秋カヲリ@星天出版代表
新米母の妊娠・育児レポ。ままならず愛おしい日々。
結婚前からセックスレスの有希は、友人の成美から女性用風俗を勧められる。思い切って初の風俗を体験し、言いようのない快楽を得るがどこか満たされない。自分がセックスを求めているのか愛を求めているのかわからなくなり、夫婦のあり方に悩み向き合う。不倫する美女の琴子や古株セラピストの健とも話しながら、出口のないセックスレスのなかで自分の本音を探っていく。
卒業1週間前に内定先をクビになり、3社転々としてライターに。その後、独立1年半で年収1000万円に至るまでの奮闘記。
ある日、ぷつんと糸が切れてしまった。 ―こんなになってまで、わたし、何ではたらいているんだっけ? 洗面所の鏡に映るうつろな自分に問いかける。 私の目はうつろなままで、沈黙を貫いている。遠くから泣き声が聞こえる。 ■ 営業先に向かう大江戸線に飛び乗り、窓に反射する自分と目が合った。 コンシーラーで隠しきれないクマ、ファンデーションが浮いた肌。 老け込んだ自分の姿に愕然とする。 バッグの中でスマホが振動し、娘が通う保育園の番号を見て、心臓が跳ねた。電車を降りてすぐにかけ
昔から、万人受けの愛されキャラをやっかんでいる。 顕著になったのは、大学の軽音サークルだ。 当時の私は今よりさらに青く尖っていたので、お近づきになった男とはすぐ色恋になり男友達ゼロだし、人の好き嫌いを口に出すから大所帯には呼ばれないしで「印象には残るけど扱いにくい女」であった。 だから打ち上げで四方八方から呼ばれる愛されキャラを 「あんな毒にも薬にもならないヤツのどこがおもろいねん」 と横目にやっかんでいた。 大学卒業後も、平和な大所帯は気軽に集まってワイワイ飲ん
昔から扁桃腺がよく腫れ、喉風邪の多い子供だった。 季節の変わり目や湯冷めした日、運動した翌日などはすぐ喉が痛くなり、あっという間に悪化する。 とはいえ高熱が出るわけではなく、しんどい喉風邪が10日前後続くだけだったので「困ったもんだぜ」くらいに流して生きてきた。 だんだん薬も効かなくなってきて、一週間以上高熱を出したのが今年の6月。 唾を飲み込むだけで飛び上がるほどの激痛、40度前後を行ったり来たりで寝たきりになり、10日以上長引いて町医者から大学病院へとハシゴ。「このまま
私はセックスレスだ。結婚5年目、子どもは1人。 「子どもが生まれるとそうなる?」とよく聞かれるが、知らない。 出産前から、結婚前から、同棲前からセックスレスだったから。 何度か話し合ったが、夫はうなだれて謝るばかりだった。 夫には愛があるが、性欲がない。 昔はよく人に相談した。 婚約後は「本当に結婚するの?」と聞かれた。 結婚後は「元カレを誘ったら?」と提案された。 妊娠中は「浮気されてるんじゃない?」と疑われた。 出産後、だれにも相談しなくなっていた。 「いいじゃない
「鬼を制する者は子どもを制する」 そんな名言はないが、子どものわがままに対抗するにはやはり恐怖が有効だ。 子どもが傍若無人に「バナナとケーキとクッキーを今すぐに出せ」「風呂には入らん、ベッドにも行かん、机の上で夜通し踊る」と無理難題をぶつけてきて頑として泣きわめくとき、こちらは鬼かオバケに頼るしかない。 ちゃんとダメな理由を説明して納得させろという清い意見もあるが、私は清い人間ではないし時間は有限だし心も広くないので、そんなに時間と手間のかかる正攻法で太刀打ちできない。
大抵の女性用風俗には、マッサージコースとデートコースがある。前回利用したのは一般的なマッサージコースで、がっつり性感サービスを受けるものだ。自分なりの落としどころを探るべく、その名の通りデートだけを満喫するデートコースを予約することにした。また渚を指名するか迷ったが、いろいろな可能性を探りたかったので渚と対照的なセラピストを選んでみようと思い、別の店舗で明るい細マッチョのセラピストを指名した。キャンペーン中だったので、90分のデートが5,000円とのことだった。前回は3万円だ
ラブホテルを出て、そのまま新宿駅に向かった。渚は駅前まで恋人つなぎで送ってくれ、満面の笑みで両手を振って見送ってくれた。この後また歌舞伎町に引き返して、どこかのラブホテルに入るんだろう。 帰宅ラッシュ手前の時間で、かろうじて電車の席に座れてほっとする。久しぶりの行為だったのでほのかに気だるく、椅子の背に深くもたれかかった。電車の揺れが心地よく、倦怠感もあってうとうととまどろんでしまう。吉祥寺駅に着いて駅のホームに降り立った時、まだ体が揺られているような気がした。流れるプール
昼間の歌舞伎町には、間延びした倦怠感が漂う。既視感があるなと思って記憶を手繰ると、運動会翌日のグラウンドが思い出された。夜の歌舞伎町だとなんとなく人目が気になるので、わざわざ午後休を取った。 ラブホテル前にぽつんと立つ人影を見て、彼だと確信する。3メートル手前で目が合った。 「待たせてごめんなさい、ユキです」 「ユキちゃん、渚です。急いできてくれてありがとう。今日はよろしくね」 人懐こく笑い、スマートに手を差し出す。ホームページのプロフィールでは子犬のような愛らしいキャ
私は新婚のセックスレスである。結婚1年目、まわりから「子どもは?」と聞かれることが増えてうんざりしている。大学時代の友人である成美からも「子作りしないの?」と直球で聞かれ、いろいろ濁すのが面倒でうっかり答えてしまった。 「セックスレスなんだよね」 「ええ、うそでしょ!?」 成美の素っ頓狂な声が店内によく響いた。フォークにパスタをぐるぐると巻き付けながら睨むと、ごめんごめんと肩をすくめる。 「だってまだ新婚じゃない」 「新婚も何も、結婚する前からレスでしたから」 「学生時
「好きなことを!仕事にしました!!」 と言えば美しいサクセスストーリーだが、その裏には普通に挫折があったりする。 私の場合は「会社員は向いていないから私は出世しない」という確固たるあきらめと「行動しているのに会社に評価されなくてむかつく」という単純な怒りがあった。 私は書くのが好きな文筆家だ。ライターとして記事を書いたり、作家として自分の本を書いたり、ブックライターとして人の本を書いたり、コピーライターとして広告コピーを書いたりしている。文章に関する対応力がそこそこ高く、そ
結婚しなくても幸せになれる世の中だけれど、私の脊髄には 「絶対に結婚したいし子供も産みたい」 という願望が幼少期から突き刺さっていた。 その強すぎる願望は確かに結婚や出産に向かう行動力になったが、育児の忍耐力にはならないと知ったのは母になってからだった。 少女漫画『りぼん』を読んで育った私にとって「笑顔のウェディング姿と子どもに手料理を出すエプロン姿」がハッピーエンドの象徴であり、30歳になっても独身だったらベランダから身投げしようと思っていた。誇張ではない。恋愛依存症だっ
2歳の息子は絶賛イヤイヤ期である。息子を迎えに行って、保育園を出て自転車に乗せるまでが一番の山場で 「車、やる!」(おもちゃの車を窓枠部分で何度も転がして遊ぶ) 「階段、いく!」(小さな階段を延々と上り下りする) 「ルンバ、見る!」(締め時間で掃除のため稼働しだすルンバをじっと観察し続ける) などなど、ありとあらゆる「やりたい!」が湯水のように湧き出し、ここからが本当の保育園タイムだ!ヒアウィゴゥ!!と言わんばかりにヒートアップする。 「お外にいろんな車が走ってるよ
夫はいつも寝不足である。 2歳の息子はしょっちゅう寝返りを打って突進してくるし、布団を蹴ってしまう。あわてて布団をかけ直すと、その隣の妻も布団を蹴り飛ばし、自分でなぜか腹だけ出している。寝ぼけ眼でベッドの反対側に行き、床に落ちている布団をかけ直してからまた眠る。 明け方になると、妻のいびきがほら貝のように鳴り響く。呻きながら薄目を開けて隣を見れば、また息子も妻も布団を蹴って、踊り狂う人のようなポーズで寝ている。「さっきの記憶は夢だったのか?」と思いながらもう一度かけ直し、
効率重視、コスパ重視の昨今、「これって意味あんのかな?」と自問自答する人は多いと思う。私もしょっちゅう考えては立ち止まる。 自意識過剰なむっつりナルシストゆえに、仕事においても「私がやる意味」を常に考える。風吹けば飛ぶペラペラの新卒時代から「これ、私がやる意味ある?」と考えては首をかしげていた。 タイムマシンに飛び乗って当時の私の頭をパコーンと叩きたいが、残念ながらタイムマシンはまだ開発されておらず、社会人になりたての私は大層生意気なままであった。 代表的なのが飛び込み
私は貪欲なので昔から欲しいものが明確で 「結婚したい!」 「子ども欲しい!」 という人生設計は思春期から固まっていて、一度も揺らいだことはなかった。 だから「30歳になっても結婚できなかったら、私は絶望してベランダから身投げしてしまうだろう」という恐れすらあり、 「結婚してもしなくていい世の中だけど私は何が何でも結婚しますだってしたいですから」 と句読点も打てないほど息巻いていた。 なので執拗に合コンを繰り返して夫を仕留め、告白された直後に 「私は結婚したいので、結婚前提
人気ホストAが語っていた女性の落し方はこうだ。 「まずはとにかく変なことでもいいからインパクト大な発言をして印象に残してから、下手に出て連絡をし続ける。相手のワガママもなるべく聞く。 相手が『この人は自分の言うことを聞く人間だ』と調子に乗ったタイミングで、急に連絡をやめて距離を置く。 相手から連絡が来たら『だってお前ワガママじゃん。俺の気持ち考えたことある?』と言って、こちらの要望を通す」 ここで私が言いたいのは 「やっぱりギャップ萌えだよな」 「恋愛は追わせてナンボだ