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花畑と、君。

カーテンが揺れる。

生ぬるい風とシャンプーの香り。

目を閉じるとそこはまるで、一面に広がる花畑。


ちらり、隣の席に視線を移す。
靡く髪を小さな手で押さえ、黒板を見つめる君。


―――あぁ、そっか、目なんか閉じなくてもここは花畑だ。

五日前の席替えが、おそらく一年分程の幸運をくれた。
雑に千切られた紙切れは、ゴミ切れとならずに、財布の中で、大吉のおみくじと並んでいる。

前髪短くなった気がする。
少し日焼けしたかな、いや、でも白いな。
眠そうだな。

―――あ、欠伸した

そんな姿でさえ可愛く見えてしまう僕は、夏の暑さに当てられているのだろうか。なんて、馬鹿なことを考えていると、
こっちを向いている君と目が合っているらしい。

「眠くなっちゃった。」
少し恥ずかしそうに微笑む君。

心臓が早音を打つ。筋肉が固まったみたいに、動かない体。

―――目が合ってる。
見ていた事がばれてしまったかと焦り、体が熱くなってくる。


『眠いよな、』

やっとの事で絞りだした声は、震えてないだろうか。
顔が赤くなっていたらどうしよう、
もっと益しなこと言えただろう。
こんなにも、自分のヘタレさを哀れんだことは無いかもしれない。


「後、五分で終わるね。」

そう言って黒板に視線を戻す君に、
少し安堵した。

一向に止まる事を知らない鼓動に、熱中症になりそうだと思った。


訂正だ。
五日前じゃない。今日、今日こそが幸運の日である。


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