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短期研修プログラム「表現/社会/わたしをめぐる冒険」|レポート③越口花梨子さん

舞台や芸術と普通の人や子どもたちをつなぐには?そんな興味から参加を決め、活気ある小劇場「犀の角」へ足を踏み入れた。

1日目、まだなんとなくソワソワする感じを抱えながら最初のディスカッションへ。
私が参加した教育・福祉分野のグループでは「命を全うするとは」に始まり「表現と生活の境目は」「相手の表現を受け止める土壌を作るには」といった抽象的な話題が多かったのに対して、公共施設・舞台・芸術分野のグループでは「お金」にまつわるあれこれが大きな議題の一つだったことがとても印象に残っている。
やりたいことと、やらねばならないことと、やりたくないこと、あるもの、ないもの狭間でモヤモヤを抱えるリアルな声がそこにはあった。理想を持てばこそ、世界は回るし腹は減る、そりゃあそうだと心底納得した。自分にとっては表現と社会構造の現実を知ったことそのものが大きな気づきだったように思う。

年齢も性別も、住まいも職業も違う大人が30人近く集まるって中々特殊な環境だなとその場になって初めて気づいた。お互いのバックボーンを想像しながら、表面を優しくフェザータッチするような時間が続き、「あ、もう少し、もう少し深い部分に潜り込んでいけたなら、、」そんな風に思う瞬間があったこともまた事実で、個人的な興味だけれど、共通言語になりうる何か、例えば少し前に今回の会場の目と鼻の先にある上田映劇で見た「青いカフタンの仕立て屋」なんかについて、舞台・芸術を生業にする人たちがどんな感想を持つのか聞いてみたいな、、なんてぼんやり考えたりもした。

今回の研修で一番心に残った言葉がある。
『迷惑をかけることは、貢献することである』という言葉だ。
フランスと日本で長く舞台芸術を生業にする彼女が日本とフランスで感じたギャップについて話されていた時のこと。
日本では仕事を抱えすぎてエラーを起こしたり、できないことがある時、迷惑をかけた、申し訳ないと思うし、大体周りの受け止め方もそのようだけど、フランスでは迷惑をかけることはその組織に気付きを与え、レベルアップするチャンスを作ったという意味で”貢献”であると捉えるそうだ。実際に彼女は仕事の場面で「そうやって一人で抱え込まれるの、ほんとにやめてもらえる?」的な注意を受けたこともあるそうだ。
自分の中で、その日の午前中に見学に行ったリベルテでの事や、障害者福祉分野の方々のお話とも遠くでつながって自分のお腹にストンと落ちてきた感覚がした。

今回の研修は、言うなれば小さなカケラをたくさん拾ったような2日間だったように思う。
そのカケラをポケットに忍ばせて、これからも表現、社会、わたしをめぐるあれこれに興味を持ち続けたいと思っている。

文責:越口花梨子

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