頑張りたくなくなったのは、いつも焦っていたから
パートを退職することにした。
先週から、急に「もう頑張りたくない」「疲れた」「好きなことに心が動かない」トリオが心の中を席巻した。
最初は職場のストレスが原因だった。
人間関係は決して悪くなかった。とても良くしてもらっていた。
だけど、ほかの人みたいに気楽に愚痴をこぼしたり、ガハガハ笑えるような関係の人はいなかった。
ある人のイラついた独り言がとても嫌で、先週の月火と欠勤したあと、上司に相談した。
件の人は健常者ではないのだという。だから目をつぶってほしいと言われ、その件は納得した。
それでも心は晴れない。
気晴らしに外出しても、公園の木陰のベンチに座って、いつまでも目を閉じていたかった。
文具を見て回るのも、外食もなんだか味気ない。
なんか変だ。
いつも通っている精神科へ相談に行くことにした。
受診する日、外出する前になんとなくYouTubeのホーム画面を眺めていたらスピッツの新曲が上がってきた。
深く沈んだ心の扉をそっと叩く、マサムネさんの声と郷愁を誘う音色。
AmazonMusicでランダムにスピッツの曲を流し始めた。
「空も飛べるはず」や「魔法のコトバ」で、声を上げて泣いた。
大好きだけど、泣いたことなんてなかった曲だったのに。
夫に付き添ってもらい、精神科でここ最近のおかしな様子や、溜め込んでいたうっぷんを書き連ねたルーズリーフの束を先生に読んでもらった。
「うつ症状が出ていますね」
「ちょっと休息しましょう」
「会社には『抑うつ状態』と言ってください」
症状が出てから間もなかったので、うつ病とまではいかなかったが一歩手前くらいになっていた。
新しく処方された薬は強すぎて、飲み始めは日中眠くてふらつきがひどく、布団にくるまって薬局に減薬の指示を仰いだくらいだった。
職場に相談したところ、まず精神疾患や服薬を隠して入社したことで印象が悪くなっていた。
休職の条件には該当せず、退職を決めた。
一緒に働いていた人たちに何も告げないまま、翌週明けに手続きを済ませてきた。
上司は「頑張ってください」と去り際に残した。
うつ症状が出ていると分かってわざと言っているのか。
こんなことで落ちぶれているような人間ではないよという、せめてもの励ましだったのだろうか。
分からない。他人のことだから。
後者だと思いたい。
頑張らない自分は、どこか別の人間になった心地だ。
診断を受けて数日は心が沈んだままで、笑うことすらままならなかった。
夫と息子がいない時間に声の限り泣き叫んだ日もあった。
服薬や退職のおかげか、ここ数日は抑うつが落ち着いてきた。
家事や息子の面倒はこなせている。
自分の趣味や活動も、高揚感は以前よりないけれど、楽しいとは思えるようになった。
道端のライラックや藤棚を眺めて心が安らぐ自分に戻ってきた。
退職で収入減となると、夫に重荷を背負わせるのが申し訳ない。
けれど夫は「無理して働いても続かないからさ」「(再就職は)焦らなくていいから」と言ってくれた。
それでも家計を鑑みると、あまり長期間夫に甘える訳にはいかない。
結婚後~育児の間、7年のブランクがあった人間が言うのはおかしいけれど。
思えばいつも、頑張りと焦りは表裏一体だった。
頑張りたくなくなったのは、もう焦りたくない、という悲痛な心の叫びだったのかもしれない。
真っ白に消去したこれから先のこと。
ちゃんと描くために、がんばらない。今は。
※ヘッダー画像はぷんさんからお借りしました。ありがとうございます。
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