北大路翼 見えない傷/廃人(春陽堂書店)

北大路翼 著「見えない傷」「半自伝的エッセイ 廃人」の試し読みアカウント。「見えない傷…

北大路翼 見えない傷/廃人(春陽堂書店)

北大路翼 著「見えない傷」「半自伝的エッセイ 廃人」の試し読みアカウント。「見えない傷」予約受付中▶︎urx.blue/obVD

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けふの一句/6月20日

6/8刊行、北大路翼 著「見えない傷」の掲載俳句の解説を5/20~6/20まで毎日一句公開中。本日最終日。 エアコンの設置工事のすかしつ屁 エアコンが嫌ひ。地球の温暖化はすべて室外機のせゐだと思うてゐる。昔の人は風鈴の音にも涼を見出だすことができた。人間らしさとはあるもので工夫して暮らすことだ。機械に頼り切つた末路は、ロボットに人が殺されるだらう。 見えない傷(春陽堂書店) 著者:北大路 翼 二〇一七年以降の作品から厳選収録。新宿の片隅から世の中を憂う第三句集。これまで

    • けふの一句/6月19日

      6/8刊行、北大路翼 著「見えない傷」の掲載俳句の解説を5/20~6/20まで毎日一句公開中。 捕まらぬ程度に賭けて甲子園 人はなぜ野球に熱狂するのだらう。贔屓チームの勝敗に一喜一憂し、時には敵チームのファンと喧嘩になつたりする。野球はそれぞれの人生を代行してゐるのだ。金を賭けるのも人生を賭けるのも一緒だ。19日にやうやくプロ野球が開幕する。 見えない傷(春陽堂書店) 著者:北大路 翼 二〇一七年以降の作品から厳選収録。新宿の片隅から世の中を憂う第三句集。これまでの“ア

      • けふの一句/6月18日

        6/8刊行、北大路翼 著「見えない傷」の掲載俳句の解説を5/20~6/20まで毎日一句公開中。 雪下ろし名人全治三ヶ月 弘法も筆の誤まりなんて諺があるが、この句の場合は油断よりも高齢の哀しさ。過疎の村では雪下ろしの人手も足りなくなつてゐる。名人と呼ばれた○○さんももう九十歳だ。「よし任せておけ」と勇んで屋根に上らうとしたものの、梯子の途中で落下、めでたく全治三ヶ月だ。屋根から落ちたら即死だつただらう。 見えない傷(春陽堂書店) 著者:北大路 翼 二〇一七年以降の作品から

        • けふの一句/6月17日

          6/8刊行、北大路翼 著「見えない傷」の掲載俳句の解説を5/20~6/20まで毎日一句公開中。 ハロウィンにまつたく協力しない店 クリスマスやハロウィンなど、日本の実生活に基づかない作られたイベントが大嫌ひ・・・だつたが、近年は若者に歩み寄りをみせ積極的に参加するやうにしてゐる。とりあへず一度は体験してから文句を言はうと思うたが、やつて見たら好きになつてしまつた。僕はもうダメだが、掲句のやうな頑固な店には頑張つて欲しい。 見えない傷(春陽堂書店) 著者:北大路 翼 二〇

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        • けふの一句
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          5本

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          けふの一句/6月16日

          6/8刊行、北大路翼 著「見えない傷」の掲載俳句の解説を5/20~6/20まで毎日一句公開中。 隕石は宇宙のウンコ捕虫網 色紙に書けるウンコの句が欲しくて、むりやり作つた一句。捕虫網で童心を出してみたが、成功してゐるだらうか。あざといか。今度はうんこを兼題にして、句会をやつてみよう。ちなみに「糞」はクソと読むべき。「ふん」と読む奴は冷たいし、「まり」と読む奴はセックスが淡白さうだ。 見えない傷(春陽堂書店) 著者:北大路 翼 二〇一七年以降の作品から厳選収録。新宿の片隅

          けふの一句/6月15日

          6/8刊行、北大路翼 著「見えない傷」の掲載俳句の解説を5/20~6/20まで毎日一句公開中。 浅春の紐ごと落とすティーパック 僕はほとんど珈琲を飲まない。頻尿に拍車がかかるのと、寝つきが悪くなるからだ。どうやらアルコールにくらべ、カフェインは相性が悪いらしい。でも紅茶は好きで、仕事中はずつと紅茶を飲んでゐる。こちらもカフェインが入つてゐるはずだが、眠れなくなるやうなことはない。ティーパックは捨てるのが面倒で入れつぱなしにすることがあるが、たいていは掲句のやうになる。

          けふの一句/6月14日

          6/8刊行、北大路翼 著「見えない傷」の掲載俳句の解説を5/20より公開中。 噴水に煽られてゐる射幸心 コロナ騒動のせゐですつかりカジノの話題も聞かなくなつた。まあオリンピックもカジノも余所で勝手にやればいいと思ふ。ギャンブル依存症の僕がカジノに興味がないといふのは不思議に思はれるかも知れないが、カジノといふのは社交場で、鉄火場の感じがないのが最大の理由。うす暗い部屋でサイコロを転がす以上のゲームはない。 見えない傷(春陽堂書店) 著者:北大路 翼 二〇一七年以降の作品

          けふの一句/6月13日

          6/8刊行、北大路翼 著「見えない傷」の掲載俳句の解説を5/20より公開中。 濡れてゐるホームの端や手毬花 通り雨のあと北鎌倉駅で下車した。紫陽花が徐々に枯れ始めたころだつたと思ふ。ホームにはちよつとした屋根が設けられてゐるが、ホームの長さと屋根の長さは必ずしも一致しない。とくに改札から離れたほうの端つこはベンチもなく風雨にさらされてゐることが多い。昔はここに灰皿があつたりした。昔といつても、わづか四、五年前の話だ。 見えない傷(春陽堂書店) 著者:北大路 翼 二〇一七

          けふの一句/6月12日

          6/8刊行、北大路翼 著「見えない傷」の掲載俳句の解説を5/20より公開中。 風鈴は口開けた鮫貧と鬱 クーラーが嫌ひなので、風鈴は涼を取る大事なグッズである。みんながクーラーをやめれば温暖化は納まると思ふがいかがだらうか。この句は真下から見上げたときの風鈴の不思議な形を詠んだもの。不貞寝をしてゐると、風鈴すらも攻撃的に見えて来る。 見えない傷(春陽堂書店) 著者:北大路 翼 二〇一七年以降の作品から厳選収録。新宿の片隅から世の中を憂う第三句集。これまでの“アウトロー”と

          けふの一句/6月11日

          6/8刊行、北大路翼 著「見えない傷」の掲載俳句の解説を5/20より公開中。 ナイターの敵ばかり打つホームラン 生まれる前からアンチ巨人なので、応援する球団はそれ以外の球団に決まつてゐる。権力への抵抗が文学であるなら、巨人ファンの俳人を僕は信用しない。それにしても最近のドラゴンズのさへないことよ。特に神宮ではやられ放題で、野球の試合を観に行くといふより、相手のバッティグ練習を見てゐるやうな気分になる。開幕するとイライラするが、この時期に球音が聞こえないのも寂しいものだ。

          けふの一句/6月10日

          6/8刊行、北大路翼 著「見えない傷」の掲載俳句の解説を5/20より公開中。 スリッパを揃へて書庫の寒さかな 旅館でもなんでも、誰が使つたかわからないビニールのスリッパは気持が悪い。大浴場などで、親父の体温の残るスリッパを履いてしまつたときなどは最悪だ。このスリッパは自分の家のスリッパなのだが、どことなく他人が履いたことがあるやうな気がしてゐるのかも知れない。スリッパに読みがつられたが、本当はきちんと整理した書庫の寒さがテーマ。 見えない傷(春陽堂書店) 著者:北大路

          けふの一句/6月9日

          6/8刊行、北大路翼 著「見えない傷」の掲載俳句の解説を5/20より公開中。 初夢の頰に残りし蹄跡 「馬に蹴られて死んぢまへ」つてことです。競馬に負けると本当に死にたくなる。公営ギャンブルは大晦日だらうと正月だらうと関係なく開催されてゐる。たまには休んでくれればいいのになあとつくづく。初夢にまで見てしまふ僕の言へたことではないですが。 見えない傷(春陽堂書店) 著者:北大路 翼 二〇一七年以降の作品から厳選収録。新宿の片隅から世の中を憂う第三句集。これまでの“アウトロー

          けふの一句/6月8日

          死にたいが口ぐせ金魚に餌落とし 犬猫の飼ひ主よりも水槽の所有者の方が心の闇は深い。触れ合ふことがないからだ。そんな金魚との唯一の触れ合ひが餌やり。もちろんこれも口元まで運んでやるわけでもなく、ぱらぱらと水槽の上から撒くだけだ。それだけの関係であるが、飼ひ主が死ねば、金魚も死ぬ。ぎりぎりの生真面目さが彼女を世の中と繋いでゐる。 ☆おまけ☆ 磔の髯の裸も暑からむ 磔の髯の裸とはもちろんあの人のこと。ただの宗教批判の句だが、いつの間にか「髯の裸」が「髯裸」になつてゐた。髯を髭

          けふの一句/6月7日

          6/8刊行、北大路翼 著「見えない傷」の掲載俳句の解説を5/20より公開中。 昔から網戸についてゐた死骸 昆虫の脚はけばだつてゐることが多い。樹にしがみつくので必然だらう。ところがその丁寧な形状はときに悲劇を起こす。網戸などの目の細かいところでは食ひ込み過ぎて身動きがとれなくなるのだ。死体が風化して、脚だけになつていく様子はなんともいへないものがある。都会の網戸には虫がこない。 |予約受付中! 6月8日発売 見えない傷(春陽堂書店) 著者:北大路 翼 二〇一七年以降の

          けふの一句/6月6日

          6/8刊行、北大路翼 著「見えない傷」の掲載俳句の解説を5/20より公開中。 手袋にやさしい闇が五つある 僕は「やさしい」といふ言葉が好きだ。親切とか、愛があるといつた意味ではなく、虐げられたものが静かにやり過ごしてゐる様子が「やさしい」だ。「赦し」の極地がやさしさだと思ふ。この句も闇に対してさういつた共感を詠んでゐる。指が穴(闇)に赦されるから手袋は安心し、暖かいのである。 |予約受付中! 6月8日発売 見えない傷(春陽堂書店) 著者:北大路 翼 二〇一七年以降の作

          けふの一句/6月5日

          6/8刊行、北大路翼 著「見えない傷」の掲載俳句の解説を5/20より公開中。 手首までポストに入れて梅雨晴間 ポストとはつくづく一方通行な存在だと思ふ。自分の人生を賭けたやうな大事な書類も、そこに入れてしまへば後はどうすることもできない。ポストの中にはいつたいどれだけの夢や欲望が詰め込まれてゐるのだらうか。一度車で突つ込んだことがあるが、車は大破し、ポストは傾きもしなかつた。 |予約受付中! 6月8日発売 見えない傷(春陽堂書店) 著者:北大路 翼 二〇一七年以降の作