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俳句「節分」

亡き父を真似て柊挿しにけり

 節分と聞いて何を思うだろうか。昨今、多くの人が思うのは、恵方巻きと呼ばれる巻き寿司かも知れない。しかし、私が子どもの頃、生まれ育った和歌山県の山間の町には、節分に恵方巻きを食べる習慣はなかった。枯れた虎杖(いたどり)を燃やして鰯を焼き、食べた後の頭を柊の枝と一緒に戸口に挿す。そして、歳の数だけ炒り豆を食べて、最後に豆撒きをするというのが、私の郷里の習慣だった。

 焼いた鰯の頭を枝に刺すとずり落ちてくることがある。それで私の父は、輪切りにした大根を鰯の頭の下に挿してずり落ちないようにしていた。今日も父の流儀のとおり、鰯の頭の下に大根を挿した。もっとも、挿したのは鰯と言うより目刺しと呼んだほうがよいような小さな頭だったが・・・。

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