破邪顕正@note

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最近の記事

『反原子論の歴史』の販売を開始しました

『反原子論の歴史』の販売を開始しました。 本書は、量子力学の背後にある自然の秩序を明らかにし、物理学における新しい自然像を追求するものです。具体的には、原子論を批判する思想を振り返りながら、物理的実在の意味を考える内容になっています。アリストテレスやカントなど哲学の古典から、プランクやアインシュタインなど近代物理学にいたるまで、様々な思想を網羅しています。 本書を通して、量子力学に対する新しい解釈を示し、合理的な自然像を打ち立てることができたと思います。 なお、本書は科

    • 改めて、ジョン・ロック『統治論』を読み解く

      ジョン・ロックの『統治論』は1689年に公刊された。本書は前後編に分かれており、『統治二論』と呼ばれることもある。前半部は王権神授説の批判に当てられ、後半で社会契約の理論が展開される。本稿では主に後篇を批判的に読解する。 今回参照したのは伊藤宏之訳『改訂版 全訳統治論』(八朔社、2020)である。 1我々日本国民は人権を持っていない。なぜならば、我々は社会契約に基づき人権を国家に委ねているからである。そして、国家に奪われた人権を自分のもとに取り戻すために、選挙への投票が必

      • 勝者は誰か

        真珠湾について書いていたら、終戦についても書きたくなった。このblogでは何度も触れた話題だが、改めて考える。 私は、太平洋戦争は軍事的に日本の勝利だったと主張する。その理由をこれから説明したい。 理由1:戦略爆撃1945年3月10日、300機のB29が東京に襲来し、江東地区を爆撃した。この攻撃によって26万戸の家屋が焼失し、死者数は8万名を超えた。この日を境にアメリカ軍の無差別爆撃は本格化し、以降は名古屋、大阪と日本各地の大都市が標的にされた。 アメリカは下町をねらっ

        • 太平洋戦争の起源(ジョン・ロック『統治論』読解)

          82年前の今日、日本軍は真珠湾基地を攻撃した。いい機会なので、太平洋戦争をその起源から振り返ってみたい。 自然状態最近私はロックやルソーなど社会契約説の古典を読んでいる。彼らの思想に共通する特徴として、自然状態を仮定することが挙げられる。 自然状態とは、人間が社会を形成する以前の段階である。ロックの場合は、神によって創造されたままの人間、ルソーの場合は、自然によって作られたままの人間を意味する。 ロックによれば、自然状態はいつでも戦争状態に発展しうる。ある人の財産が他の

        『反原子論の歴史』の販売を開始しました

          ルソー『人間不平等起源論』を読み解く

          今回は、ジャン=ジャック・ルソーの1755年の著作『人間不平等起源論』を読み解きます。 本稿では、ルソーのもう一つの主著『社会契約論』にも言及します。『社会契約論』は1762年に発表された本で、人民主権をうたい、フランス革命に影響を与えました。 参照したのは小林善彦、井上幸治訳『人間不平等起源論 社会契約論 ルソー』(中央公論新社、2005)です。 1『人間不平等起源論』は人間社会における不平等の起源について論じた書である。人間の「自然状態」に対する洞察から自然法の観念

          ルソー『人間不平等起源論』を読み解く

          マルティン・ハイデガー『存在と時間』を読み解く

          今日は、1927年に発表されたマルティン・ハイデガーの『存在と時間』を読み解きます。先日取り上げたマルクス・ガブリエルさんの『なぜ世界は存在しないのか』と比べると、非常に読みにくく、奇抜な術語が多い本です。できるだけわかりやすく説明したいと思います。 今回参照したのは原佑、渡辺二郎訳『世界の名著62ハイデガー』(中央公論社、1971)です。 1本書の問題意識は、カントによって定式化された「現象」と「物自体」の区別を乗り越え、「物自体」を再び哲学の土俵に引きずり込んで、存在

          マルティン・ハイデガー『存在と時間』を読み解く

          トマ・ピケティ『21世紀の資本』を読み解く

          トマ・ピケティさんの『21世紀の資本』を読んだ。 2014年に出版された本書は邦訳600ページに及ぶ大著だが、読み始めると意外と面白く、一気に読み通してしまった。ひとつひとつの概念を丁寧に説明して、議論を組み立ててゆくので、何も知らない状態から読み始めても、すんなり読めるように工夫してある。良い本である。 (国民資本/国民所得)=β の推移本書の主な内容は、国民所得に対する国民資本の割合が、この数世紀の間にどう変化したかを示すことである。 国民所得とは、GDPから減価償

          トマ・ピケティ『21世紀の資本』を読み解く

          マルクス・ガブリエル『なぜ世界は存在しないのか』を読み解く

          マルクス・ガブリエルさんの『なぜ世界は存在しないのか』を読み解きます。本書の続編『「私」は脳ではない』にも言及します。 1本書は2013年にドイツで発表され、ポストモダンを越える新時代の思想潮流として、一躍話題になったものである。そのねらいは、科学的合理主義やポストモダン思想に抗って、ヨーロッパの伝統的な価値観を擁護することにある。自由や人権などの普遍的価値が、唯物論者によって否定されようとしている。こうした反論に再反論し、ヨーロッパの人文学を守り抜くことが筆者の目的だ。

          マルクス・ガブリエル『なぜ世界は存在しないのか』を読み解く

          斎藤幸平『人新世の「資本論」』を読み解く

          斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』を読み解きます。 1本書の主題は、気候変動への対策を議論することである。国連のSDGsによって示されたように、気候変動は人類社会にとって大きな問題になっている。その問題の大きさを読者に再認識させ、かつ、既存の対策の不十分さを示すことが、第1章から第3章までの内容である。第4章以降は、マルクスの晩年の思想のなかに、気候変動を乗り越える知恵が隠されているとして、マルクスの読解が行われる。 第1章から第3章までは、資本主義と気候変動対策が両立

          斎藤幸平『人新世の「資本論」』を読み解く

          東浩紀『訂正可能性の哲学』を読み解く

          先日、X(旧twitter)をはじめました。この記事は、Xでのつぶやきをまとめたものです。 本稿は、表題の本を読み解き、リベラリズムを批判する内容になっています。今後しばらくは、気になる本の読解を行っていくつもりです。 第一部本書は二部に分かれている。第一部ではリベラリズムについて、第二部では民主主義について議論が行われる。 本書の問題意識は明確で、日本の政界におけるリベラル勢力の退潮を憂慮し、リベラルな政治運動に新しい方向性を示そうとするものである。そのために彼が目指

          東浩紀『訂正可能性の哲学』を読み解く

          『亜米利加物語』の販売を開始しました

          Amazonで『亜米利加物語』の販売を開始しました。 本サイトの掲載分に修正を加えた完全版です。いまは電子書籍のみの販売ですが、近日中にペーパーバックの販売を開始する予定です。是非お買い求めください。 なお、書籍の販売に伴い、本サイトにおける「亜米利加物語」の公開は一部を除いて中止させていただきます。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

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          『シン・ウルトラマン』と『シン・エヴァンゲリオン』感想

          『シン・エヴァンゲリオン』完結編をようやく見た。これは信仰を失った日本人の物語である。 もう一本、『シン・ウルトラマン』も見終わったので、そっちの話から始めたい。   円谷英二には信仰があった。私はウルトラマンのファンだが、円谷についてはよく知らない。なので、あくまでも印象論として読んでほしい。 ウルトラマンは信仰の物語である。そこにあるのは素朴な信仰であり、必ずウルトラマンが助けてくれる、ということを、みな当たり前のように信じている。なぜ円谷にそれが描けたかといえば

          『シン・ウルトラマン』と『シン・エヴァンゲリオン』感想

          Kindle Storeで電子書籍を出版しました

          AmazonのKindleストアで電子書籍を出版しました。現在、二冊販売中です。定額購読サービスのKindle Unlimitedでも読めるようです。 一冊目は意味ニューロンについて、二冊目は量子力学批判の内容となっています。どちらも著者のHPで公開した記事を再構成し、要点を簡潔にまとめたものになっています。入門書として最適だと思うので、上記の話題に興味がある方は是非ご購入ください。 一冊目の表紙はAIに自動生成させたものです。かっこいいものができたので、表紙にしてみまし

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          よければ見ていってください。

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          真珠湾事件直前のアメリカ軍の戦略について

          『続・亜米利加物語』がようやく完結した。読み返してみて、ちょっと書き漏らしたことがあったので、補足しておきたいと思う。 それは真珠湾事件の背景についてである。この事件は突発的に起きたものではなく、日米両政府・両軍の政治的・戦略的駆け引きの末に実現した一大スペクタクルであり、その詳細を明らかにすることには大きな意味があり、また興味がある。 日本側の戦略についてはすでに多くの考察が行われているが、アメリカ軍がいかなる戦略のもとにこの戦いに臨んだかということは、全く考察が行われ

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          防衛費増額は自衛隊を強くするか

          いま、日本政府は軍事費を増やそうとしている。復興予算を防衛予算に流用する、という話まで出ている。南シナ海における中国軍の活発な動きや、北朝鮮のミサイル実験に呼応するものだと思うが、こんなやり方で軍備を拡張しても、軍は強くならないだろう。 国会では敵基地攻撃能力が議論されている。これはミサイル攻撃のことを意味するらしいが、最も確実な敵基地攻撃能力が陸軍であることは論を待たない。したがって、自衛隊に必要な装備はミサイルでもイージス艦でもなく、強襲揚陸艇である。陸上自衛隊をどうや

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