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【博物館ニュース】あの鑑真や空海とも縁が深い奈良・大安寺の仏像たちがやって来る!(1月2日から)

東京国立博物館トーハクでは、年明けの1月2日から、特別企画『大安寺の仏像』を開催。南都七大寺の一つ大安寺の、平家による南都焼討をもくぐり抜けて現代に受け継がれてきた、4件7軀の仏像が並びます。

奈良の大安寺と言うと、関東育ちのわたしの頭の中が「????」となりますが、「元は大官大寺だったんだよ」と聞くと、うっすらと歴史の用語集に記されていたのを思い出します。まぁ奈良や歴史にそれほど興味がなければ、それでも思い出しませんよね。では「南都七大寺の一つだよ!」と聞いたらどうでしょう? あの東大寺や興福寺、薬師寺や法隆寺(または唐招提寺)などと並び称されるようなお寺なんです。(ちなみに七大寺の残り3つは、元興寺、西大寺、それに大安寺です)

まだピンとはこないですかね? まぁとにかくこの大安寺、そのくらい、かつては隆盛を誇ったものすごいお寺だったんです。

現在は、誰もが知るわけでもなく、ほかと比べて巨大な伽藍を有しているわけでもなく、Googleマップで調べると「2つの例祭で知られる閑静な寺院」と記されている、程よく小さなわたし好みのお寺のようです。

その小さなお寺は、名前と場所を転々としたのですが、前述した大官大寺と名付けられたのは、天武天皇の藤原京の時代です(677年)。この大官大寺は「おほつかさのおほてら」とも訓むそうで、つまりは天皇直轄または朝廷直轄の寺、つまり国家の寺だったということです。

大官大寺は、朝廷が藤原京から平城京へと遷都するのに合わせて、現在の場所へ移るとともに、名を大安寺と改めました。その当時は、まず東西に七重塔が並び……五重ではなく七重塔ですからね……90あまりの堂塔が並んでいたそうです。半端ない規模だったということですが、想像力を働かすのも面倒なので、ビジュアルで感じてみましょう。

下の動画では、ドローンが門の前を飛び立ち、現在の大安寺周辺を映し出した後に、(完成前の)CGでかつての伽藍を重ね合わせていきます。今とは様相の全く異なる規模に唖然とするはずです。

Googleマップの現在の地図に、かつての伽藍を重ね合わせてみました

奈良市の調査資料を元に、かつての伽藍配置を、Googleマップの現在の地図に重ね合わせてみました。外枠の赤線は、だいたいの境内の範囲ですが、あくまでだいたいこのくらいかな…というものです。ちなみに現在の境内は、だいたい、かつての金堂と南大門の内側のエリアです。

大安寺についてのより詳しい情報は大安寺のホームページやWikipedia、それに古寺巡礼というブログに譲ります。(すいませんが、タイトルで記した空海や鑑真と大安寺との関わりについては、大安寺のホームページをご覧ください)

ずいぶんと規模が小さくなったうえに、地震や火事、平家の南都焼討などにより、かつての堂宇は全く残っていません。それにも関わらず、奈良時代に作られたと考えられているご本尊の十一面観音立像をはじめ、6件9躯の木彫仏が、現在まで残されているんですから驚きです。

そしてそのうちの4件7軀が、年明け1月2日から東京国立博物館トーハクの特別企画『大安寺の仏像』で展示されるんです。ラインナップは、楊柳ようりゅう観音菩薩立像、不空ふくう羂索けんさく観音立像、しょう観音立像、それに4軀の四天王立像です(いずれも重要文化財)。以下、Instagramの写真で紹介していきます。

楊柳観音菩薩立像
手に柳を持った観音さまということで、楊柳ようりゅう観音菩薩と呼ばれますが、大安寺の観音さまの柳はなくなってしまったようです。目を吊り上げて忿怒ふんぬの表情なのが特徴ですが、「病魔の侵入を防ぎ健康を保つ」とされているそうです。

|不空羂索《ふくうけんさく》観音菩薩立像と|聖観音《しょうかんのん》菩薩立像については、下のInstagramをパラパラとめくると、表情が見られます。聖観音しょうかんのん菩薩立像は、何にも動じなそうな表情です。一方、腕が八本(八臂はっぴ)の不空羂索ふくうけんさく観音菩薩立像は、写真で見た限りでは、良い意味で“近所の優しいおばさん”的な表情に、魅力を感じます。

四天王立像
四天王立像は、なかなか覚えられませんが、持国天・増長天・広目天・多聞天です。「じぞうこうた(地蔵買うた)」などと覚えると良いなどというのは、ココでは関係ありませんね。大安寺の四天王は(不空羂索観音や聖観音もですが)、天平仏像だからなのか、シンプルさを感じます。実際に目の前にした時に、どう感じるかが楽しみです。

下のInstagramをパラパラとめくると、それぞれの四天王と聖観音菩薩などが表示されます。

下のInstagramでは、持国天立像が見られます。かっこいいです。

下のInstagramでは、多聞天立像と楊柳観音菩薩立像が見られます。

特別企画『大安寺の仏像』では、これらの仏像のほか、江戸期に描かれた『弘法大師坐像』や、お寺の財産目録のような『大安寺伽藍縁起がらんえんぎならびに流記りゅうき資財帳しざいちょう(複製)』、トーハク所蔵の大官大寺と大安寺出土の瓦も、あわせて展示されるようです(瓦については、平成館の考古室にも別のものが、既に展示されています)。

なお展示期間は2023年1月2日(月・休) ~ 2023年3月19日(日)と、けっこうたっぷりとあります。そして展示室は、なんと本館1階の11室です……今は『菩薩立像 C-20』などが展示されているところです。

いやぁ、総合展示(常設展示)なのに内容がすごく充実していますね。年末までに一度行って、また来年の春までには大安寺を見に行くというスケジュールとなります。今から楽しみですね。


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