一昌平

元小児科医。小説やエッセイで癒やしが提供できればなと思っています。 ∞toryというサ…

一昌平

元小児科医。小説やエッセイで癒やしが提供できればなと思っています。 ∞toryというサイトではルビ付きで小説などを公開しています。 Amazon.co.jp アソシエイトメンバー https://mugennomonogatari.com/

マガジン

  • 夢亡き世界

    連載中の小説です。頭の中で想像したことが魔法みたいになんでも実現出来たら、機械によって感情が奪われてしまったら……。未来が舞台のSFファンタジーものです。

最近の記事

小説二作目とサイトを作りました。

夢亡き世界を公開し終えてから二作目の小説を書き始め、ようやく完成した。小説自体は2月ごろには概ね書き上がっていたが、ある思いつきもありここまで時間がかかってしまった。 それは小説投稿サイトだけでなく自分のサイトにもアップすること。そこでは総ルビで読めて、かつルビをオンオフで切り替えられるようにしたいという思いだった。 きっかけはルビ財団という団体の記事を見たこと。その財団では総ルビを勧めていて、その考えに共感したからだった。 また「若者の読書離れ」というウソ (平凡社新

    • 夢亡き世界 最終話

      あらすじ 第25話に戻る  ナカハラの反逆から半年が経過した。彼はいまだにキャピタルの中で生きている。  ナカハラの処遇を相談した結果、彼を生かすことに決めた。誰もキャピタルを止めようというものはいなかった。  意見の中心はナオミだった。彼女はなんとしてでもナカハラをこっちの世界に連れ戻すと息巻いていた。  キャピタルの生命維持装置を利用して水分や栄養がナカハラに供給されている。彼は私たちが生かし続けることも見越していたのだろうか。ただ栄養を補給したとしても彼がどれだ

      • 夢亡き世界 第25話

        あらすじ 第24話に戻る 「どういうことでしょうか」  ヤマモトが通信端末に向きなおり操作する。突然、目を見開き無言で画面をまたこちらに見せてくる。  詳細画面にはナカハラの顔が映し出されていた。  どういうこと? なぜナカハラが昏睡状態になっている。 「誤って自分自身を昏睡状態にしちゃったってこと?」  ホシダが疑問を呈する。ナオミがヤマモトの通信端末を奪いとり食い入るように画面を見つめる。 「わからない。ログを見ると昏睡状態に陥ったのはたった今。システムの書

        • 夢亡き世界 第24話

          あらすじ 第23話に戻る 「目的はなんだ!」  ホシダが鋭い声をかける。 「交渉しに来たんですよ。昏睡状態の人を救いたいなら乗るべきだと思いますが」 「要求はなに?」  口を開こうとするホシダを制してクロミヤが応じる。 「待って。そもそも要求がとおると思っているわけ。夢の力を使えないあなたに勝ち目なんてあると思っているの?」  ナオミが苛立ちを隠さずぶつける。 「ええ。だからここに来たんですけどね」  いつもの厭味ったらしい口調は変わっていない。漆黒によって

        小説二作目とサイトを作りました。

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        • 夢亡き世界
          27本

        記事

          夢亡き世界 第23話

          あらすじ 第22話に戻る  社長室で仕事を続けていると突然警報が響き渡った。クロミヤは目の前の端末を開き確認する。原因を突き止めて驚く。  理由はわからないが、キャピタルに入っている全員が昏睡状態に陥っている。  キャピタルのシステムを開くとソフトウェアが見たことのないプログラムで書き換えられている。編集履歴にはナカハラの名前が残っていた。  なにが目的かはわからないが問い詰めている場合ではない。昏睡状態が長く続けば命にかかわる。早く何とかしなければ。  端末に手が

          夢亡き世界 第23話

          夢亡き世界 第22話

          あらすじ 第21話に戻る  目の前の輝きを拾い上げる。  サイバーメディカルの社長室の窓から街を見下ろす。ようやくここまで来た。  世界中にキャピタルを導入する。それを達成するまで、どれだけの時間がかかっただろう。今は西暦何年だったか。もはや自分が何歳なのかも覚えていない。  開発から世界中への導入。政治的工作から反対派の押さえつけ。医療用デバイスの真の目的に気づいたものへの対応。  そのすべてを自分ひとりで行った。開発だって時間を超える能力を使えば無限に続けられた

          夢亡き世界 第22話

          夢亡き世界 第21話

          あらすじ 第20話に戻る  暗い。いや何も見えない。目が黒く塗りつぶされたかのような暗闇の世界。音もなく熱さや寒さも感じない。  かきわけるように進む。どれくらい時間が経ったのかもわからない。  気がつくと目の前に白く輝くものがいくつも見えた。それは鍵を開けたときにみた記憶の光と同じだった。  クロミヤの記憶だ。ユメは見えない手を伸ばして、漆黒の中にばらまかれた光に触れる。  気づいたら道路に立ち尽くしていた。目の前にはなにもない。地面はえぐれて、まるで隕石が衝突し

          夢亡き世界 第21話

          夢亡き世界 第20話

          あらすじ 第19話に戻る 「すごい。僕なんかじゃまったく歯が立たないや」  ホシダの称賛に複雑な思いを抱く。この力はクロミヤとの戦いで無理やり得たようなものだ。できればみんなと一緒に能力を培っていきたかった。  ユメは部屋を見渡す。ナカハラが残っていれば話は早かったが、すでに誰もいなかった。 「ナオミさん。キャピタルが原因なら中央サーバー室に向かいましょう。ついてきてください」  ふたりが社長室から出ていく。ユメはホシダとシマとともに窓際に近づく。  空を見上げる

          夢亡き世界 第20話

          夢亡き世界 第19話

          あらすじ 第18話に戻る 「ユメです。実は緊急事態で……」  言葉を続けようと思ったらホシダの目線が遠くなっていく。シマが椅子  を倒して、こちらに近づいてくる。その目つきは真剣そのものだ。  体が硬直する。夢の力で抑え込まれている。とっさにユメも目線を遠くにやる。目の前にベールがかかり夢の世界へと入っていく。  硬直を解くイメージを思い浮かべる。体が楽になるのを感じると同時に夢の世界から戻ってくる。  シマの動きが止まりホシダを振り返る。 「シマさん。拘束が外さ

          夢亡き世界 第19話

          夢亡き世界 第18話

          あらすじ 第17話に戻る 「さっきもいったじゃないですか。下克上です。まあ成功というか失敗というか」  ナカハラは軽く笑う。しかしどこか乾いた、諦めのような感情が伝わってくる。 「ユメさんの話を聞いて、ここの歴史を紐解いてみたんです。するとキャピタルの開発歴史をまとめた資料の至るところに社長の姿が写っていた。だからある仮説を立てたんです」 「仮説?」  聞いてもいないのにナカハラはしゃべりだす。こんなことをしている場合ではない。しかし状況を理解したいという欲求が、ユ

          夢亡き世界 第18話

          夢亡き世界 第17話

          あらすじ 第16話に戻る  空に浮かんでいる真っ黒な人間。それが形を変えて球体になっていく。混じりけのない黒色は空中に穴があいたように見える。その様子を見て周囲のざわめきが強くなる。  目の前に漆黒がせまっている。徐々に父親と母親が飲み込まれていく。恐怖が、不安がユメの心の中に広がっていく。  夢を見ている。頭の中でぼんやりと気づく。漆黒について考えた一日だったからだろう。断片的に、あのときの記憶が、目の前に映し出されていく。  目の前にスーツを着た少女が泣いている。

          夢亡き世界 第17話

          夢亡き世界 第16話

          あらすじ 第15話に戻る  ある日のこと、いつもと同じようにユメは端末と向かいあっていた。すると部屋のドアをたたく音が聞こえる。音を聞いて振り返るとドアが開き白衣姿のナカハラが入ってきた。  いつもなら、すぐに無視して端末に向き直っていたかもしれない。しかしノックして部屋に入ってきたこと。へらへらした表情ではなくいつになく真剣な表情だったため、ユメは端末に向き直ることを忘れてそのままナカハラの顔を見つめていた。 「そんなに見つめられると照れるじゃないですか」  いつも

          夢亡き世界 第16話

          夢亡き世界 第15話

          あらすじ 第14話に戻る  殺されかけていた。それは夢の力によってではなく、膨大な仕事の力によって。サイバーメディカルの日々は文字通り忙殺の日々だった。  ユメはサイバーメディカルの一室で端末の画面をにらみ続けていた。社長室がある最上階のふたつ下のエリア。そこがユメに割り当てられていた。居住スペースも兼ねているためワンフロアが貸し切りとなっている。  手前の部屋を仕事部屋、奥の部屋を居室にしている。それでも各部屋は持て余すほどの広さだった。  階下ではマニュアルどおり

          夢亡き世界 第15話

          夢亡き世界 第14話

          あらすじ 第13話に戻る 「今日はこれくらいかしら」  クロミヤの声をユメはサイバーメディカルの床に這いつくばりながら聞いていた。目の前にベールがかかり気がつくとDLFの自室にいる。  ベッドに倒れ込むと涙が流れた。どうしてこんなことになってしまったのだろう。  クロミヤと対決した日から三カ月がたち生活は一変してしまった。  あの日、DLFで意識を失って倒れたらしい。目が覚めたときにはすべてが解決していた。ホシダとシマは潜入任務としてイシベをサイバーメディカルに戻し

          夢亡き世界 第14話

          夢亡き世界 第13話

          あらすじ 第12話に戻る  しばらく今の出来事が理解できず呆然とする。思い返せばクロミヤの言動すべてが浮かぶ。吐き気はないが、あのときの回転していた感覚も思い出せた。  しかし今までの自分が感じてきた記憶と違う。なにがどう違うのか、それは言葉では説明できない感覚的なものだった。 「ユメさん。資料は見つかった? そろそろ話しあいを始めたいんだけど」  本棚の陰からナオミが姿を現す。声に驚きユメの体が飛び上がる。 「ごめん。驚かせちゃった? ホシダたちも資料をそろえたか

          夢亡き世界 第13話

          夢亡き世界 第12話

          あらすじ 第11話に戻る  ユメはホシダたちに救出されたときのサイバーメディカルの一室にいた。窓の前にクロミヤは立ち、こちらを見つめている。脱出のときに割られた窓は直され、机やイスも整然と並んでいる。あのときのような吹きすさぶ風は感じられなかった。  クロミヤの姿を見て、ユメは自分で力をコントロールしてサイバーメディカルまで到達できたことを実感した。 「どう? 夢の力を自分のものにした感覚は」  クロミヤがほほ笑みを浮かべながらユメに問いかける。 「目的はなんですか

          夢亡き世界 第12話