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本の備忘録

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16年前くらいから、読んだ本の備忘録として、それから未読の積読本も相当溜まっていたので重複して購入しないようにと、書評というには拙い内容をとつとつとブログで綴っていました。 6…
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2022年1月の記事一覧

礼儀正しさについて

読んだ本の内容をまとめておくと、アウトプットした結果として更なるインプットになりますし、本を読まない部下たちも、数ページであれば目を通してくれたりするので、いつの間にか習慣になってしまいました。 今回は、いつものコラムとは少しテイストが変わりますが、過去に読んだ本の備忘録の開示をさせていただきます。 本日の一冊はこちら。 テーマは、「礼節は自分も人も幸せにする」ということについて。先ずは礼節の対極にある「無礼」について。 ある言動が無礼かどうかは、相手がどう感じたかで

余韻の残る極上時代小説

うーん、しみじみ。 読後しばらく余韻に浸っていました。 穏やかな主人公の周辺で少しずつ変化が生じていき、知らず知らずに巻き込まれた主人公と仲間たちは、やがて藩全体に影響を及ぼす事件に関わるはめに。 こうして書くと、よくある書き下ろし時代小説のステレオタイプの展開に見えますが、大筋以外の伏線も沢山散りばめられつつ、様々な人間模様が描かれるあたりは、極太の本格時代小説です。 主人公とその脇を固める人々との関係性が、とても丁寧に描かれていて、お互いのやり取りや配慮にとても好

人間を描く作家

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2008年12月17日に投稿したブログより。 知る人ぞ知る、「消し屋A」の続編。 殺すだけでなく、その人の生きてきた痕跡までもを消し去る仕事をする主人公。 前作では幸三という名でしたが、今回は将司という新たな名前で生きています。 今回の依頼は、本物の天才を自殺させて欲しいというもの。自殺に見せかけるのではなく、自ら死に逝くようにもっていくという難しい依頼。

時代劇版消防士のアベンジャーズ

直木賞候補に三度もノミネートされている実力派時代小説作家のデビュー作。 今回ようやく受賞しましたね!! 面白いはずと目をつけて、刊行している12冊を電子書籍にて大人買い。 1巻を読み終わった今は、自分の目利きに間違いはなかったと大満足です。 挫折を味わった元伝説の火消が、貧乏藩に頼まれて重い腰を上げて、ワケ有りの連中を掻き集めていっぱしの消防ドリームチームを作っていくというお話。 デビュー作であるシリーズ第1作目となる今作は、そのチームのメンバー集めから。 主人公

崩壊してしまった家族のお話

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2008年12月13日に投稿したブログより。 家族小説。 というか崩壊してしまった家族のお話。 14歳から73歳まで、家族それぞれの視点からの連作短編集になっています。 父親という立場を捨てて失踪してしまうというあたり、何となく瀬尾まいこの幸福な食卓を思わせますが、いやいやこちらの方がよりディープです。でも、こちらはこちらで良い後味を出しています。 次第に

自らを見つめ直す女性版ハードボイルド

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2008年5月18日に投稿したブログより。 スペンサーとスーザンカップルが、全ての苦難を越えて悟りの境地に辿り着いたとするならば、未だ道の途中にいて悩み苦しんでいるのが他の2つのシリーズ。 で、これはそのうちのひとつサニー・ランドル・シリーズ。 ゲイバーの経営者や実家がマフィアの元旦那など主人公を助ける魅力溢れる脇役たち。そして、シリーズの垣根を越えて参加して

切り口は面白いです

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2008年5月18日に投稿したブログより。 前々から気になっていたので、手にとってみましたが・・・。 これは、アレかな、もうちょっと若い人向きなのかしら。 これはよく分かります。 そしてコミュニケーションの根底には愛が必要不可欠である。これもよく分かります。 だから相手のことを気遣いながら、場の空気を読みつつコミュニケーションをとっていけば、相手に受入れら

和製SF恋愛大作

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2008年9月4日に投稿したブログより。 これは是非多くの人に読んでもらいたい作品です。 思いっきりSFといえば、そうなのですが、それ以上に恋愛要素がたっぷりです。 立て続けに起こった高度2万メートル地点における、飛行機の謎の爆発炎上。 そして、同時期に死亡したパイロットの遺児が海辺で見つけた謎の物体。 事故を回避できた別のパイロットは、再び上空2万メート

プロフェッショナルな不器用な生き様

エピローグを読んでいて、帰りの新幹線内で不覚にも涙してしまいました。 もう今年これから読む本で、この一冊を超えるものはなかなか出てこないのではないでしょうか。 逢坂剛 禿鷹シリーズ 今野敏 隠蔽捜査シリーズ コナン・ドイル シャーロック・ホームズシリーズ ダシール・ハメット マルタの鷹 これらの古今東西のハードボイルド小説やミステリー小説の共通点はお分かりでしょうか。 そう、主人公の内面描写を一切表現しないということです。 今回紹介するノンフィクションも、全編

沖縄を語る人への踏み絵となる一冊

本屋大賞のノンフィクション部門の受賞作ということでダウンロードしてみた一冊。 母であり取材者であり、娘であり、沖縄の住民であるという様々な視点から、沖縄以外に暮らす人には決して理解できないであろう沖縄の現実というナイフを、ゆっくりと、しかし着実にズブリズブリと突き刺してきます。 現実とそこに向き合う人たちの虚しさを憂いつつも、決して暗くはなく、そして諦めていない熱量は感じさせつつ、何かを読み手に強く求めてはいないのに、読後にザラリとした感情を残していきます。 自分たちの

芥川賞作家のデビュー作

週末や祝日は、過去の読書ブログからの転記が多くなってしまいますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 2009年1月7日に投稿したブログより。 帰りの電車の中で、薄めの本を一冊。 厚さで選んで持っていったもので、正直内容は全然不明でした。 タイトルもよく分からんかったし。 ただ、前回読んだ同作家の本の内容が凄かったからとは思っていましたが、案の定、頭のおかしな方々のオンパレード。 短編集ですが、表題作の「江利子」は引きこもりの主人公。で、「絶対」というのは