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【俳句エッセイ】はたらく・はいく|第2回「草餅」
俳句をやっているというと句会をしたり自然の中へ句帳を持って吟行に行ったりと、元気な老人の趣味というイメージがあるだろう。
でも実際には俳句には多くのメリットがあり、それは俳句を作ることや読み手になることだけではないと思う。私はソーシャルワーカーとして福祉現場や医療現場に行くことが多いのだけれど、俳句って心を豊かにするものだなあと感じる現場に出会うことがある。
例えばコロナウイルス蔓延の影響もあって施設の高齢者は外に出る機会が極めて少なくなっている。以前はよく話をした人達でも言葉が減って、表情が乏しくなったりする。本や雑誌の文字が細かくて読みにくいと感じ始める人達も多い。
俳句の良いところはたくさんある。17音しかないこともあり、たいてい大きな文字で書かれたり印刷されている。それに何と言っても季語があるので季節感を感じることができる。季語は日本人が共通に理解し合えるアイテムの一つ。
施設では5、6人が同じテーブルで日中過ごしていることも多い。だが共通の話題は限られて話が弾むことはなかなか厳しい。職員もつきっきりでいる時間も無い。そんな時の話題として季語が役立つことがある。
例えば春の和菓子の話をしていた時のこと。「鶯餅」「桜餅」「柏餅」「草餅」などいろいろあるが、面白いことに話が一番続いたのは「草餅」だった。「草餅」のもとになる蓬を摘んだ記憶から、幼い頃を過ごした地元の話など話題がどんどん広がる。家の草餅はやたら大きかったとか餡を入れる入れない、町内会の集まりで良く食べた等々。
こんな場面に出会ったりすると「俳句はいいですよ。」と伝えたくなってくる。
草餅の一句
庭先へ廻りて一つ草の餅
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