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江戸の日本橋界隈の賑わいを絵巻で見られる、日本橋三越駅前駅の地下ギャラリーを見てきました

先日、表参道で用事を済ませたわたしは、帰宅しようと、地下鉄駅のホームに入ってきた電車に、無意識に乗ってしまいました。ところが、銀座線だと思ったのが、東武線直通の(車体にオレンジ色がアレンジされた)半蔵門線だったんです。表参道駅が久しぶりで、銀座線と半蔵門線が並走していることを忘れるという、初歩的な誤りをしてしまいました。

しまった……と思ったものの、まぁ日本橋三越前駅で乗り換えて、“あれ”を見てから銀座線に乗り換えて帰ろうと思い立ちました。

あれ……というのは、江戸時代の日本橋の町並みを詳細に記した絵巻です。今調べると、それは『熈代勝覧きだいしょうらん』というもの。絵巻が、半蔵門線から銀座線に乗り換える地下道に、数メートルに渡って展示されているんです。(展示は模本で、原本はベルリン国立アジア美術館が所蔵)

熈代勝覧きだいしょうらん

ちょうど日本橋三越の真下にあたる場所で、三越の地下の出入り口のすぐ隣にあります。今まで何度も通りかかりましたが、見ている人は少なく、ラッシュ時でなければ、混み合う場所でもないのでじっくりと見られます。

展示された絵巻に描かれているのは、日本橋から神田今川橋(現在の神田駅前付近)までの中央通り。絵師は不明で、「題簽(だいせん)に『熈代勝覧 天』とあることから、『地』『人』などの別巻がある可能性がある」そうです。

呉服商・三井家の越後屋です(三井の越後屋だから三越)。今の三越と同じ場所に建っていました

熈代勝覧きだいしょうらん』の魅力は、江戸時代の日本橋界隈の賑わいを再現している点にあります。そこには、味噌を売り歩く人や反故紙ほごかみ買い、鷹匠たかじょう箍屋たがやなど、その頃ならではの職業の人などが見られます。

解説には文化二年1805の日本橋だとあります。絵巻の中を行き交う人の数は1,671人……そのうち女性が200人。犬が20匹で馬が13頭、牛4頭、猿1匹、鷹2羽が描かれているそうです。

菜売りなうり」。神田の「やっちゃば(青物市場)」で仕入れたものを売って歩いています
こちらは喧嘩をしているようです。真ん中の暴れる人を3〜4人で押さえているようです
紀州(和歌山)の径山寺の禅僧・覚心による中国伝来の“なめ味噌”の一種を売っているようです。「ひしおは金山寺、醤油のもろみ、菜漬なつけ、奈良漬、南蛮漬、なづけはようござい」と売り歩くと、解説パネルに記されています
中央右寄りで、2つの桶を地面に置いて立っている人は「反古ほご紙買い」です。紙が貴重だった江戸時代は、こうして不要になった紙を回収する人がいて、それを集めて漉き直して、リサイクルしていたそうです
なぜ人混みのなかを鷹匠たかじょうが歩いているのかと思いましたが、解説パネルにしっかりと理由が記されていました。「鷹を手に喧騒な大通りを行くのは、神経の繊細な鷹の調教の最期の仕上げのため」なのだそうです。しかもこれは、将軍家の鷹匠だとか…(どこで分かるのか? 江戸には将軍家の鷹匠しかいなかったんでしょうかね?)
菓子の立売たちうり。まんじゅうなどでしょうか、商品を包む袋をフッと吹きかけて広げようとしているようです
深い編笠あみがさをかぶっているのは「読売よみうり」だそうです。最新情報の瓦版かわらばんを読み上げているようです
先の方を指差す女性の後を、天秤棒を担いだ、グレーの服を来た人の説明には「ちょとお引越」と記されています。独り者の所帯道具一式を担いで、ちょっとした引っ越しをしているそうです
「通石町」は、今の日本橋本石町あたり
「通白銀町」というのが見えます

熈代勝覧きだいしょうらん』とは、「熈(かがやける)御代(みよ)の勝(すぐれ)れたる大江戸の景観を一覧する」という意味だと言います。

下の素晴らしいサイトでは、上記した内容を含む、熈代勝覧きだいしょうらんの詳細が見られて、分かりやすいです。

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