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麹菌 -発酵の基本知識-⑮

発酵食品を語る上でやはりこの麹菌を省くことは不可能、といってもいいほどに日本の発酵食品になくてはならないのがこの「麹菌」です。

麹菌はカビの仲間で、麹菌は米麹から分離したカビであり、現在は麹を作るカビのみを麹菌と呼んでいます。


麹とは

「麹」とは、米や、麦、豆などの穀物を蒸したものに、麹菌を繁殖させたものを指します。

最近よく耳にする、いわゆる「麹」とよばれるもののほとんどは「米麹」を指したものといっていいでしょう。

米麹は蒸した米に麹菌を繁殖させたもので、主に清酒、味噌、甘酒、みりん、焼酎、泡盛、などに用いられています。

その他に「麦麹」、「豆麹」があり、麦麹を使ったものには、醤油、麦味噌などがあり、豆麹を使ったものには、醤油、豆味噌などがあります。


発酵食品に使われる麹の種類

l  米麹 白米を蒸して麹菌を繁殖させたもの。乾燥と生のものがあります。 ごく一般的な麹であり、もっとも用いられる麹です。

l  豆麹 大豆を蒸して麹菌を繁殖させたもので豆味噌の材料となります。

l  麦麹 押し麦、丸麦を蒸し麹菌を繁殖させたもので、麦味噌の材料となります。

l  醤油麹 蒸し大豆と焙煎した麦に麹菌を繁殖させたもので、大豆を主原料とした 醤油の原料となります。


麹菌の種類

日本にはおよそ250種以上の麹菌が存在し、原始の時代から日本人がはぐくんできた日本特有の菌です。麹菌は日本以外にも存在しますが、その殆どが日本特有ものものであり、中でも「アスペルギルス属」の3種においては、日本醸造学会が2006年に日本の「国菌」と定めました。


1.       アスペルギルス・オリゼー 黄麹菌・清酒、みりん、味噌、醤油、酢など

2.       アスペルギルス・ソーエ(アスペルギルス・ソージャ) 醤油など

3.       アスペルギルス・アワモリ・・旧名(現在:アルペルギルス・ルーチェンシス) 泡盛、焼酎


その他のアスペルギルス属の麹菌は以下の通りです。

1.       アスペルギルス・タマリイ たまり醤油、たまり味噌

2.       アスペルギルス・カワチ 焼酎

3.       アスペルギルス・ウサミ 焼酎

4.       アスペルギルス・グラウカス 鰹節

5.       アスペルギルス・レペンス 鰹節


アジア圏などを中心に日本以外でも麹菌は環境があえば生育できます。
ただし、アスペルギルス属での発酵食文化は日本のみで見られ、古くから日本の食文化を支えてきた菌であることが国菌に選ばれた理由となっています。


麹菌の特徴

麹菌は培地である米を分解する際にさまざまな人体にとって有益なものを生み出します。

その際の副産物としていくつかの酵素を生成します。

麹菌は好気性であり、空気のあるところで繁殖し、適温は28℃~32℃が適温でこの温度帯で活発に生育します。

耐熱性が弱く、45℃を超えると菌体は死滅しますが、胞子は80℃前後まで生き続けることが可能です。

微酸性の環境を好みますが、胃酸のような強酸性の環境には耐えることができません。

また、耐塩性もなく、2%程の塩分濃度で死滅してしまいます。


さまざまな発酵に関与する菌の中で麹菌はあらゆる面において耐性が弱いのが難点ではありますが、発酵食品を生産する面では、麹菌の菌体そのものよりも、麹菌が生成する酵素の役割の方が重要視されています。

麹菌を蒸し米に培養してから米麹として使用されるまでの間に、麹菌は莫大な量の酵素を生成します。

その数はおよそ100種類以上にものぼり、発酵食を生産する際はこの酵素の性質を利用します。

大豆などのタンパク質をアミノ酸などのうまみ成分に変えるものや、米などのデンプンを糖に変えるもの、脂肪を分解するものが代表的な酵素であり、麹菌が死滅後も酵素の分解作用は持続します。

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