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読書日記 多田麻美・著『シベリアのビートルズ』イルクーツクの冬はきっと寒い

多田麻美・著 『シベリアのビートルズ』 亜紀書房



タイトルとカバーイラストに魅かれて購入。読んでみたが、いまいちだった。ごめんなさい。読み終えたばかりなのだが、何が書いてあったか、もう憶えていない。サブカル臭のほとんどしない本だった。シベリアもビートルズも、あまり関係なかったなという印象だ。

著者は1970年代生まれのライターだ。京都大学でロシア文学や中国文学を学んだのちに、中国に留学。北京に14年住んでいる間に、フリーのライター兼翻訳者になったという。だから、中国語の本の翻訳や中国を紹介する本などの著作があるようだ。

しかし、今は、ロシアのイルクーツクという60万人ほどの街に住んでいる。本書を読むと、中国に飽きて、どこかほかの国に住みたいと思って、昔、ロシア文学を学んでいた頃を思い出して、ロシアが選択肢に上がったのだという。

その際、著者は、辺境好みなのか、モスクワのような都会ではなく、バイカル湖の近くのイルクーツクを選んでいる。最初に2、3か月、滞在して、現地を体験したうえで、その後に本格的に移住している。

その移住の手続きとか、移住後は、どうやって生計を立てるのかとか、そういったこまごまとしたことが、私には気になったのだが、この本にはあまり書かれていなかった。私には冒険に思えることでも、著者には日常の些細なことで、書くにはあたいしないのだろう。

書かれていないといえば、シベリアとかイルクーツクという街に関しても、それほど詳しく書かれているわけではない。シベリアの気温とか大自然とか、名物の食べ物とか、そういう生活の具体的なハナシがあまり書かれていないのだ。

現在のロシアとウクライナの関係についても、どちら側に立つでも、糾弾するでもなく、平和を希求するものの、意外とさらりと書いている。

今、世界地図で確かめてみたら、イルクーツクは、バイカル湖の北側にあった。ロシアの南の端っこで、ロシアというよりも、モンゴルに近い。著者は、イルクーツクでロシア人の画家と結婚するのだが、その披露の場で、親戚の人たちに、モンゴル人と間違えられて当惑した経験を書いている。イルクーツクは、モンゴルに侵略された過去があるので、アジア系の顔に、拒否があったのだ。そういった歴史背景に、深くは触れずに、さらりと書いている。

肝心のビートルズといった西洋のポップミュージックが、ロシア語を母語とする人たちに、どのように受け入れられたのか、といったことにも記述が少ない。過去に海賊盤が流通していたというが、海賊盤の制作、流通の様子を、もっと掘り下げてくれれば、個人的には面白かったと思う。それに、ロシアのポップミュージック事情についても、もっと詳しくてもよかったと思う。

著者の、帰国子女生活や自伝的な記述が、一番、頭の中に入ってきた気がするが、現在の著者がイメージがさっぱり浮かばない。著者がどういう人なのか、本書を読んでもイメージが結ばないのだ。

著者はオタクではないのだ。そして私はおテク的な記述を求めて、この本を読んでしまったのだ。なんだかもやもやした気分になってしまった。こんなこともある。


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