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リアル店舗でもECでもない、“第3の場所“に。「@cosme」のバーチャル店舗が描く、小売りのDX化

フィットネスクラブを中心としたリアル店舗の顧客管理、予約、決済を行うSaaSサービス「hacomono」を提供する弊社。Withコロナ、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代における店舗ビジネスのネクストスタンダードをつくるという言葉を掲げて、日々チャレンジをしています。このオウンドメディアでは、hacomonoの機能やスタッフの紹介に限らず、リアル店舗に関わるニュース記事やコラムもお届けしていきます。

新型コロナウイルス感染拡大の余波に苦しむ産業は、観光や飲食だけにとどまりません。リアル店舗での商品体験が購入への動線となっていた化粧品業界もそのうちのひとつです。マスクの着用によるメイク機会の減少や感染予防に起因するリアル店舗離れで、2020年の化粧品市場は、2011年以来のマイナス成長になると見込まれています

リアル店舗で提供されてきた購買体験を、どのように代替していくのか。2021年1月、このような課題に対するアプローチとして、新たなサービスが登場しました。

コスメ・美容の総合サイト「@cosme(アットコスメ)」を運営する株式会社アイスタイルは、スマートフォンアプリを通じてリアル店舗と同じようなショッピング体験ができるバーチャル店舗「@cosme TOKYO -virtual store-」の提供をスタートしました。

オンライン・完全非接触でリアル店舗と同等の購買体験を

https://youtu.be/mzvtplSxU0U
▲「@cosme TOKYO -virtual store-」

@cosme TOKYO -virtual store-は、アイスタイルがKDDIと協力し、スマートフォン向けアプリ「au XR Door」内で提供するバーチャル店舗サービスです。

物流システムの整備や生活様式の変化、新型コロナウイルスの感染拡大によってECの利用機会が増加する昨今。リアル店舗における購買体験を、時間や場所に縛られることなく、消費者へと届ける目的から同サービスはスタートしました。

ユーザーは@cosme TOKYO -virtual store-を通じて、アイスタイルの運営するフラッグシップストア「@cosme TOKYO」における購買体験をオンラインで享受できます。

同店舗では、専門スタッフによる対面でのカウンセリングや、トレンドを集約したランキング売り場など、リアル店舗でしか味わえない体験を提示。@cosmeの運営と企画を通じ、アイスタイルが培ってきたアセットと、通信大手のKDDIが持つ5G・XRの技術の双方を組み合わせた完全非接触のバーチャル店舗サービスとなっています。

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▲「@cosme TOKYO」の外観と、店内に設置された「ベストコスメアワードコーナー」

アイスタイルは@cosme TOKYO -virtual store-の特長に以下の6点を挙げました。

(1)スマホを通じて360°見渡せる、店内フロアを歩き回っているかのような体験
(2)棚の前に立って商品を手に取ったり、売り場でテスターを使用したり、といったリアル店舗でのショッピングならではの体験をオンラインで味わうことが可能
(3)商品をタップすると@cosmeの公式通販「@cosme SHOPPING」に遷移できるため、オンラインショッピングへとシームレスに移行できる
(4)「高画質版(5G推奨)」を搭載し、店内や商品パッケージを8K高画質で閲覧できる
(5)ブランドリストのタグから@cosme TOKYOで取り扱うブランドを一覧で確認できる
(6)フロアマップを開き、行きたい場所をタップすると、瞬時に売り場まで移動できる

実際に@cosme TOKYOでのショッピングを体験

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実際に@cosme TOKYO -virtual store-を利用してみると、「Googleストリートビュー」のような操作感で、@cosme TOKYOでのショッピングを体験できました。

店内にある一部の商品には、追加で情報が得られる2種類のマークがついています。テスターマーク(画像内の手のマーク)をタップすると、その商品を試している様子が閲覧でき、インフォメーションマーク(画像内の「i」のマーク)をタップすると、ECに遷移するリンクを含んだ商品カードが表示されます。@cosme TOKYO -virtual store-は、この2つのマークによって、リアル店舗とECでの購買体験をシームレスにつないでいます。

しかしながら、リアル店舗でのショッピングと同等の体験を得るまでには、まだUI/UX的に難しそうというのが正直なところだと思います。同サービスでは、画面左右に表示される矢印のボタンをタップすることで売り場間を移動しますが、これは実際のリアル店舗における購買体験とは違い、あらかじめ用意されたシーンを切り替えていくものです。視点から遠い売り場をチェックするには、スワイプアップで近づかなければならず、通常版は近づくほど画質が荒くなるため、色やデザインなどの細かい部分がハッキリと確認できないことがあります。ここは高画質版(5G推奨)が一般的になると、改善されていくでしょう。

また、現段階では一部商品にしか2種類のマークがついていないため、@cosme TOKYOにあるすべての商品で同サービスが活用できるわけではない点にも注意が必要です。現状では、“リアル店舗の雰囲気を味わえる”くらいに思っていただくといいかもしれません。

今後はコンテンツ拡充のほか、UI/UXのアップデートも予定

アイスタイルはこれまでにも、化粧品業界のデジタル化を支援する「オンライン美容部員プロジェクト」などを通じ、小売のDX化に取り組んできました。

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同プロジェクトには、美容部員のオンラインコミュニケーション支援のほか、同職の育成サポートやブランドのEC化支援、業務に活用できる共通ツールの提供などが盛り込まれました。こうした取り組みに続く、@cosme TOKYO -virtual store-には、「リアル店舗でもECでもない、“第3の場所“としての意義があると考えている」と、コスメネクストFlagship store事業部部長の坂井亮介氏は語ります。

リアル店舗のメリットである「商品そのものを見られること」「未知の商品に出会えるセレンディピティ」と、ECのメリットである「詳しい情報を得られること」「その他の商品と簡単に比較できること」。これらを両立し、バーチャル空間ならではの表現を模索することができる@cosme TOKYO -virtual store-は両者の代替ではなく、店舗事業者がこれまで提供してきた体験をアップデートしたものになる可能性があるでしょう。

たとえば、@cosme TOKYOにアクセスしづらい地域に住んでいる、初めて利用するにあたり、あらかじめどのような店舗なのかを知っておきたい。そんなユーザーにとっては、リアル店舗とECの2軸ではカバーできなかった欲求を満たす位置づけとなるはずです。

ユーザーは、店頭と同様に商品と出会い、商品を擬似的に体験できるだけでなく、情報を得たい場合には、アプリからWebサイトに直接遷移し、比較・検討することも可能。気に入った商品が見つかれば、ECから即座に購入できるようになります。

アイスタイルによると、今後はバーチャル空間だからこそできるコンテンツを拡充しつつ、体験しやすいようにUI/UXをアップデートしていく予定とのこと。小売のDX化によって私たちの購買体験は、よりシームレスなものとなっていきそうです。

(写真出典:アイスタイル プレスリリース

執筆:結木千尋/編集:庄司智昭