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それは一体誰のため?「一人歩きする自立支援介護」

自立支援介護とは

全体の大枠としてはこちらの記事をみてもらいたい。 https://style.nikkei.com/article/DGXNASFK28023_Y3A120C1000000/

竹内孝仁教授により提唱されているものになります。
一言で言うと、「要介護になった人を、もう一度自立状態に引き戻す」ことです。

自立支援介護には4つの基本ケアがあります。
①水分 1500㎖/日
②食事 1500Kcal
③排便 生理的、規則的な排便
④運動 歩行を中心とした運動量の確保

以上の4つのケアをすることで、要介護状態の改善を促していきます。竹内氏は特別なことではなく、普通の状態に戻すだけだと言われています。

ケアしていく上で、知らず知らずのうちに水分摂取量が減っていて脱水状態に陥ってしまうことがあるようです。脱水になると、発熱したり、頭痛、めまい、臓器不全などさまざまな症状が出てきます。それらを防ぐためにも水分摂取量を確保することが大事になってきます。
排便に関しても、下剤ではなく、トイレで排泄することが望ましいとされています。そのために、しっかり食事をとり、運動して腸を動かす必要があります。いずれも、単独のケアではなく、相互に関連し合っています。

なぜ自立支援介護なのか


段階の世代が75歳を迎える2025年に向けて健康寿命を伸ばすことが重要課題となっています。
そのために、「予防・健康管理」、「自立支援」に軸足を置いた医療・介護システムを2020年までに本格稼働させる。と未来投資会議で議論されてたことが背景にあります。

しかし、効果的な自立支援の方法は確立しておらず早急にデータを集めて効率的かつ、科学的介護の確立を目指していかなければなりません。そこには、見守りセンサーをはじめとする介護ロボットの導入も加速されていきます。

高齢化の先進国である日本で、「介護」の問題を自立支援介護により解決できると他国への相当なアピールになるのではないでしょうか。
データに裏づけされた介護をパッケージにして、海外に輸出していきたいという国の思惑も少し伺えます。

それは一体誰のためなのか


僕が1番懸念していることです。
自立支援介護に取り組む施設として、「オムツゼロ」や「機械浴ゼロ」といったキャッチーな言葉が使われています。
僕は必ずしも“ゼロ”にすることが良いとは思っていません。例えば、関節がかたまってしまい、膝が伸びなくなる高齢者もいます。そのような人は立つことが困難になります。それなのにも関わらず、力づくで2人で介助してオムツを外すことをしているところもあります。一体、誰のためなのでしょうか。僕は疑問に思います。事故に繋がる可能性もあるし、介護している職員にも負担がかかります。実際に排泄に対する自立支援介護を実践しているならオムツ率10%を切らないといけないとアドバイスを頂いたこともあります。なぜ、目標が数値なのでしょうか。これも疑問に思います。
つまり、「誰のために?」という視点が抜けてしまっていることが多々あります。いつの間にか、会社のブランディングのため、日本のためになってはいないだろうか。もちろん両立する場合もあるので一概には言えないが、偏り過ぎているとも思ってしまう。

私の思う自立支援介護

自立支援介護を実践していき、果たして何が結果になるのだろうか。介護度が下がることによる社会保障費の削減ですか?それにしては、効率が悪すぎる。介護を予防することは、難しい。どうしても年齢には勝つことができない。個人的な印象(あまり勉強できていないので確信ではない)では、社会保障費の削減をするのであれば、医療の適正化(必要な人に必要なだけ)看取り促進(終末期での医療を減少)することではないかと思っている。
地域医療構想で病床数の削減が図られ、自ずと社会保障費は下がっていくであろう。

では、オムツゼロや機械浴ゼロが結果なのだろうか。それもあっても良いと思う。ただ、僕は言いたいのは、一貫して「誰のために?」という点である。
その人が、「well-being(幸福)」なのかという視点です。
well-beingが前提として、オムツゼロや機械浴ゼロになるのはなんら問題ない。しかし、このwell-beingの視点が抜けているのではないだろうか。

本当の目的はオムツゼロにすることでも、機械浴ゼロにすることでもないはずです。いつのまにか、well-beingの手段であるはずが目的になってはいないだろうか。

普通のトイレに行けない人はオムツが良いだろう。お風呂に入ることができない人は機械浴が良いだろう。

しかし、自立支援という考え方は素敵であることに疑いようの余地はない。今まで、歩いて移動できるにも関わらず、車椅子を使ってしまう。普通のトイレで用を足せるのに、寝かせてオムツ交換をしていた。この現状を変えたのが自立支援という考え方である。

先日、シルバーウッドの下河原さんの素晴らしいツイートを拝見した。

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つまり、これでいうと自立支援介護は「5」に当たるのではないかと思う。みてわかるように、介護にはたくさんのやるべき大切なことがある。僕は特別養護老人ホームに勤めているが、日に日に利用者の身体は衰えていく。時間の経過には勝てないと実感する。そして、抗うことが本当に良いことなのかと日々疑問に不安に感じながら仕事をしている。
右肩下りに身体も精神的にも衰えゆく利用者に対して、より自然に逝くことができるように環境を整えていくことが介護保険分野の真髄だと僕は思う。右肩下りになるのを認めつつも、その時点でのwell-beingを目指していく。そんな介護をしていきたいなと切に思います。

終わりに

今回は自分の介護に対する思いの丈を、勇気を持って書いてみた。真剣に自立支援に取り組んでいる人から、もしかしたら批判が来るかもしれない。それでも僕にとって大切なことなので発信をしたいと思いました。
ついつい、日々のルーティンの中で忘れがちになってしまう「誰にためなのか」ということ。僕は介護士であり、介護士ではない中地半端な理学療法士という立場である。主観的な部分と客観的な部分を行き来できる存在でありたいと思います。

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