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甘酒の製造方法 -発酵の基本知識-㊶

甘酒を作る方法はいくつかあり、製法によって甘みや水分の保有状態が異なります。

代表的な方法として、米麹と水のみで発酵させる方法と、米麹と炊いた米もしくは粥と水を混ぜ発酵させる方法があります。

一晩あまりでできあがることから、古くは一夜酒とも呼ばれていました。

麹菌の生成するデンプン分解酵素であるアミラーゼ酵素が最も活発になる温度である55度から60度の間で8時間から15時間程発酵させます。

自家製で作る場合、炊飯器やヨーグルトメーカーを使用して作ることが可能ですが、温度管理が重要となります。

ヨーグルトメーカーなどを使用することにより、タイマーなどで温度と時間をセットできるため、炊飯器で作るよりも容易で失敗を防ぐことができます。


米麹と炊いた米を同量用いて発酵させたものを「かた造り」、米麹と炊いた米を同量用いたものに米麹と炊いた米の半量の水を加えて発酵させたものを「うす造り」と呼んでいます。

米麹のみに同量か倍量のぬるま湯を加えて発酵させる方法を「早作り」と呼び、名前の通り4~6時間の間で糖化発酵します。

炊いた米を加えることで、アミラーゼ酵素は米の分解に時間を必要とし、米麹だけの甘酒と比べ時間を要しますが、その分ブドウ糖量は多くなるのが特徴です。


甘酒には、麹菌が生成した酵素が豊富に含まれ、酵素活性は発酵止めを行わない限り続くため、品質が変化しやすく、長期保存には向いていません。そのため製品として流通させるためには、酵素活性を止めるための火入れ作業が必要となります。

※火入れとは、酵素の活性を失活させるための目的で、流通前の清酒や醤油などに行われます。


自家製などで甘酒を作る場合、栄養効果を得るためにはなるべく火入れを行わない状態で消費するのが望ましく、その都度消費する分だけ作る事をお勧めします。


自家製甘酒を作るときの注意点

  • 納豆菌に注意する
    納豆菌はブドウ糖をエサに繁殖します。甘酒は乳酸菌のような他の菌を寄せ付けないためのバリア機能が皆無のため、他の菌が繁殖しやすく、納豆菌のような繁殖力の強い菌への耐性がありません。納豆を混ぜたスプーンなどをよく洗わない状態で使用したりすると、急激に菌が繁殖してしまいますので避けましょう。

  • 温度を65℃以上にしない
    麹菌の生成する酵素活性に最適な温度は55℃から60℃です。それ以上高い温度になると酵素が失活し、分解力がなくなります。
    甘酒が甘くならないなどの失敗はこのことが原因で起こることが多く、一度活性を失うと元には戻らず甘くなりません。失敗してしまった時は料理のとろみ付けなどに利用するようにしましょう。

  • 保存期間は冷蔵庫で約2週間が目安
    それ以上保管する場合は冷凍保存しましょう。冷凍庫で1カ月程保存が可能です。

  • 乾燥麹と生麹のどちらでも使用が可能
    新鮮な生麹が手に入る環境であれば、生麹の方が酵素の分解力が強いため生麹の使用がよいでしょう。生麹は日にちと共に酵素の分解力も弱まるため、すぐに使用しない場合は冷凍保存し保管しましょう。冷凍後も酵素の分解力は残りますので糖化発酵は行われます。

  • 甘みは温度、米の種類、米麹の量などで変わる
    温度が高く、米の糖度が多く、米麹の割合が多い程甘く仕上がります。
    作りたい甘酒の仕様に応じて調節するとよいでしょう。


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