テレワークを機に、管理職の役割見直しを

 新型コロナウィルス対策で急速に広がったテレワーク。実施している人に聞いてみると、以前よりも仕事がはかどるという声が多い。一方、上司の側からはマネジメントが難しいとか、部下の仕事ぶりが見えないので不安だという声が聞かれる。

これまで会社では「最近の若手は自立していない」とか、「上司に依存しすぎる」という評価が多く、「指示待ち族」という言葉も生まれた。

 ところがテレワークの実施によって否が応でも上司から切り離されると、むしろ部下に依存していた上司の姿が浮き彫りになる。実際にこれまでは、部下の仕事に対して必要以上に口を出したり、報告を求めたりする姿をしばしば目にした。それが管理職の仕事だと思い込んでいたのである。

 上司の口出しや頻繁な「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)がなくても仕事がスムーズに回ることが明らかになった以上、このままでは管理職の存在価値そのものが危うくなる。

 私は分厚い管理職層のなかからエース級を引き抜いて、新規事業の開拓など「攻め」の仕事に就かせるよう提案してきた。それによって部下はノビノビと仕事ができるし、管理職自身も潜在能力を発揮し、仕事にやりがいを持てるようになるだろう。そして会社としても、現在の人員でもっと多くの事業が行えるようになる。

 降ってわいたようなテレワークの導入は、分厚い管理職層にメスを入れ、人材の有効活用を図る好機でもある。長期的には「禍転じて福」となるに違いない。


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「個人」の視点から組織、社会などについて感じたことを記しています。