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落ちるもの

この前の教室で再び何か得体のしれないものを見た。
先生の話は聞いていてもさっぱりわからず、やはり授業に飽きた私は窓の外を見ていた。夕方の帰宅ラッシュになっており、窓の下には帰宅する人々が見えた。蟻のようなその姿は見ていて飽きることもなく、授業そっちのけで思わず見てしまう。

ずっと見ていると何か落下するのが見えた。しかし、先ほど落ちていったのは自分と年も変わらぬ男性だった。しかも、目が合ったときににやりと薄気味悪い笑みを浮かべて落ちていった。
にやにやと笑う顔はただ不気味の一言しか思い浮かばない。
あまりの衝撃に服装すら覚えてしまう。チェックのシャツに黒いインナー、ベージュのチノパン。

授業を中断させたくなく、くしゃみを抑えたような悲鳴が漏れた。皆は先生のほうを見ていて、窓を見ている人などいなかった。
悲鳴を抑えられてすごいな時分などとどこか冷静に物事を考えながらもやはりパニックになっていた。

思わず身を乗り出して下を見るが、蟻の群れは乱れることなく駅へと向かっている。窓際の人も下を歩く人も皆が落下したものに気づいていないようだった。
屋上は閉鎖されており、普段は誰も入ることはできない。自殺をしたといううわさも聞いたことはあるが根拠もないことであり、全く信じていなかった。
ということは自分しか見えていないのだ。また、下の人に干渉しておらず、先日の人影のこともあり霊的なものなのだと確信した。

本当になんなんだこの教室。来期からはとらないから早く授業終わってくれ。ほんとに頼むよ。

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