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私が東洋医学の鍼灸を選ばなかったわけ

鍼灸師やマッサージ師の国家試験の結果が発表されました。また、新しい鍼灸師さんたちが誕生します。

とはいうものの、これはまだスタート地点。鍼灸師の仕事は、学校で習ったことだけでは仕事になりません。効果が出せる施術をするには勉強が必要ですが、ここで重要なのは方針選択。
どんな鍼灸を学ぶか、です。

・東洋医学を選ぶか、現代医学を選ぶか

以前に書いたとおり、鍼灸には2つの大きな流れがあります。
一つは、中国で生まれて発展してきた東洋医学の鍼灸。
もう一つは、現代医学の知識を元にした鍼灸。

どちらを選ぶかは、個人の好み次第。

・東洋医学の理論は「閉じている」

原則として、東洋医学は、人体を「気」で捉えます。気が五臓六腑と経絡を回っていて、その流れが不調だと健康を害すると考えているのです。
東洋医学の人たちは、陰陽説、五行説などの理論を使いこなして、鍼を打ち、灸を据えます。

たとえば東洋医学では、寒邪、熱邪などの邪が身体に入って、害をなすと考えます。
ここで「熱邪か。熱が身体に入るんだな? では熱を…」と考えてはいけません。

東洋医学の熱邪は「暑いときには、こんな症状がよく起きる」という説明概念の一つに過ぎず、実際の熱がそこにあるわけではありません。
治療の方法も、経験的に得た知識を一つの体系にまとめたもの。東洋医学の理論上は因果関係があっても、東洋医学の外の理論とは通じていません。

東洋医学で説明した症状は、東洋医学の方法でしか解決できないのです。

・多分野に通じる現代医学

現代医学の場合は、身体で起きている現象は客観的なもの。
ひとつの症状は、化学でも、物理でも、生理学でも、病理学でも、同じものとして捉えられます。一つの方法に、いろんな手段が使えますね。
多くの分野の研究データも、同じ文脈で使うことができます。

もし、いろいろな分野から刺激を受けて考えたいなら、現代医学を使うほうが親和性が高いです。
私は、そんな理由で現代医学側の鍼灸を選択しました。

もと高専にいた関係で、物理的に説明できるもののほうが馴染みやすかったこともありますが。

・どちらを追求したいか

一方、東洋医学の方は経験の積み重ねでできています。
そのため、現代医学的に説明しにくい不定愁訴などに対応するのが得意だったりします。また、伝説的な医師の話など聞くと、まだまだ可能性があるかとワクワクするのも確か。

現代医学と東洋医学、どちらを選ぶかはその人次第。
新しい鍼灸師さんたちが悔いのない選択をされるよう、お祈りしております。

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