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焙煎工場・焙煎室。灼熱と極寒の地。

萩原珈琲の焙煎室。
それは、天井が約3階建て程の高さがあり、広さも相当な広さがある。焙煎室には、4台の「炭火」焙煎機と、1台の大型撹拌機。そして、電子選別機(色を区別し、異物を除去する装置)が設置されている。

その焙煎室には、空調がない。
代わりにあるのは、超大型の排気口と吸気口だ。そもそも、屋根が3階ほどの高さで、広いスペースの温度をコントロールすること自体が、ほぼ不可能だし、仮に操作できても、その費用対効果がどれほどのものなのか…。

当然、真夏には室温が40℃近くまで上がり、真冬には10℃以下まで下がることもある。そんな過酷な職場が、私たちの焙煎工場内の焙煎室だ。

ここで、「なぜ、空調がつけられないほど、広いスペースが必要なのか」という点について。従来より「炭火」しか使わない私たちは、その熱源が焙煎室と同じところにあり、室内の酸素を劇的に消費しながら、熱を発生している。また、焙煎直後の珈琲豆からは、驚くほどの「炭酸ガス」が発生する。つまり、室内の酸素を消費し、燃焼によるCO2と豆から出る炭酸ガスに置き換えられる。焙煎を狭いスペースで大量に行うと…。窒息死する。

それを防止するために、広い空間の確保と、大型の排気と吸気が必要となる。室内の酸素を外気から常に大量に確保するためだ。室温と酸素、どちらを優先するか?それは、当然酸素の確保を最優先したい。

では、熱中症対策等はどのようにとっているのか?
まず、室温が低い場合。この時は基本的に対策は取らない。炭火焙煎の最大の特徴「遠赤外線効果」は人体にも効果的で、炭火に向き合っている焙煎師は、常に体の芯まで温められている。近年では、そんなヒーターも出てきているほどだ。次に、熱中症対策。これは、解決が非常に難しい。前述のように、真夏でも体の芯が温められてしまう焙煎師。室温40℃でどのように対策を取っているのか聞いてみた。

「スポットクーラーを常に体に全力であてている。そして、となりの検査室(カッピングルーム)はしっかり空調を聞かせ、熱くなったら逃げ込む。それくらいですね。」とのこと。

涼しい部屋で、焙煎したくないですか?との問いにも、「気温差が大きいと結露する。水分は、焙煎豆の劣化要因の主犯格なので。」これは、豆の保存方法にも通ずるもので、冷蔵庫(冷凍庫)へ焙煎豆を保管した場合も、その出し入れの度に、結露を繰り返す。つまり、劣化速度を反って早めてしまっている。

私たちは、焙煎後の豆を出荷までの間、保管倉庫に入れる。
この保管倉庫は、高温でもなく、結露するほどの低温でもない。20℃~25℃に保たれている。

焙煎室が極寒で灼熱な空間な理由。それは、焙煎師の命と豆の品質を守るための結果でもある。

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