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雑誌日記 『宗教問題』 安倍家と旧統一教会の長く深い関係

季刊『宗教問題 39』 宗教問題発行

我ながらもの好きだと思うが、こういう雑誌が、安倍晋三追悼コーナーの隣に、ひっそりと置かれていて、思わず買ってしまった。いい本屋さんだ。


1 安倍家三代と統一教会


さて、この雑誌、まず目に付いたのは「安倍晋三暗殺と統一教会」という記事だった。書いているのは、大阪公立大学の中西尋子という宗教学の先生だ。岸信介、安倍晋太郎、安倍晋三の三代にわたる統一教会とのつながりが、宗教学というよりも、週刊誌的な論調で、丹念に書いてあった。読んでみるとわかるが、その他の記事も、おおむね、週刊誌調なのだ。

岸信介が総理をしていた当時は、渋谷区の南平台に自宅を構えていたのだそうだ。首相官邸は利用せずに、その家から国会に通っていたのだ。その隣の家が、統一教会の合宿所で、10人弱の若者が共同生活を送っていた。岸は彼らを将来有望な若者たちと評価していたという。その後、隣家は勝共連合の拠点の一つとなり、岸が首相を退陣し、別の家に引っ越した後は、岸の去った家が、勝共連合の本部に貸し出されたという。

この記事によると、娘婿の安倍晋太郎は、岸から勝共連合人脈を受け継ぎ、選挙の際には、統一教会員の選挙協力の差配などを、自民党の立候補者にしていたという。勝共連合側は、安倍晋太郎が総理になるよう熱望し、具体的に運動をしていたが、突然の病死により挫折。それによってしばらく自民党との付き合いが薄れる。しかし、安倍晋太郎が死去した際の秘書は晋三がしていたため、晋三を通して、自民党へのアプローチは続いていたという。

安倍晋三は、その後、二度も総理大臣になって、それも一番の長期政権だったわけだから、勝共連合(旧統一教会)との関係も、より親密度を増していたのだと思われる。

2 広告のない雑誌 


『宗教問題』というタイトルの、この雑誌は季刊誌だ。文藝春秋と同じ大きさで、160ページ、値段は税込みで999円だった。書店によっては1000円かもしれない。

初めて見た雑誌だが、最新号が39となっているから、すでに39号も出ているのだ。ちょっと調べたら、もともとは、京都にある「白馬社」という、仏教専門の出版社が出していた雑誌で、10号くらいから、「合資会社 宗教問題」というところが新しい版元になって、東京から出版されるようになり、今日に至っているようだった。

この雑誌には、広告が一切ない。広告がないということは、誰にも気兼ねせず、書くことが出来るということだ。しかし、雑誌の売り上げだけでは、制作費も出ないだろうから、きっとスポンサーがいるのだろう。まだまだ知らない雑誌はあるのだなと、思った。同時に、あと何年、紙の雑誌としてやっていけるのだろうか、とも思った。

書き手の顔ぶれを見ても、全然、知らない人ばっかりだが、経歴を見ると半分近くが、三〇代の若手で、女性ライターも多かった。

見開きの連載エッセイを、大月隆寛が書いていた。知っている名前を見つけて、かなり懐かしい気持ちに襲われた。大月隆寛は、民俗学者として、九〇年代に、浅羽通明や切通理作などと一緒に、宝島30や別冊宝島などで活躍した人だ。

浅羽も切通もいまだに現役で、文章を書いたり、本を出したりしているけれど、浅羽は、新宿の四谷で「古書窟/BAKENEKOBOOKS ふるほんどらねこ堂(犬派のきみには狂狷舎)」という古書店を営んでいるし、切通も阿佐ヶ谷で「ネオ書房」という古本屋をやっている。大月は、何年か前に、札幌の私立大学を馘首され、それを不服として、現在は、裁判中だったと思う。3人とも文筆だけでは食べていけていないのか、と思うと、ちょっと残念な気持ちになる。

3 福音派が当選、ウィグルの二人は落選


今号の特集は「参院選2022,そのとき宗教は!?」となっている。いろんな宗教団体が、この間の参議院選挙のさいに、どのような選挙活動をして、誰を推して、その結果、どうなったのか、今後、その宗教団体はどうするのだろうか、といったことが書かれている。宗教問題という雑誌だから、そういう関心の持ち方なのだ。

安倍晋三の事件のあとなので、どの記事も最初に安倍の死にふれてから、本文に入っている。

対象となっている宗教団体は、創価学会、立正佼成会、幸福の科学、そして神社本庁あたりだ。それぞれ、団体ごとに、6Pの記事が組まれ、調査結果とライターによる今後の展望が述べられている。

興味深かったのは、日本ではあまり馴染みのないキリスト教右派の「福音派」の牧師が「維新」から立候補して、当選しており、その人を取材した記事だ。「福音派」というのは、アメリカだとトランプを支持している聖書根本主義派に連なるキリスト教の一派だそうだ。そんなだから、国内の一般的なキリスト教からは、白い目で見られているらしい。しかし、わずかではあるが、今後の維新にとっては、新たな票田になるらしい。

その他に興味深かったのは、ウィグルに出自を持つ女性候補が二人、立候補して、二人とも落選したことを扱った記事だ。一人は、国連職員経験者で、グローバルな国際人をアピールして戦ったが、保守層から叩かれて、あえなく落選している。

もう一人は、中国のウィグル人弾圧を声高に非難する選挙活動をしたら、やっぱり中国のスパイなどという、いわれのない攻撃を、日本の保守層から浴びて、落選している。

その他にも、宗教的なバックボーンを持った、一般的には泡沫候補に分類されるであろう人たちに取材した記事がいくつかあった。古神道やスピリチャルな人だったりする人達だ。それらは畠山理仁のルポには及ばないけど、それなりに面白かった。

4 東京の火葬場はパソナが仕切っていて?料金もバカ高い


その他に面白かったのは、火葬場に関する記事だ。離島を除くと、東京都には、火葬場は全部で17箇所あるのだそうだ。東京23区内に9つ、東京西部に8つだそうだ。首都圏では、民間が運営する火葬場が主流で、地方の火葬場はほぼ公営なのだそうだ。

東京都の火葬場の7割を独占しているのが、「東京博善」という会社だ。最近、この会社が火葬料金を一方的に値上げをしているのだという。それにつられて、他の民営の火葬場も、料金を上げているという。また、東京博善は、自社製の骨壺の購入を強制したり、強引さが目立っているという。

最近は一段落しているが、私もひところは、戸田、落合に複数回、堀之内、町屋、多磨霊園などの火葬場に行った。調べたら全部、民間だ。しかも、落合、堀之内、町屋は、東京博善が経営している。

東京博善の親会社は、廣済堂グループで、現在の東京博善の社長は、パソナから天下ってきた?女性なのだそうだ。グループ企業の赤字を、東京博善の利益で穴埋めしているらしい。そのために火葬料金がつり上げられている可能性があると指摘されている。

現在の火葬料金は、最低が75000円で、そのほかに燃料費の高騰分が、上乗せさらて請求されるのだそうだ。この価格は、公営の火葬場や他の県の倍以上なんだそうだ。

全然知らない雑誌だったが、隅から隅まで読んでしまった。政治色も宗教色も感じなかった。ちょっと、昔の「噂の真相」を思い出した。

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