オカモト

東京の大学生です。レポートや論文の体裁は重いので気軽に読書感想文を書き綴る場所としてnoteを使っています。来年石川に帰ります。

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  • イタリア文学

    読書感想文のうち、イタリア文学についての記事のまとめです。20世紀前半の作品が多めです。

  • おさんぽ日記

    散歩の記録+つぶやきです。写真はFUJIFILMのXS10で撮影しています。

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⑤パヴェーゼ『美しい夏』

春の暖かさを感じてきた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。 また今年も夏がやってきますね。暑い夏が。 今回読んだ本のタイトルは『美しい夏』。夏祭りのひと時など刹那的で美しい夏の思い出もしくはイメージというものは大方の人が持っていると思います。 筆者のパヴェーゼはこの作品を1940年に発表し、1950年にストレーガ賞という文学賞を受賞し、同年1950年に自殺しています。彼の描いた夏の美しさとは何なのか、期待と同時に私に読み解けるかという不安が残ります。 本書はいわゆる三人

    • ⑧ババウ

      「ババウ」 「いい子にしてないと、オバケが来るぞ」 駄々を捏ねるガキンチョに放つ言葉は文化が異なっても共通のようです。 イタリアでこのオバケに当たる言葉がババウ(babau)となります。 今回はそんないるのかいないのかわからない存在をテーマにしたブッツァーティ作『ババウ』(「ババウ」ほか25作の短編集)について書いていきます。 表紙の絵はブッツァーティ本人が描いたもので、空飛ぶクジラのような生き物としてババウが描写されていますね。 作中ではババウは現れる街や夢によっ

      • ブッツァーティ:空飛ぶ円盤とポストモダン

        夏休みも終わり、卒論の第二回中間報告とかいうゴルゴダの丘からも生還しました。 今回はブッツァーティの短編の一つ「円盤が舞い降りた(Il disco si posò)」の紹介から初めて、話の脱線を繰り返しつつポストモダンなどについて勉強中ながらも書き連ねていきたいと考えています。いつにも増して一貫性のない文章ですがご了承くださいませ。 円盤が舞い降りた この短編は日本語訳は岩波文庫『七人の使者・神を見た犬』、イタリア語なら『Sessanta racconti 』に収録されて

        • 『神曲』より、パオロとフランチェスカ、オデュッセウス

          ダンテの『神曲』といえばヨーロッパ中世における金字塔であり、現代イタリア語の母と言っても過言ではない、歴史・文学・言語・宗教などあらゆる領域において重要な作品です。 『神曲』は主人公ダンテが地獄・煉獄・天国を遍歴して様々な亡者や聖人などに出会う100歌構成の物語です。今回はそのなかでも特に人気の高い地獄篇の中から、地獄の住民を二組ピックアップして紹介したいと思います。 それぞれ元ネタのあるパロディではありますが、「悲しき恋」と「英雄」の代名詞となるような素晴らしいエピソードに

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        ⑤パヴェーゼ『美しい夏』

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          ⑦ブッツァーティ「La canzone di guerra(戦争の歌)」

          こんにちは。卒論書き書き大学生です(まだまだ本文は書き始めていない)。 最近は「Buzzati」という単語を自分の名前より見聞きしてるくらい彼について読んでいるのですが、新たに読んだテキストの中で特に私の気に入った短編「La canzone di guerra」についてあらすじと感想を書き書きします。 日本語版について 本作は短編集『I sette messaggeri(七人の使者)』もしくは『Sessanta Racconti(短編70作)』に収録されています。今回は

          ⑦ブッツァーティ「La canzone di guerra(戦争の歌)」

          『島国-SHIMAGUNI-』

          卒論用の資料を閲覧しに靖国神社近くのイタリア文化会館図書室に行ったところ、新刊の棚?にこんな本が置いてあったのでついでに借りてきました。 ちょうどその数日前にXにて挿絵を担当された浦上さんのポストを見かけていたので思わぬ邂逅に驚きました。 日本のいくつかの「島」を取り上げ、それぞれについてすこしずつ語るような構成になっており、これを読むイタリア人からすればさながら日本列島の外側をぐるっと一周船旅するような読み心地なのでしょうか。 この書籍全体の膨大な量のイタリア語を読み

          『島国-SHIMAGUNI-』

          イタリア映画祭2024感想『C’è ancora domani 』

          ゴールデンウィークの最終日にイタリア映画祭に行って参りました。 この前読んで感想を書いた『美しい夏』が映画化されていたので本当はそれを見に行きたかったのですが、上映時間に予定が合わず『C’è ancora domani (まだ明日がある)』という作品を見に行きました。なにやら本国イタリアでは2023年の興行収入トップだったとか。 途中までは物語の本筋に触れずに感想を書いていきますが、ネタバレ有りの見出し以降については未視聴の方は自己責任でお願いします🤲。 とても良い作品だっ

          イタリア映画祭2024感想『C’è ancora domani 』

          ⑥ブッツァーティ『古森のひみつ』

          前回の記事からだいぶ間が空いてしまいました。寝かせているうちに前回のパヴェーゼの感想文のスキを二桁いただけて嬉しい限りです。 この二月ほど就活と卒論テーマ決めに全力を注いでいました。その話も気が向けば綴りますが、今回はいつも通りの読書感想文です。 古森とは 古森とは…古い森。そのまんま。 イタリア語ではbosco vecchioと書かれているのですが、イタリア語で「森」と訳される言葉は私の知る範囲でboscoの他にselvaとforestaという言葉もあります。 私のno

          ⑥ブッツァーティ『古森のひみつ』

          八王子さんぽ

          雪解け残る春の日、予定も特になく、かといってそれほどお金の余裕もない。そういうときは初めての土地を歩くのが吉。 上京して3年経って初めて八王子に行ってみました。当方それなりのカメラを所持しているので文章よりも写真メインです。 財布の口は締めていくつもりなので繁華街やビル群にはあまり用はありません。ずんずん北へ歩きます。 15分くらいあるいてやっと日向を歩けそうになってきました。15時半くらいだったので影がそこそこ長いですね。ビル街のエリアが意外と広くて驚きました。 道中

          八王子さんぽ

          ふるさと金沢

          就活解禁のせいで暫くnoteを書く余裕がありませんでした(泣)。 この期間に以下の二冊読みましたがそれについては今度書くとします(宣言)。 ・パヴェーゼ『美しい夏』 ・ブッツァーティ『古森のひみつ』 1週間の帰省3月の最初の一週間くらいで金沢に帰りました。 東京と比べると天気も悪いし駅から離れるとすぐ都会っぽさはなくなるような街ですが、ふるさとだなーという心地よさを感じます。 小学校からの旧友や高校でずっとクラスが一緒だった友人、地元の大学にいった奴や高卒で働いている奴、

          ふるさと金沢

          ④イタロ・カルヴィーノ『くもの巣の小道』

          カルヴィーノ!カルヴィーノ! おそらく日本で一番人気のある現代イタリア作家だと思います。去年の2023年はカルヴィーノの生誕100周年で一部界隈ではにぎわっていたようですね。 わたしは短編はいくつか原文で読んだことがあり、難しい単語や表現は使わないけど描写がとことん上手いという「魔術師」の名に恥じない作家だなと感じました。 イタリア語文法一周したらとりあえず読んどけ感ありますね。 今回はそんなカルヴィーノの処女作であり長編の『くもの巣の小道』を読みました(日本語訳で)。 ネ

          ④イタロ・カルヴィーノ『くもの巣の小道』

          ③ブッツァーティ『タタール人の砂漠』

          大学も春休みに入り可処分時間は圧倒的に増えたのですが、個人的に読書は隙間時間にするのが好きですね~。一日空いてるから一日読書しようとはならない不思議。寝る前や電車の中でちびちび読んでいきます。 期末が終わって早速5冊ほど古本屋で本を買ってきました。そのなかの一冊目がこの『タタール人の砂漠』です。 いつかきっと…おおまかなあらすじとしては主人公ジョヴァンニ・ドローゴが将校としてタタール人との国境を見張るバスティアーニ砦という拠点に配属され、砂漠の向こうの見えざる敵を待ち続け

          ③ブッツァーティ『タタール人の砂漠』

          寄り道:福永武彦『草の花』

          私は普段イタリア文学を集中的に読んでいますが、ふと日本の文学を読むと日本語という言葉の美しさとそれを母語として読める嬉しさを思い知ります。 そういうわけで古本屋でたまたま目についた『草の花』を読みました。 夢の中の夢の中の…この『草の花』の構成は語り手が汐見という青年の書き残したメモを読むという形で物語が展開され、メモには汐見のかつての二つの恋の様子が綴られている。 つまり「語り手の世界→汐見のメモ→汐見の過去の恋」という多重構造となっているのだ。一回目の恋の話を読み終える

          寄り道:福永武彦『草の花』

          ②プリーモ・レーヴィ『これが人間か』を読んで

          化学者であり文学者でもあるケンタウロスことプリーモ・レーヴィ。 彼はユダヤ人としてアウシュヴィッツに送られ、生還してすぐの1947年に当時の出来事を『これが人間か』という本に綴りました。 アウシュヴィッツの証言としての『これが人間か』アウシュヴィッツから生還して当時のことを書いた作品はいくつかあるものの、1947年という早さで書いたのはレーヴィだけしかいない(はずです)。 レーヴィが続編としてアウシュヴィッツを出てからイタリアに帰るまでを描いた1967年の『休戦』や自殺の

          ②プリーモ・レーヴィ『これが人間か』を読んで

          ①ディーノ・ブッツァーティ『動物奇譚集』を読んで

          初めてnote書きます。岡本です。 2024年現在大学の学部生でイタリア文学を専攻しています。 レポートや論文のような硬い表現も都度の脚注もなしに自由に読書感想文を書きたかったのでここに残していきます。 一読した感想:星新一かな?『動物奇譚集』はブッツァーティが新聞に掲載した短編から動物が登場するものを集めたもので、一つ一つは3~5ページほどの短さでした。 作風としては星新一のショートショートにおける機会や宇宙人が動物に置き換わったような感じ。しゃべったり考えたりする動物が

          ①ディーノ・ブッツァーティ『動物奇譚集』を読んで