真集届きました!手書きのメッセージまでありがとうございます号泣文字が素敵すぎてこれも宝物です、、!写真は愉しさと寂しさが交差するような、不思議な気持ちがして、しみじみと何度も眺めています。薄明さんの集めた「魅力的な石ころ」の数々を見ることができて嬉しかったです。素敵な写真集をありがとうございました!」

また、なかには感想noteを書いてくださった方まで…!

購入いただいた方の中には、きっと期待外れだったという方もいらっしゃると思います、こればかりは好みの問題なので。ただ、お金を払って手にとってもらう以上は、出来れば楽しんでいただきたいなと思っています。どうぞ私の普段のメディア欄などでよくよくご確認いただいた上でお申し込みください。そのうえで楽しんでいただけたなら、それはわたくしにとって望外の喜びございます。

フォトブックは全72p、A5スクエアサイズ、一冊1500円(税・送料込)で頒布しています。大幅にブーストして支払ってくださった方には一段階品質のいい仕様のものをお送りするかおたずねしています。詳しくはTwitterなどのDMで。次は今回の冊子からあぶれたモノクロで一冊作りたいと思います。あるいは詩集2冊目を、不在写真で作ろうとはしています。タイトルはとっくに決まっているのですが…。

今回のフォトブックをきっかけにして、詩集にも興味を持ってくださった方もいらっしゃって嬉しいです。これからも書き続け、撮り続けたいと思います。改めて、応援してくださっている方々の声は、私の気持ちを支える柱のひとつになっていることを感じました。ありがとうございます。

それでは、長々とした日記になってしまいました。よき写真生活を。




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