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フィルムカメラ〈日記と短歌〉

 久しぶりにフィルムカメラを取り出してみた。RICOHのGR10。
 RICOHのGRシリーズは、コンパクトカメラなのにとてもよく撮れるカメラで有名だ。デジタルカメラのGRⅡも持っているが、それよりもずっと昔に手に入れたのが、このGR10だ。
 フィルムカメラのGRシリーズの中では一番安く、オートでしか撮れない。撮影技術のない私にはちょうどよくて、価格も手頃だった。レンズは高価な他のGRカメラと同じものなので、とてもよく撮れた。
 カメラを買ったのは2002年秋。この年のこどもの日にシェルティを飼い始めた。いいカメラで撮りたいと思い、色々探してこのカメラにたどり着いた。まだ、フィルムカメラも珍しくなかった時代のことだ。
 小さくて軽くて、シンプルな外見と操作。このカメラとフジフィルムのリアラエース100というフィルムで撮った写真が、色彩が優しくて光が美しくて滑らかで、とても好きだった。
 犬の写真ももちろんたくさん撮ったし、家族の写真や、もう亡くなってしまった祖母の写真も撮った。デジタルカメラとは違うから、やたらたくさんシャッターを押すわけにもいかなくて、だいじにだいじにシャッターを押した。
 シャッターを押した瞬間、その場とその時間から一瞬が切り取られて小さな機械の箱の中に記録される。
 フィルムの枚数分撮り終えるまでに時間がかかることもあって、プリントしたときには撮ったことを忘れてしまっていた写真も現れる。そういう、時差を伴って現れるフィルム写真が好きだ。

 このカメラは今でも使える。液晶表示部分に抜けがあって、フィルムカウンターがはっきり見えないところがあるけれど、動作は問題ない。
 フィルムが高価になり、リアラエースも販売終了してなくなってしまったようだけれど、時々フィルムを買ってきて、カメラの裏蓋を開けてセットする。
 そっと注意してフィルムを伸ばして、爪に引っ掛けて、フィルムをカメラに入れる。蓋を閉じる。じーっと巻き上げる音が低く響く。
 もうその時から、なんだか嬉しい。きっとのちのち大切だったんだと思う時間を、これから撮っていくのだ。


こんなにも君ばかりだね沢山の
私のいない私の写真


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