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ベトナムのヘルステック事情:積極的な医療IT政策が後押しするデジタル化

こんにちは!
メプラジャパンCEOの佐藤創(さとうはじめ)です。

今日は「ベトナム」のヘルステック事情をお伝えします!


急増するスタートアップ投資額

ベトナムでは、スタートアップへの投資が年々増加しています。特に2018年になったあたりから、シンガポールのVCなどと話していると「(インドネシアの)次に狙っているのはベトナムだ」という声を良く聞くようになりました。

主な理由は、
・まもなく人口 1億人に達する。
・中間層が増えてきた(1人あたりGDP 2,500ドル超)。
・オフショア開発によって優秀なエンジニアが豊富になった。
などが挙げられます。

すると実際に、2018年にはスタートアップへの投資額(ベトナム国内の合計)が 1年で3倍になりました!

2017年 約318億円(US$291M)
2018年 約973億円(US$889M)
※ 参照:Topica Founder Institute

件数は大きく伸びてはいないのですが、1件あたりの投資額が増加してきたこと、Grabなどのメガスタートアップによる投資(M&Aも)の影響が大きいです。

社会主義国ベトナムの医療制度 「強制皆保険制度」

医療制度についてのベトナムの特徴は、
強制皆保険制度「VSS:Vietnam Social Security」の存在です。

東南アジア各国でも保険制度は徐々に普及しておりますが、「強制皆保険制度」を持っているのはベトナムのみ。日本と異なるのは次のような点です。

医療機関登録制であり、原則として指定された医療機関のみ受診可能。
 (日本は「フリーアクセス」でどこでも受診できる。)
混合診療が一般的で、診療報酬体系が統一されていない。

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(参照:経済産業省「医療国際展開カントリーレポート・ベトナム編」

また、東南アジアで唯一、健診が義務化されていることも特徴的です。実態としては半数程度の検診率とのことですが、周辺国に比べると高い比率だと思います。健診まわりのビジネスも起きやすい環境ですね。

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(参照:経済産業省「医療国際展開カントリーレポート・ベトナム編」

全医療機関への電子カルテ導入を目指す医療 IT政策

ベトナム政府の保健省(Ministry of Health)は、医療機関のデジタル化を積極的に推進しています。

2019年3月1日に施行された保健省通達では、2030年末までに国内すべての医療機関での電子カルテ導入を完了させるという規定が出されました。段階的に進められる予定で、2024年までに「1等レベル以上の医療機関」、2030年までに「クリニック含む全国の医療機関」と定めらています。

実際にこのスケジュール通りにいくかは疑問でもありますが、この通達が医療機関のデジタル化を後押しており、現地医療機関の経営陣と話しているときにも電子カルテベンダーの話題が上がるようになりました。

また、2020年からは「電子医療保険カード」が発行され、カードに個人情報(性別・住所等)や診療履歴がすべて保存されるようになるそうです。

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(電子医療保険カード:引用元

また、保健省はベトナムにおける承認医薬品のデータベース「Drug Bank」を公開しました。WEB: https://www.drugbank.vn/

サイト上には、10,000種類以上 / 41,000製品の承認薬が公開されています。製薬企業、卸企業、薬局の全リストも公開され、各製品の概要が掲載されています。(参考記事

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ヘルステック・スタートアップ動向

ベトナムのスタートアップ・エコシステムがどんどん構築され、また医療のデジタル化の気運が高まってきている背景により、ヘルステック・スタートアップも徐々に増えてきています。

現時点では「オンライン医療」「病院検索・医療メディア」「病院向けソリューション(電子カルテ・予約システム等)」が多い印象です。研究開発系のソリューションはまだ非常に少ないです。

オンライン医療スタートアップは、以前の記事(下記)でもご紹介したような企業が存在しています。

・ViCare https://vicare.vn/
・eDoctor https://edoctor.io/
・VieVie http://vievie.vn/
・Jio Health https://jiohealth.com/
・wellcare.vn https://wellcare.vn/

↓↓ 元記事はこちら ↓↓

この中には、急成長を遂げながら日本やシンガポールのVCから資金調達している企業もあります。一方で、大手財閥やPE傘下に入るものもあり、例えば「ViCare」はベトナム最大手財閥「Vin Group」に買収され、グループ内の病院グループ「VINMEC」との連携などを進めています。

医療メディアに関しては、ベトナムで創業した「Hello Bacsi」は現在は「Hello Health Group」として東南アジア 8ヶ国でメディア運営をしています。先日の Health Tech Summit の「2019年の最もイノベーティブなスタートアップ」も受賞しました。(紹介記事

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医療のデジタル化、転換期に

ベトナムの医療IT関連企業、ヘルステックスタートアップ、投資家などと話していると、多くの人々が「医療のデジタル化の転換期はイマ!」と話しています。

ヘルステック企業の規模などはまだまだ小さいですが、これから政策面での後押しなどもあり、成長していくことが見込まれます。東南アジアの中でも要チェックな国ですね!


今日はここまで!
それではまた次回!!

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