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失われた家を求めて〜上京記〜

これは虐待サバイバーが家を出たい話「脱家記」の、その後を記したものだ。家を出、上京し、仕事なし住所なし(正確には転出届を出していないので元の住所のままである)。


そこまでを軽く振り返るべく、東京のありえないぐらいゆで卵の不味いカフェにて筆を執った。パイエッグ、お前がいないと俺ァ駄目だ…。三重の幸が恋しい。


あれから色々な不運に見舞われた。ちょっと善法寺伊作でもため息をつくのでは!?という具合である。あの忍たま界の不運大魔王と言われた彼が。


唯一の幸運は、あっけないほど早く引越作業が済んだことである。


クレジットカードの不正利用により人生に絶望した私は、コンビニで速やかにビールを煽った。一番高いやつを買った。


何十万を失った(かもしれない)私に怖いものはなく、深夜の公園でべろべろになりながら電話をかけた。


出てくれた引っ越し会社の方がまァ〜〜いい方で、事情を説明すると親身になって協力して下さった。


かくして全ての荷物は一日で搬出され、もぬけの空になった家を出た。


この時点で追加の何十万かとディアスポレイザーの初版とTシャツ(ジャンプで作ってくれるやつ)を失った。不甲斐ない。搬出のあまりのテンポのよさに、餅つきかと思われるほどのテンポに身分証明書くらいしか残せなかった。漫画家のサイン的なやつは文字通り死ぬ気で守った。


さてさて。


こうして住む先もないまま家を出た。洗濯機も冷蔵庫も無い部屋に用はない。


夜行バスで新宿駅まで行った。時刻は朝の5時。首が猛烈に痛いし、カーテンは開けられず時刻と平衡間隔を奪われ7時間、念願の東京を前に「護送車…?」という感想しか出なかった。


そのあたりで厭に咳くな、と思っていたが、まァ引っ越しでめちゃくちゃ埃出たし…と気にもとめていなかった。


正午を回った頃、熱と頭痛で立っていられなくなった。おかしいぞ。ぐるぐると駅の周りを彷徨った挙げ句、ビルとビルの隙間にしゃがみ込んだ。東京ではゆっくり座ることに金が要るのだ。開けた公園やバス停のベンチなんて、ない。


不運は続く。


薬局で薬を買い、ネットカフェで寝込んだ。その後なんやかんやで警察沙汰になり、なんやかんやで出血した。


スマホを持ってる手が痺れてきたので手短にいく。

昨日から荷物を持ち続け、箸より重いものを持つことに我慢がならない。


股からの出血は毎月のことなのでいいとして(よくはない)、さてこれからどうしようかと思いを巡らせた。


先ずは事前に連絡を取っていたゲストハウスへ見学に行こう。上手くいけば仕事と家が手に入る。


その後に担当編集へ連絡し、家の無心をする。

一歩違いで働けなかったブックカフェ兼ゲストハウスが、そこの出版会社と伝手があるらしい。親切にも相談してみてはいかがでしょう、とメールが来た。


…今日はいったいどうなることやら。


昔話では「ドンドンドン!」と人里の扉を手当たり次第ノックすればよいのに、現代ではお縄になるところが世知辛い。


辛いな。でも、もう少しだけ頑張るか。


「書く」ことで自分を俯瞰すると、不思議と次の一手が見えてくる。


自分の「家」を手に入れるまで、暫くお付き合いして下さると嬉しい。


それでは。





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