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#創作大賞2024

【詩】鼻は銃

【詩】鼻は銃

巨大な象の沈んだ目は
遥か遠くの一点をじっと見つめている
垂れ下がっていた長い鼻が
ゆっくりとひとりでに持ち上がり
ついには地面と水平になり静止する

先まで皺の刻み込まれた
長く真っ直ぐに伸びる鼻は
どこまでも撃ち通す銃
根元を膨らまし狙いを定め
目には見えない弾丸を放つ

発射された透明な弾丸は
知覚できない猛烈な速さで
空気を裂いて一直線に飛んでいき
買い物帰りのあなたの頭に
深く確実に突き

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【詩】ささやいてください

【詩】ささやいてください

ささやいてください
でも近くでささやかれるとうっとうしいです
離れてささやいてください
でも離れてささやかれると聞こえません
大きくささやいてください
でも大きくささやかれるとささやきになりません
慎重にささやいてください
でも慎重にささやかれると疑念を抱きます
明瞭にささやいてください
でも明瞭にささやかれると伝わりすぎます
控えめにささやいてください
でも控えめにささやかれると心配になります

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【詩】瞳の中の楽園

【詩】瞳の中の楽園

猫の瞳の中に楽園があることは
猫好きたちにも知られていない

猫を思いやり
信頼し
愛している者が
穏やかな心持ちで
その瞳に見入っていると
いつの間にか中へと吸い込まれ
気がついたときにはもう
楽園に着いている

瞳の中の楽園は
晴れ渡る暖かな空の下に
柔らかな草原がどこまでも広がり
あちらこちらで無数の猫達が
毛づくろいをしたり
ちょっかいを出したり
散歩をしたり
昼寝をしたり

本当にここは

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【詩】泡の鎧

【詩】泡の鎧

泡の鎧を身にまとえ
相手は滑って何もできない
自分も滑って何もできない
すぐに鎧を洗い流せ