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金縛り

ある日、恋人と同棲している友人から相談があると持ち掛けられた。
二つ返事で了承し、待ち合わせ場所であるカフェへと向かった。待ち合わせ場所に突くと、私は思わず買ったコーヒーを落としそうになった。
いつもなら明るく朗らかな笑顔を浮かべている彼女の顔は真っ青でいかにも疲れ切っていた。仕事の相談と思い、話し出す。
「相談ってなに?金なら貸さないよ」
私は少し茶化すように笑うと、彼女も困ったように笑いながら話し出した。
「最近よく眠れなくて、夜中に金縛りにあったり息苦しさを感じたりするんだよね」
「仕事のストレスじゃない?病院行ったら?」
彼女の仕事はこの時期から忙しくなると知っていたので過労かと思い、思わずその心配をしてしまった。
「ううん、違うの」
彼女はミルクで濁ったコーヒーの琥珀色の水面を見ながら話を続ける。
「ある日、目をあけると本当に人が乗ってたの。驚いて横を見ると横で寝てるはずの彼氏はいなくて」
「上を向いたら彼氏が楽しそうに首を締めていたの」
彼女はそう言ってコーヒーを飲み干しす。私が言葉を継げないでいると、彼女は困ったように眉を寄せて笑った。
「変なこと言ってごめんね。きっと疲れてるんだと思う」
その後彼女は彼に別れを告げて無事に別れられたという。
あの時の彼氏は夢なのか現実なのかはわからないが、彼女が無事ならばそれでよかったと思う。

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