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米津玄師さんのツアー“変身” 余韻を増幅させた素晴らしい演出

「米津玄師2022TOUR変身」
全国5会場で行われたツアーが先週ついにファイナルを迎えた。
完走できて本当によかった✨

約2時間の夢のようなライブ…、その冒頭と最後には、米津さんがグッズに描いたイラスト“NIGI Chan”がスクリーンに登場し、実際に動いたり運転したりする映像が流れる演出があった。
それがとても印象的で…。

その演出について、いろいろ感じたことをやっぱり書きたくなり、書いておくことにした。


ライブの冒頭、車を運転するNIGI Chanがスクリーンに映し出される。
緑色の顔、赤と黄色のボタンの目、長い爪、なんとも特異な感じだが、動きが可愛い。
駐車場にうまく止められず切り返しをしたりしながら車を止め、車から取り出したジョウロを持ってエレベーターに乗り込み、エレベーターが上がっていく。
そのあと、ライブ会場ステージ中央のエレベーターのような扉からジョウロを持った緑色のシャツの米津さんが現れ、演奏が始まる、という感じだった。


そして、ライブの最後が特に印象的だった。
最後の曲が終わったあと、「ETA」が流れる中、米津さんがまたNIGI Chanの姿に戻って帰って行く映像が流れた。
雨の中、車を運転して帰っていく…
寂しく、でも愛おしく…心は温かいけど切ないような何とも言えない感覚に陥った。

大音量の「ETA」が胸に染みた。
参加した日が雨だったこともあり、いろんな感情が一層リアルに心に迫ってきた。

はっきり言って、このときはこの演出に気持ちを全部持っていかれた。
余韻増幅…この2時間がほんとに夢の中の出来事のように思えた。

まさにツアー‘“変身”
素晴らしい演出だった。


ライブ前に米津さんが、何かに変身するわけではありません、と言っていたが、
…変身した。
いや、変身したんじゃなくて、NIGI Chanが変身して“米津玄師”になった。


グッズが発表されたときはNIGI Chanがこんなに大きな意味を持つとは思ってなかったし、「ETA」とリンクしてこんなに印象的な演出が生まれるとは想像もできなかった…。


ライブでのあの映像を観て以来、駐車場に上手く止められなくて、肩をエレベーターの扉にぶつけて、長い爪でタンバリンを鳴らす(音楽を作る?)NIGI Chanが愛おしくてしかたない。


「かいじゅうずかん」から出てきたようなNIGI Chan…

米津さんが6年前に出した単行本「かいじゅうずかん」。
自分の中の、人間の中の、歪な部分や特異な部分、そういういろんな特徴を持った、米津さんが生み出したかいじゅうたち。

人はみんなかいじゅうの要素を持っていて、だからこそ可愛く愛おしい…
今回の演出で、そんなこともまた改めて感じさせてくれた気もした。


そしてこの演出を見て、今年2月に発売された雑誌の「POP SONG」のインタビューを思い出した。

「自分の中でポップソングとはかくあるべしという哲学みたいなものは確立されているけど、でも同時にポップソングはエンタテインメントである以上、人々に消費されて流れていくものであり、自分はただの道化でしかないという意識もある。そこにも両義性があって、だからこそこのタイトルを選んだのかもしれないです。」
(「SWITCH」2022.3月)

道化、という意識…

ライブ前に、どこに出しても恥ずかしくない“米津玄師”ってものをお見せしたい、とも言っていた。
やはり“米津玄師”というものを切り離したものとして意識している部分はあるのだろうか…。

ステージ上の“米津玄師”は進化していくけれど、本質は変わらない…ということかもしれない。


でももちろんどちらの米津さんも生身の愛おしい存在であり…

いろんな米津さん全部ひっくるめてただただ受け止めたいし、理解したいし、寄り添っていきたい…常にそういう思いでいる。


道化、両義性…という言葉。
「POP SONG」を作っているあたりで、もうツアー“変身”の構想は出来上がっていたのかもしれない。
そして「ETA」もNIGI Chanも、もしかしたらその頃に誕生したのかもしれない。


「ETA」はアルバム『STRAY SHEEP』の時に作った曲だけど暗すぎるから入れるのをやめてそこから少し変えたもの、と言っていたけど、
「ETA」になる前の曲はどんな感じだったんだろう…
あのとき米津さんは何をどう感じどう歌にしてたんだろうな…と時々考えたりもする…。


少し変えて出来上がった曲のタイトルは「ETA」…到着する予定だけはあるが誰もいない…
最初作った頃の気分を感じるような歌詞もあるけれど、
でも道は続いてくんだ、と
宝石が光を反射して輝く…そんな日々に戻れますようにと
泥濘に落ち、味のしない…そんな現実はあるけれど、
あなたへと会いにいく…


いつも聴くと、あの柔らかい声や歌い方と相まって、ほんと多幸感に包まれるような感覚になる。
そしてライブを経て、温かさ愛おしさ切なさが増し、さらに光を感じる曲になった。


ツアー“変身”は、米津さんの歌声がさらにパワーアップしたように感じたし、曲ごとの演出もやはり凝っていて新しい見せ方もあったりで、凄く新鮮だったし本当に楽しかった✨
そしてこの“変身”の演出によってさらに、今までにないくらい印象的でスケールの大きいものになったんじゃないかと思うし、
着実に大きいステージへの道を歩んでるのではと思うようなほんとに素晴らしい演出だったと思う。


次のツアー“空想”の構想も、もう米津さんの中では確立されているのだろう。
次はどんな夢を見せてくれるだろうか…楽しみだ。

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