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俳句「寝言だったのか……」

起きてゐるやうな寝言や目借時

 不思議だ。だんだんと発声が不明瞭になってきて、ことばが聴き取りにくいことも多いのに、一人でまぼろしに向かって話しかけている時や、寝言を言っている時のことばは明瞭で聞き取りやすい。まるで夢の世界のほうが現実で、現実の世界のほうが夢の世界であるかのように……。

 でも、そういう時の母は楽しそうで、聞いているこちらまで口元が緩んでくる。夢だろうが現だろうが、笑顔でいられるなら、幸いである。

 寝息も立てず熟睡している時には、もしや……と思って確かめてみたりするけれど、何にせよ喋っている時は、紛れもなく生きている。生きていれば、日日是好日だ。

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