排気口WSオーディションが終わったの巻。

 暖かいのか、寒いのか、ポカポカするのか、そらぞらしいのか、よくよく分からんここ数日の天気のコロコロ具合の煽りを受けて体調が非常に悪かった。幸いにも発熱は終ぞ無かったのだが、偏頭痛、倦怠感、鼻水、くしゃみの地獄であった。WSオーディションの疲れがどっと噴き出てしまったのだろう。排気口新作公演の台本作業もそのペースをがくっと落としてしまった。トホホ・・・。

 全日程が終了した排気口WSオーディション。ご参加頂いた全ての皆様に感謝を。本当にありがとうございました。どれも素晴らしい作品で、何かを立ち上げようとする想像力に充ちた空間だったと思う。疲れたと思うけど。

 今回のWSオーディションで書き下ろした新作短篇『オール・ユー・ニード・イズ・ペントバルビタール』(超私訳『睡眠薬こそすべて』)は本来21ページもある作品だった。しかしながら通常の7時間ある排気口WSとは違い、シビアに3時間しかない今回のWSオーディションで21ページの作品を作るのは無謀なので14ページに削った。21ページの完全版はいつか排気口noteで公開しようと思う。

 『オール・ユー・ニード・イズ・ペントバルビタール』のタイトルの元ネタはビートルズ「オール・ニード・イズ・ラブ」の様で実は桜坂洋の傑作SF小説『オール・ユー・ニード・イズ・キル』なのである。ペントバルビタールとは現在は殆ど処方されない&過剰摂取時に致死性の高い短-中時間作用型のバルビツール酸系の鎮静催眠薬の事である。漫画家・華倫変が94年第14回ヤングサンデーYSまんが賞で入選した作品『ペントベルビタール酸』に因んで。

 毎度の事ながらWSに台本を書き下ろすと決めた事を後悔する。締切間近になり半狂乱になりながらパソコンに噛り付くように書き始める。これぞ正にトホホなり。WSに書き下ろす台本ではどの役にも良いシーンがあるようにと思って書く。排気口WSの性質上、チーム毎に話し合いでキャスティングを決めるので、引っ込み思案な参加者の方がもしも胸中に秘めた役を演じれなくても、平等に役それぞれに良いシーンor良い台詞(あくまでも私の感覚によるが)があれば演じていて少しばかりは楽しくもなるのかな?というささやかな想いである。そしてそれは全くもって書くのがメンドクサイ&大変&かったるい事この上ないだが。台本作業に関してはもはや愚痴しか出てこない身体に改造されている私である。大目にみてね。

 しかし、それでも毎回参加者の皆様が作り上げる素晴らしい作品の数々に打ちのめされる。その度に私は台本なんか全くもって立ち上がった作品には敵わないのだと強く想う。演劇という営為を信じる事が出来る。台本作業の辛さも忘れてしまう。

今回のWSオーディションの裏テーマは90年代後半に戻ろうである。華倫変や『フリクリ』という作品を台本作業の合間に読んでいたという理由であるが。台本は私の想う90年代後半の空気を閉じ込めた。まだ私がバブチビの頃の時代の倦怠感。レッサーハムスターの憂鬱。電気サーカス。カラオケ。オーバードーズ。それを参加者の皆様にも感じて貰えたら少々の悪趣味とは自覚しつつも嬉しい限りである。

 とある回でWSオーディション終了後に参加者の方が私に話かけてくれた。その方は今回のWSオーディション用台本のエピグラフは華倫変『高速回線は光うさぎの夢を見るか?』とThe pillows「Ride on shooting star」を指して私に「久しぶりに華倫変の名前を見て嬉しくなりました」と声をかけてくれた。華倫変をリアルタイムで読んでいたというその方は同じようにThe pillowsの音楽も聴いていた。その事を伝えてくれたのだ。私の方こそ飛び上がるほどに嬉しかった。ありがとう。貴方の為に書いた様なものだ。今回の台本は。と、言ったら言い過ぎか。

 私たちは「選ぶ側」にいる。それはつくづく幸福だ。こう言い切る事のふてぶてしさを忘れちゃいけない。何故なら私たちもまた「選ばれる側」でもあるのだから。しかしオーディションと名前が付けられたあの空間では私たちは「選ぶ側」にいる。私はそれを妙に卑下したりして、ありもしない「公平」を追い求める事をやめようと思う。

 私たちは違う愚かさを持った他者だ。それぞれに違う暴力性を持った他者だ。全然別の正義を持った他者だ。その他者が集まって演劇は作られる。

 秒速で終わるインスタントな怒りに身を任せない。執念深くその刺々しさと対峙していく。本当に傷付いた時に自分の身体に宿る言葉は何にもしてくれない。しかし他者の言葉によって掬い取られる想いがある。私たちはヘンテコだ。どうせ神様に「うまく生きられる生き物」としてカウントされていない。それを笑って誤魔化して進化してきたのだ。

 オーディションは落ちる。大体のオーディションは落ちる。もし排気口WSオーディションに落ちて言葉にならないグぬぬ!!な気持ちが芽生えたら、迷うことなく私を恨んで欲しい。君の為に出来ることをWS終わりから探してる。そんな嘘を平気で吐けるのが私だ。君だってそうだろ?

 という訳で、皆さん体調気を付けてね。オーディションの合否はメールするよん。夏っぽいね。半袖だね。まだクーラー付けるには早いけど、暑かったら付けちゃおう。きっともうすぐ目の覚めるような初夏だ。いや、その前に梅雨か・・・。だるいわあ梅雨。

 この曲聴いて元気だしてね。良い曲だから。今日はもうお酒呑んでね。無理しないでね。

 

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