もっと頑張って台本を書いていこうの巻。

 タイトルにあるように「もっと頑張って台本を書いていこう」の排気口は全ての作品において作・演出をしている私ですが、台本作業は難航に次ぐ難航。殆ど何も書けず。粗筋もままならぬ。夜に諦めて飲酒を繰り返す。小さい生き物ぐらいなら死んでしまうような愚かさを発揮している。

 演出で参加している「名前のない役者たち」という演劇祭の稽古も始まり、時間もなくなり、それでも台本のペースは掴めず。これはヤバい。折り紙でスピノサウルスを作ってる場合じゃない。クラッシュフェチ動画を見ている場合じゃない。今から老後の心配をしている場合じゃない。チャーハンのグリーンピースを除けてる場合じゃない。グルテン気にしてる場合じゃない。今は、もっと頑張って台本を書く場合だ。

 排気口新作公演は夏に予定されています。ポカリをがぶ飲みしながら台本を書いて、ポカリをがぶ飲みしながら稽古して、ポカリをがぶ飲みしながら本番を迎えて、青さで吸い込まれそうな空の真ん中に「大塚製薬」の文字を影送りする予定なのですが、現在すべてが上手く進んでない。偏に私の台本兄弟遅筆&難筆のせいなのです。

 最近はもう小学生としか遊んでない。小学生たちに大将と呼ばせて一緒にブタメン食べたり、金を賭けてベーゴマしたり、自分のベーゴマだけ鉛で重くして小学生からお金を巻き上げている。そのお金でピーポ君の同人誌を作って高円寺の駅前で売っている。

 台本作業が難航を極めし午後。顔でも洗おうと洗面所に映る自分のゲッソリとこけた頬を見て、何も食べてないことに気付く。エナジードリンクと煙草は虚構の満腹を生み出す。脳からの信号をセルフジャマーした末路はこうして「腹減ってんだかよう分からん」&「マジで力が出ねえ」という身体だけを残す。このまま食わないのは危険なので、久しぶりに近所の中華屋まで食いに行く。その道中、ART-SCHOOLの大傑作『LOVE/HATE』を聴きながら胡乱な私の眼球運動が捉えた美しさ。路地裏で小さな子供たちが抱き合ってキスをしていた。性教育だのエロだのポルノだの何も知らない。ただその風景だけが齎す美しさ。そんな事が起こりえる世界の実感が私の身体を痙攣させた。

 その夜、私は夢をみた。夢で私は台本を書き上げていた。嬉しかった。70ページぐらいあった。ちゃんと「了」の文字がタイピングされていた。タイトルも登場人物もしっかりと書いてあった。紛れもなく完成した台本だった。嬉しかった。頑張ったんだ。パソコンの光が眩しくみえた。お祝いにお酒を呑もうと思った。グラスにお酒を注いで呑もうとした時に目が覚めた。

 私はベッドの上にいた。半開きのパソコンが真っ白なワードを写している。現実はまだ何も台本が完成されてなかった。夢だった。夢だったんだ。気が付くと小さく涙が零れていた。思わず手を強く握って涙を堪えようとした。でも、ダメだった。涙はどんどん零れていった。我慢できなかった。哀しかった。悔しかった。夢だって事が。台本を完成した夢をみた自分が許せなかった。脳を取り替えたいと思った。ライオンとかチーターとか、なんかカッコいい動物の脳と取り替えたいと思った。脳を取り替えてくれるお医者さんを探した。でもいなかった。聖路加国際病院ならいると思ったけどいなかった。しょうがないので自分で頭蓋をノコギリで切って、頭蓋をパカパカにして、素手で脳を取り上げて、とりあえずクレンザーで洗った。洗ってるうちになんか珍味の食べ物みたいに見えてきた。さっとゴマ油で炒めて、食べてみた。美味しかった。とても美味しかった。美味しかったって事が哀しかった。

 まともな事も、正しい事も、良い事も、言いたくないし、書きたくないし、思ったりもしたくない。くだらない事と、間違えと、悪い事だけを、言いたい、書きたい、思いたい。そんな欲望だけを信じたい。

 言葉は色んなものを取りこぼす。ベンション臭い言葉でしか言い表せられないものがある。ボットン便所から汲み取る言葉、ばあちゃんの痰ツボをぶちまけて探す言葉、誰かを傷付ける言葉、そーいった全ての言葉に、それじゃないと言い表せないものがある。

 1度でも間違えたらソッコーその手を放して石を投げようって笑顔で相談し合ってるみんなには分からないよね。1人の人間が何を信じてたのか、とかさ。何に喜びを感じてたのかとかさ。「ちょっとノレないな。みんなのその感じ。修学旅行で一番嫌な班の決め方みたいで」

 もしも… 本当にもしも… 今もこの瞬間も君が代わりに台本を書いてくれている、なんて考えてる私をどうか叱ってくれないか。

 台本頑張ります。皆さんもお元気で。無理に元気にならなくても大丈夫です。

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