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子供を呪う言葉救う言葉(出口保行著)要約&感想文

まず初めに

お母さんが発する言葉がいかに子供に影響するかを
、非行少年を長年心理分析してきた著者が
わかりやすく短時間で読める内容で活字にしてくれている
良書なので全ての母親にお勧めしたい。

ここからは個人的な観点からの要約や引用や感想を書きます。

少年院法務官の感じる問題点データから
62.5%   子供の行動に対する責任感がない
50.2% 子供の言いなりになっている
49.1% 子供の行動に無関心である

17P



「良かれと思って」

親は子供のためを思って励ますつもりで「頑張って」と言う。それが重圧になることがある。親から見る視点ではなく子供がどう感じているかの主観的事実が大切で、ほんのわずかな子供のサインを親はしっかり観察することによって間違った言葉かけを防ぐことができる。

「もうちょっと頑張らないとね」と言う言葉が、ものすごく重たいものになっていたということが実際にあります。親が「頑張らないとね」と言ったのは客観的事実ですが、それを「自分は何をやってもダメなんだ、だからお母さんは決して認めてくれないんだ」と受け止めたのは主観的現実であるわけです。

20−21P

一方的に自分の育て方が正しいと思い込んでいる親は、少年院に子供が送られて、法務官(少年院の子供たちの先生)に考え方の変更を勧められても聞く耳を持つどこか、「私はちゃんとやってます!」とキレる親が多いという。

観察以外にも大切なことは、言動に一貫性を持ち、夫婦で考え方をすり合わせて子供の信じてもらえる親になることなのだそうだ。

「みんなと仲良く」

事例 窃盗 仲間と共謀し書店で雑誌26冊を盗み取った。
この少年は両親から「みんなと仲良くしなさい」と言われ続け自己主張ができずにストレスを溜めていた。
人に合わせることは得意でも、人を批判的に見ることができず、悪いことだからやめておこうという判断ができなかった。

大人が子供に向かって「仲良くしなさい」という時、そのウラには大人側の都合が隠れていないでしょうか。トラブルが起きたら面倒くさいことになる、だから仲良くしておいてほしい。こういった大人側の都合で言っていることは子供にもわかります。そして、自分は大事ではないのだと感じます。

43P

「みんなと仲良くしなさい」にしろ、「誰々と付き合うのはやめなさい」にしろ、子供の気持ちを無視して親が指示し続ければ、子供は自分で考えることをやめてしまいます。

自分で判断せず、人に言われたことを行うばかりでは社会生活ができません。

親が高圧的な態度で接し、子供の意見を無視していれば、家が刑務所化するわけです。

グローバル化が進む現代では特に、自己主張できないのはマイナスになると感じます。

新しい時代に活躍する子供たちには、大人が新しい価値観を受け入れる姿勢で向き合うことが必要です。

54−57P

短所をひっくり返せば長所になる

飽きっぽくて長く続けられたためしがない、と言われてきた子に「色々なことに興味が持てるのがいいところだよね」
本人たちも短所だと思っているので、こう言われて驚きます。はじめて受け入れてもらえたと感じ、自分でもポジティブは見方ができるようになります。

59P

非行少年たちに言わせると、普段の生活がつまらないから。
自分の興味関心をのびのびと追求することができておらず、抑圧されていることが背景にあるのです。

子供は常に新しい刺激を求めるものです。「これが面白そうだからやってみたい」「もっと知りたい」といった気持ちを応援してあげてほしいと思います。興味関心を追求することが、子供の個性や長所につながっていくのです。

64−65P

「早くしなさい」が先を読む力を破壊する

事例 業務上横領 勤務する会社の金約300万円を自己の銀行口座へ振り込んで横領

ユカは、父親からやみくもに「早くしなさい」と言われて育ちました。早くするべき理由を説明しなかったのが良くなかったと言えます。略  早くしなさい、と言われればその場で何とかしようとはします。しかし、自分で判断することはできないままです。事前予見能力が育たず、常に場当たり的で後先を考えない刹那的な思考になってしまいます。

75−76P

内観療法

ネガティブな事態について原因を追求する「反省」とは違い、ありのままの思考や感情を見つめます。自分を見つめる機会を持ち、現在の状況を客観視できるようにします

81P

自分で自分のことを決めるのがなぜ難しいのか

自律と他律
自分で自分のことを決めるのは簡単に思われますが、実はけっこう難しい課題です。他律の方がはるかにラクです。自分で判断せず、責任も取らなくていいのですから。

私は暴力団関係者の心理分析も多く行いましたが、彼らのほとんどは他律の極地でした。 略 強いものにぶら下がっているのです。命令に従っていれば守ってもらえるし、対外的には自分を強く見せられる。

86−87P

柔軟な思考力を身につけるためには
バリエーション豊かな先読みができるようになるには多くの事例を知ること、さまざまな体験をすること、本を読むことで事例を増やしていくことができるとのこと
問題を起こす彼らは経験の幅が少なく、狭い世界に生きているとのこと

「頑張りなさい」が意欲を破壊する

事例 大麻取締法違反 宿泊先ホテルにて大麻を数回使用

ナオトは母親から「頑張って」と繰り返し言われていたが否定的な言葉をしてとらえていた。頑張れないお前はだめだ、もっとやる気を出さないとダメだと言われている気がしていた。

親からすればいいことを言ったと思っていても、子供からすると「何もわかってない」と思うことはよくあるわけです。
略 親はいいことを言っているが子供は全く信用していないなと思います。
そういう親は「頑張れって応援してきたのに、うちの子は全然こたえようとしなかった」と言います。子供は応援だと受け止められなかったのです。

頑張っての言葉で意欲を持たせることはできない

ナオトが成績を少し上げた時、小学校の先生は彼の努力を褒めて勉強への意欲を促進することができていました。
ところが、母親は褒めるどころか逆のことをしました。
内心はほっとしているのに、「これくらいで満足するな」「もっと頑張れ」とたきつけたのです。

プロセスを褒めることで意欲は高まります。

■努力してもムダ ー 学習性無力感
略 自分が何をしても電気ショックを止められないと学習した犬は、逃げられる環境になっても行動しなかったわけです。「何をしてもムダだ」とあきられめてしまったのです。
■頑張れない原因はどこにあるのか
そもそも何をどう頑張れというのでしょうか。漠然と頑張ることを要求されても、子供はどうしていいかわかりません。

スモールステップ学習
いきなり大きな目標に向かうのではなく、目標を小刻みにして、こまめに達成感を味わえる方法です。
■いきなり自己実現には向かえない
1自己実現欲求
2承認欲求
3社会的欲求
4安全欲求
5生理的欲求

土台の5、4、3、2、が満たされて初めて1の自己実現欲求を持つことができる。
■ご褒美
意欲を持っていること事態を褒めると、意欲が高まります。
略 プロセスを褒めることも同様です。

原因を追求し、ここを失敗したからこうなった、と大人が言うことにたいして意味はありません。落ち込んでいる子供自身は、原因の方に意識が向いているもの。
これが悪かった、あれが悪かったと考えて、クヨクヨしてしまします。
そこへ大人も一緒になって原因追求すれば、なかなか立ち直れないでしょう。
略 
落ちこんでいる子に対しては
その失敗があったからこそ、うまくいく方法がわかったね、次はきっとよくなるよ、と言ってあげることです。

102−120P

「何度言ったらわかるの」が自己肯定感を破壊する

事例 援助交際 不特定多数の男性と性交渉し、合計約15万円をもらった

ヒトミは極端に自身がなく、自分が承認された感覚を持つために援助交際に走ってしましました。

ヒトミは母親から常に誰かと比較され、暗に否定されてきました。「誰々と比べてお前は劣っている、だからダメだ」と言われ続けたようなものです。自己肯定感が低くなるのも同然です。

自分が尊重すべき人間であると同時に、他者も尊重すべき人間だということがわからない。他人なんてどうなってもいい、とあらゆる身勝手な犯行を繰り返す者の心理分析をすると、奥底には「自分なんかどうなってもいい」が隠れていたりするのです。

131P

たとえば何か作業をやらせたときに、昨日よりうまくできているね、ここを工夫したね、など、小さなことでも変化や成長を見つけて声をかけます。非行少年たちは褒められ慣れていないので、最初はいい反応は見せません。どんな顔をしていいか分からず、どう答えていいかもわからないのです。
でも確実に心に届いています。大げさに褒められると逆に、自分をコントロールしようといているのでは、と不信感を持つような子も、さりげないポイントをついた褒め方をされるとイヤな顔はしません。認めてもらえた感じがするのでしょう。
ポイントをついて褒め方ができるのは、よく観察しているからです。

本人なりの努力や成長を認めることで、自己肯定感は高まるものです。

日常の行動を観察していると見えてくるものがある。

観察のポイントは変化に注目することです。

133−134P

何度言ったら、の背景にある思い込みに気づく

何度言わせるの!この間も言ったでしょう!いい加減にしなさい!
親はこう言って感情を爆発させ、
「何度言ってもできないおまえはダメだ」というメッセージを伝えています。親のストレス発散にはなるかもしれませんが、問題は解決しないどころか、こどもの自己肯定感を下げることになります。

偏差値の高い学校へ行くべき、略 というのは親の個人的な価値観です。言うなれば一方的な押し付けだし、思い込みです。「子供のためを思って言っている」と言うかもしれませんが、親自身が安心したいとか周囲に認められたいという親側の都合で言っていることも多いもの。子供は敏感に察知して反発します。
親のために生きているからではないからです。

139−140P

「勉強しなさい」が信頼関係を破壊する

事例 殺人未遂 自宅にて父親および母親を射殺しようとした

コウジを苦しめていたのは医院を継いでほしい、そのためにいい成績をとってほしいという親からの期待です。
いい子が重罪を犯す例は現実に起こっています。
過度の期待がそこまで追い込むことがある。

犯罪の動機はあっても、普通は実行にうつしません。リスクが高い上に失うものが大きすぎるからです。

実際に犯罪者たちと面接するようになるとコスパで考えて行動している人なんでほとんどいないことに気づきました。

最大のコストとなるのは家族です。略 親に信頼してもらっている、その信頼を裏切れないと思うからコストになります。家族からの信頼を失うことは耐え難い苦しみです。

リスクもコストも関係ないような犯罪者は俗に「無敵の人」
と呼ばれています。略 拡大自殺はまさにそう。もともと死ぬ気ですから罪を犯すことに躊躇がありません。

コウジの親は勉強しなさい、を繰り返していました。略
ブーメラン効果とは相手を一生懸命説得するほど、反発が起こって逆の行動を導いてしますという現象のことです。

コウジは勉強が得意で、勉強する楽しさ、喜びもわかっていました。自らやろうという気があったのに、勉強するように親から説得されていた。反発心が起こるのは自然な心の作用です。

(信頼していない人にたいしてはブーメラン効果が起きる)

「気をつけて!」が共感性を破壊する

事例 投資詐欺 複数の高齢者に対し、架空の出資を促し、およそ500万円を受け取った。

うまい話しに乗る方がどうかしている、と話し被害者の気持ちを想像するのが難しいのもあり、内省が深まらなかった。
彼女の心配性の祖母が何でも先回りして失敗させないように動き、子供だけで遊ぶことを禁じていたために共感性が育つ機会が奪われていた。

騙される方が悪いのだ、略 といった理屈をつけることを、心理学では「合理化」と言います。欲求不満や葛藤などから自分の心を守るために働く防衛機制のひとつです。
人を騙してお金を奪うのは悪いことだとわかっているし、罪悪感があるからこそ、心を守るために合理化するわけです。

悪いことをした子供を叱るときも、まずは言い訳を聞いてあげることが大事です。
子供の言い訳は、自分の心を落ち着かせるためにやっていることが多いです。合理化をさせてあげることは、その子の心を守るために重要なのです。そしてとことん言い訳をすれば、自分ので矛盾を感じるようになります。これが重要です。自分で気づいて先に進めるようになります。

親が転ばぬ先の杖となって転ばせなければ、転んだ経験のない子は自分で何を気をつけたらいいかわからないのです。
本当に子供のためを思ったら、あえて失敗させてあげることです。

特に対人関係の失敗は共感性を育てます。

親の考えを言うのではなく、本人に考えさせてあげることです。
■反省ではなく内省を促す
反省しなさい、と言う言葉は抑圧を生みます。その子が抱えている不満を聞いてあげることなく一方的に反省を押し付ければ、不満はどんどん蓄積し、いずれ爆発するでしょう。
繰り返しますが大事なのは内省です。
自分の言動や考え方を振り返るのが苦手な子に対しては
どうしてこういう行動をしたの?その時どう思ったの?と
問いかけて内省を促します。
ここが良くなかったね、こんなことしたら相手は怒るに決まってるよね、などと指摘するのではなく、本人に気づかせてあげてください。

従来多かったのは放置、放任タイプです。子供がしたことに対して、私は知らない、私のせいじゃない、と言います。
育児放棄のような状態で、まともに保護していない保護者です。それでは過保護、過干渉タイプの親が子供の非行に対して一生懸命になって責任を取ろうかとするというと、そうでもありません。子供のためを思ってこんなにやってあげたのになぜ?、と言います。私は悪くない、と言いたいようです。


子供の問題行動、心配があれば
「法務少年支援センター」を利用してください。
専門家に相談することで助けられることも多いですから
ぜひ心に留めておいてほしいと思います。


こどもを伸ばす親の愛情

著者の父親は教師だったそうです。
口癖のように言っていたのは、
「子供は思っていることの1%も口に出せない。だから保護者や教師は常に子供を観察して、何か異変が起きていないか確認することが大切」ということだそうです。
このような父親に育てられたからこそ、杓子定規に理論を振り回すことではではなく、犯罪者や非行少年と愛を持って面接し、心理分析ができたのではないかと推測します。

また転勤の多い著者には双子のお嬢さんがいらっしゃるそうで、転校も多くなるわけで家族会議で難所を超えてきたとのこと。その中で模造紙をテーブルに広げて問題点などを書いて会議をする工夫が素晴らしいと思いました。

私自身の反省点

良かれと思って、と母に言われてその矛盾と本音に小さい時から気づいていた私は、少なくとも良かれと思ってと言う言葉を子供たちに発したことはありませんでした。
そしてみんなと仲良く、早くしなさい、頑張りなさい、勉強しなさい、も言わない母親でした。

気をつけては言いましたが、4、5歳の時から自転車で遠出をすることを許したり、電車に子供だけで乗らせたり、など
危ないと思うことも経験させていました。
その結果、ろくに英語も話せないのに娘たちが20代の時に個人旅行でアメリカにいる友達を訪ねたりする勇気を持つようになりました。

失敗は、父親の暴言を止めなかったこと。
自力で対抗する力をつけさせようとして
小さい方の娘を庇ってやることがなかったこと。
どちらかと言えば放任に近く、細かい観察が足りなかったこと。
特に上の子供に気を取られて下の子供を放置しすぎたこと。
夫婦の問題から登校拒否を起こさせてしまい、人生の計画を狂わせてしまったこと。
ある信条から食事などの影響を与えてしまったこと。
突然思い切った行動を取ることで家族を振り回したこと。
自分が傷ついた経験から子供に同じ思いはさせたくないと固く心に誓って子育てをしたのに、結局傷つけることになったことは後悔しても後悔しきれない。
贖罪のつもりで過ごしてきたけれど、70歳を目前にしている今は残り少ない?人生を自分らしく生きたいと願って
ある意味母親業から卒業させてもらいました。
(130まで生きるならまだ半分ですけどw)
私の背中を見て何かを感じ取ってもらえたらいいなと今は思います。

子供を呪う言葉祝う言葉






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