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大人しそうな音楽がいちばん怖い


木曜ってなんなんでしょうね。
異常に身綺麗にしたくなる。
今日は帰って直ぐに歯を磨いて洗濯物を全てまとめて、詰め替えをして冷蔵庫を掃除して、ガラスというガラスを磨いて全ての排水溝の詰まりをとって風呂掃除をして今から洗濯を回します。
こうやって書くとすごいな、さっきは爪という爪をもっと深爪にして、薄いネイルまで塗ってきました。
この完璧主義、1週間のうちで分散されないかな、上手いことさ

突然ですが、今日は1mmも知らないワールズ・エンド・ガールフレンドという音楽グループを勝手に紹介していこうと思います。


本当の本当に予備知識なし、1mmも知らないです。
普通調べろよ!と思いますが、時には余計な知識は新鮮さを失うし、なんの知識の前触れもない方がかえってその世界に構えることなく浸れることが出来るでしょう。
そのぐらい初期衝動を震わされた、促された。
久しぶりに帰り道から今現在、2030までイヤホンを外せない、外したくない。

本当にいいものに出会うとサラサラと風景が流れ込んでくる。帰り道なのに帰り道じゃない、その日あったことなんて全部どうだって良くなる。
目の前には普段の景色なのに私にはもう見えていなくて、そこには音に導かれた亜空間が拡がっている。
私には見えるし、見えてしまう、心が震えた。久しぶりにこう言う音楽に出会った。

母がピアノの先生で幼い頃から音楽は近くにあった。
この共感覚に名称があるのかは分からないし、みんなそうだとは思うのだけどそのうち、自分には聞くだけじゃなくて入り込むと心象風景が見えるようになった。多分自然の流れ。

2020年コロナ、ピアノ教室を休止せざる得なかった母は作曲に励んだ。
その頃私は実家で母と暮らしていた。

「ねえ、この曲どう思う?」
母は曲ができる度、1番に私に聞かせてくれた。
曲を聴くと導かれる、見えた空間を言葉で表すと、母は驚いたように「まさにそのイメージだった」と言う。
私は母のように音楽を学んできた訳では無いし、音符や規則に限っては何一つ前知識がない。
だからこそ、空想は自由だったのかもしれない。
母の奏でる音楽はストーリーで、見えた景色、匂い、色、時間帯、全て音が紡がれる度に広がって言った。

庭の大量の紫陽花が雨上がり、昼の光を充分に受けキラキラと光を跳ね返す粒子、大きな唾を被った女性の後ろ姿、深い秋。
母の音楽は、母と同じくらい自由で悠長で、雄弁に語った。
私は母の音楽が好きだ。母の心のしなやかさを十分にのせたメロディーが美しいと思う。

このグループはそれとおんなじだった。
衝撃を受けた、それは自ら思ったこと突き上げるものと言うよりも外部から流動的に流れ込んできたものだった。表現せざる得ない、こんなに凄いもの。




この放浪、というのは多分一時の旅の話ではない。それよりももっと大きなもの、人の人生を1分53秒の間に走馬灯を見たようだった。

美しい光、音、めでたい旅路。糊のきいた白無垢姿。

サンダルを履いて初夏、外に飛び出すことは決して軽やかなことだけでは無かった。

Model こまめちゃん 写真 はちくん


生命の誕生、幼年期、少女期、そして結婚。
人の一生は決して美しく快活で、華やかなことだけではなく、同時に死の匂いさえ撒き散らし、放っている。
真夏の茂った沢山の緑は同時に繁盛の終わりさえも含み、細部まで染み渡るように、淋しい。

草原を掻き分けるサンダル、生殖、誕生。
生々しくグロテスクに、人間は沢山の面を持っている。
母としての横顔、誰かを睨めたその目の乾き。
美しくも歪んだ一生を、本当は駆け抜けた春のような一瞬のその時間を隣で傍観者のように見ているような曲であった。

男の声で囁く「気持ちいいところ教えてご覧」(というように私には聞こえた)
が本当に不気味で悲しく、でもどこか分かっていたような演出をしていて凄く良かった。これをサンプリングとして使っていることは粋な計らいで美しいし、予定調和のようで心地いい。

それにしても私は永遠や死、生命やEndless、エンドという言葉に本当に弱い。
歌詞を調べようと初めて、ワールズ・エンド・ガールフレンドを調べたらグループ等ではなく、日本音楽家、前田勝彦によるソロユニットであるとWikipediaに書いてあった。
グループじゃないんかい!

私にはこの曲がどうしても死のイメージに捉えられた。
このキーーーンという静かな静かな金属音のような逆再生の音がキラキラした透明な六角形の長細いダイヤモンドのように思える。というかそうにしか感じられない。

小川のせせらぎ、蜂の音、どこまでも青空が雲と浮かび穏やかな昼下がり、黄色の花に蜂が受粉を手伝っている。

そんな中で少女は首を絞められ死の淵を喘いでいる。

しかし、それを望んでいない訳ではなく、朦朧とした意識の中、苦痛と頭痛に歪みながらも嬉しくもがいている。
死の淵をなぞらえることは即ち、恍惚にもよく似ていた。
汗ばむ男の子の首筋、汗が落ちてくる、目に入らぬようそっと仰ぎみた、逆光に塗りつぶす彼の顔、力を緩めず彼の細い前腕に青い筋が立っている。

音調は打って変わり、夜なのに青い光のような花が咲いたどこかに2人立っていた。
彼女の顔は見えない。しかしその肌の白さには拍車がかかり、漆黒の長い髪は風にもつれ、ゆらゆらと不規則な円を描き、揺れていた。

屍人のような細長い腕、青白いワンピース、その手を掴もうとする度空回り、するするとどこか遠くの、もう生あたたかな息をするものには届かない彼方へと遠ざかっていった。
それは冥界なのかもしれないし、もっと還るべき場所に望んで帰れたのかもしれない。
何故か銀河鉄道の夜を思い出した。

もうまどマギの世界観と通じたものしか感じない。
回るサーカス団、黒のストライプ、どうやったらこんな音の組み合わせを思いつくんですか?

雑に言うとダークファンタジーって突き詰めるとここに辿り着くよね、多分。
狂気も狂気を越える一線が確実にあり、完全にそこを越えた先のある種平穏、というか自由気ままさを感じる。
魔法少女まどかマギカのさやかが魔女化した時のイメージがいちばん近いな。
あの音楽隊のホールの感じ
赤と黒と、どこまでもフラクタルな模様と黒の中で鼓動のように灯る青色の宝石。

こういう音楽って言語が無いのに、下手なそこら辺の歌よりもよっぽど言語を越えて心に直接訴えてくるから怖い。
ダイレクトすぎる。
言語の壁をとっぱらった先の全人類に届く物って共有を越えている。それは衝撃に近い。
この音楽を聴いた先には同じ世界しか拡がっていないし、それはこれを聞いた人はどんな国籍、人種でもここにたどり着いてしまうのだと思う。

いや今度はバリバリ言語で訴えかけてくるんかい。
もうこの曲、ある意味怖すぎて泣いちゃった。良すぎて泣いちゃった。
こんなにも"思想"を感じる音楽、ありますか…?

私は作曲者の意図よりも何よりも、まず最初に思想が知りたくなった。
達観しすぎ、神様なの?
もうこれ、遥か遥か1億光年先の場所から人類を達観して穏やかな笑みを浮かべて見ている神の視点でしょ…。

生まれてから死にゆくまでの人間の一生がこの音楽で、詩で、全て再生されたわ……。
他者……自己…………。
これ空気人形のテーマソングだったんですか?
どうやって作中流れて使われていたんですか……。……。本当に解脱しているのかもしれない。ひとつの道を極めた人は……。(そもそも調べていないからこの方が音楽だけの活動なのかも分からないです、後で調べます)

これもやばかったです。
私ロックとHIPHOPが好きなんですけど、最近聞いたYokai jaki のボケ死ねよりも

別の角度の"クる"物がありました。
(もちろんどちらも違った良さがあるしどっちも大好き)


多分あれだ、予測機能が働いていなかったから……。……。
いや、言って?みたいな。
誰がアヴェ・マリアの音割れを作ろうと思うんだよ………。
教会でロックンロールをやるよりも怖い。こわい、こわいよう……。
黒い血で溢れた夜の教室から壊れたスピーカーから流れてきてそうだよう……。
外は満月で、殺人鬼が彷徨いてるよう……。
映画「LEON」のクラシックが流れた部屋で人殺しをするシーンに近い。
こわいよう……。
静かな狂気っていっちばん生命危機を感じるからやめて欲しい(褒めています)

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