秋は毎朝死ぬ気で起き上がるんだの巻。

 寒暖差の激しい毎日が続いている。曇天と晴間のシェイクに躁鬱も連動して、全国のボンクラキッズ達と同様に過度なアルコール摂取による酩酊状態。各々が高アルコール酎ハイの缶が転がる冷たい床に、自分だけのウルトラヘブンを反転召喚させながら「ねえ、明日は今日よりどのくらいマシ?」肝臓も腎臓も悲鳴を上げてから本番。ノンケとレズを繋ぐ乾杯はキンミヤ。ネオンサインからネオンサインへ。無菌から無菌へ。自分の部屋は何よりも宇宙で孤独だ。陰謀論に汚される山Pが居た頃のNEWS。闇の権力?支配層?そんな事よりも「明日っからまた日、月、過剰なデモ行進」コロナワクチン。モデルナ?ファイザー?ジジイとババアは高得点。「もうどうしようもない模様 やること一杯で気持ちは完敗」レッドピル、ブルーピル。キーメイカー。「We spare shull feh a shuweh 医療隊マッカラ号」

 先日、友人と会った。かれこれ数十年来の付き合いになる友人だ。出会った頃から頭がよく色んな事を教えてくれた。ドゥルーズ、デリダ、ヴィトゲンシュタイン、ゴダール、彼がいなかったらきっともっとチンプンカンプンだった。今でも私はチンプンカンプンなんだけど、彼はそれらを理解していて、時々、見てる世界が違うんだなって思う。でも別に寂しくはない。そんなとこで寂しさを感じないから友人でいられるのだ。

 穏やかで誰かに怒ったところを見た事がない。誰かの悪口を言ったりすることも1回も聞いたことがない。そんな彼の唯一の懸念はライフワークの睡眠薬遊びである。睡眠薬遊びと飲酒をセットにするもんだからとんでもない意識変容状態になる。私は何度も睡眠薬遊びと飲酒は別々にするべきだと進言しているのだけど、彼は優しい笑顔を浮かべながら煙草を吸って首を横に振る。まあいいか。睡眠薬遊びもオーバードーズも彼なりの不定形な魂ってやつへのアゲインストなのだから。時間を忘れて自由にやろう。オーライ。

 そんな彼から昔に貸して貰ったのは卯月妙子『人間仮免中』統合失調症を患う作者の波乱万丈の日々を描いた近況自伝エッセイと銘打たれた漫画である。

 ラフな絵柄で描かれる可笑しくもシビアな日常。統合失調症の症状と向き合ったり向き合えなかったり、そこには確かに営みがある。何度胸を打たれ、何度愉快な言葉に笑っただろう。

 そんな卯月妙子の今月に発売予定の新刊のタイトルは『鬱くしき人々のうた 実録・閉鎖病棟』同名の曲がマキシマム・ザ・ホルモンにもある。『鬱くしき人々のうた』

 B-DASHが発明した「適当アドリブめちゃくちゃ語」を最高に進化させた独特の日本語の歌詞が特徴的なマキシマム・ザ・ホルモンの楽曲の中でも数少ないメッセージとも呼べる直接的な歌詞が登場する『鬱くしき人々のうた』その歌詞とはこのようなものである。

 「世界中の誰もが病んでるわけではねえけど 誰かは今日もうずくまってるそして内緒で「明日がラスト」と這いつくばって抜け出そうと生きてる いつだって癒しなんぞなくてもリングにあがりゴング鳴るの待ってろ 鬱くしき人々よ 「0.5生懸命」にて勝て!」

 魂とか心とか脳みそとかバグってる。不具合だらけの心身を引き摺りながら歩く旅の途中。ギブする奴に失敗する奴、幸せそうに歩く奴、もういなくなってしまった奴。とにかく魂とか心とか脳みそとかホントにいい加減にしてくれよ。「そこのバグだらけの魂、オメーに3つの選択肢を与えよう」 ギルティ込みの生とかメルカリに売って呑みの足しにしよう。

 「病んでる」って言葉をインスタのストーリーで消費していく手つきを自分たちの青春にしちゃって。そんなヤンチャはナイトプールでこっそりウィード吸ってるVIP席の半グレたちの煙によく似た色をしてる。消えないように。消えないように。刹那由来の破廉恥を毎晩養ってる。水あげて、あげすぎて、シロップにニコチンのだし汁混ぜて。

 天気に左右上下。酒飲んでしまって涙目。でもサークルゲーム。ここは新しい場所?違うよ周回した元の場所だよ。

 全ての季節を封じ込めたガレージに入ったんだ。折れたサーフボード。埃被ったスケートボード。夢を夢だと思わなかった頃に書き記した約束事。誰かが置いていったポラロイド。フェイクの燃えカス。

 夢をみた。ドエロな夢をみた。起きて、何も書けなかった台本の空白を眺めた。そのまま眺めていれば空白のディスプレイに文字が浮かび上がるって信じてる奴の目をしている。夢をみた。ドエロな夢だ。音楽が流れていた。それは昔通っていた小学校の校歌だった。台本?どんな風に書いてたんだっけ?「忘れたのかい?君はまた高校生を拉致して地下室に閉じ込めなくてはいけないんだよ」

 全ての季節を封じ込めた地下室に入ったんだ。みんな死んでいて、残ったものは何もなかった。本当に何もなかったんだ。

 そっと目を閉じる。それから洗濯のり使ってスライムを作る。お手製のスライム。色も付ける。匂いもつける。大量に作って遊ぶんだ。そんな未来を想像しちゃうんだ。それって完全に終わってるだろ。納税だってしてない。なのに税金の行方ばっか気になって夜も眠れない。手の届くところに本を置いとく。それは分厚いハードカバーだから、私が夜中に上手や下手なんて指示を出して、空想の場当たりをやりはじめたら、頭をそれで思いっきり殴ってくれ。それからこう言ってくれないか?「しのぎを削ったあの攻防戦 今なお続くここは最前線」そうしたら思い出すから。グレイトフル・デイズ。

 公開処刑。曼荼羅。曼荼羅。でもそれは過去。この痛みはなんて美しいのだろう。そう思える晴れ間がこの先、何度もあって、そんなことに、一瞬だとしても、思えることが本当に素晴らしいことなんだよ。哀しみが沈むのはすべての空。繰り返す。ロマンチックな途中の場面。映画も本も演劇も音楽も途中で止めてしまっていいんだよ。投げ出してもいいんだよ。君のポケットには何が入ってる?私のポケットにはいろんな色の飴。

 皆さん。お元気で。

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