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傷だらけのパルピテーション

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2017年8月の記事一覧

Green point of view 2

 ゆるく揺らめく波が、全身を撫でていくような感覚がして、やわらかいクリーム色の光が広がっていく。
「朝か……」
携帯を見ると、何件もメッセージが来ている。そのうちの1件には、こう書かれていた。
「緑くん気持ち良さそうに寝てるから、先に出るね! サンドイッチつくっておいたから良かったら食べてね! また連絡する!」
俺は、無造作に部屋に散らばったTシャツをつかんでそれを着ると、テーブルの上のサンドイッ

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Yellow point of view 3

 また泡の音が聞こえる。ころころと転がるような澄んだ音。それがどんどん遠くなって、ぼくは冷たい床の上にいることにやっと気がついた。少しだけ体が楽になっている。無駄のないデザインの木の椅子にしがみつくようにして立つと、そこには変わらず、オムレツとサラダがきれいに存在していた。ぼくは椅子に座り直し、無心でオムレツとサラダをむさぼった。いつぶりの食事なんだろう。あまりにも長い時間が経っていて思い出せない

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White point of view 2

「おいしー。 わたしやっぱりここのパスタ好きだ!」
パスタをほおばりながら、音羽は屈託のない笑顔をみんなに向ける。
「ここのご飯おいしいんだねー。学校近いのに来たことなかったのもったいないね」
奏太くんがそれに答えるように言う。
「俺も嫌いじゃないよ。味も雰囲気も……」
緑くんが、遠くをみるようにつぶやく。
「うん。わたしも……」
わたしは、緑くんと目を合わせて微笑む。
「それよりさ! この後どう

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Red point of view 2

「けっこうおもしろかったよね。最後ハッピーエンドになったとこが気に入らないけど」
わたしは余ったキャラメルポップコーンを食べながら、緑くんと腕を組んで人だらけの映画館を歩いていた。
「そうだねー。俺もけっこう好きかも。展開読めるところもあったけど、なんか主人公の性格が好きだな」
緑くんもさらっと映画の感想を吐き出す。わたしたちはありきたりのSF映画を見て、どこにでもいるカップルのようなデートをして

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Blue point of view 2

「やばい」
俺は気づくと、そうつぶやいていた。もう残りの金がほとんどない。今コンビニで買った水とパンを食べながら、人のいないバス停で、降り注ぐ太陽の光から隠れるように座り込んでいた。次の食料を買う金はもうない。このままどうしようか…… パンを水で流し込むと、俺はまたあの星を探しにふらふらと歩いていく。昨日の夜に見て以来、もうあの星は見ていない。昨日はふらふらと車道に出て、危うくトラックに轢かれそう

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Green point of view 1

 まばらな木漏れ日が心地よい。このベンチは、いつもひんやりとしていて居心地がいい。大学の近くのパン屋で買ったサンドイッチを片手に、俺は今日のレッスンで弾く曲の楽譜をパラパラとめくっていた。ここは俺のお気に入りの場所だ。なんだかここだけ、このめんどくさい世界から隔離されて浮かんでいる浮き島みたいだ。「ラピュタだな……」そうつぶやいて、俺は楽譜を閉じた。すると、携帯にメッセージが届く。「緑くん!今日、

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Yellow point of view 2

「きみはやっと……」
誰かがそうつぶやいたかと思うと、ぼくはふわふわの真っ白な布団の中にいた。ぼくは布団からすべり落ちると、下着しか着ていないことに気づいた。床に転がっていたカラフルなパジャマを着ると、銀色のドアの方へ歩いてこっそりと扉を開けた。そこには細長い廊下が広がっていた。どうやらマンションの一室らしい。でも少なくとも4つはドアがあるところを見ると、かなり大きいマンションらしい。そっと足音を

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White point of view 1

 マスカット味のグミをかんで、この退屈な午後をかみしめる。それがわたしのちょっとした贅沢だ。シュワシュワと消えていってしまわないように、軽やかな午後の時間をできるだけ満喫したいんだ。座学の授業が終わったので、わたしはピアノの練習室へと向かう。学生たちが必死に練習するピアノの音がする。幾重にも重なりあって奏でられる不協和音のゆらぎに酔いながら、わたしはくるっと一回転して、無駄に微笑む。予約して置いた

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Blue point of view 1

 俺は何も見ない。見るとすべてが嫌になってしまうから。少ない街灯の光に照らされながら、俺は歩いている。どこに行く訳でもなく、ただただ夜の道を彷徨っている。
「俺は探さなくちゃ行けない。まだやりたいことがある。そのためにあれを探さないと……」
自分に言い聞かせるように俺はつぶやいた。今日もできるだけ多くの場所を歩いて、あれを探した。俺がいつもあの時のことを思い出すと現れるあのチカチカした星を。あれを

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Yellow point of view 1

【これは愛に飢えて、もがいて、あがいて、叫び、戦った者たちの物語。これは、愛を吐き出してしまう迷える者の物語。あつくつめたく、くらくあかるい】

 ぼくは目を開けた。真っ赤なめまいをふりほどいて、ぼくは人ごみに戻った。点滅する青信号の中、ぼくはなんとか横断歩道を渡って、とろけそうなネオンの光の中に飛びこんだ。人がふりまいていく残酷なあまい匂いが、そこら中に満ちたりている。ぼくはこっそり微笑んで、薄

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Red point of view 1

 わたしは何にもないこの世界が好きじゃない。でも嫌いってわけでもなかった。わたしはいつものように高校に行くために、朝のルーチンワークをこなしている。自分ごのみの焼き具合に目玉焼きを仕上げ、食パンと一緒に食べながら、朝の情報番組を見る。そして気だるそうに歯を磨き、鏡を見てキメ顔をして、今日の自分の顔をチェックする。身支度を終えると、家のドアを開けて高校へと向かう。こんなつまらない日常に嫌気がさすほど

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