詩 〜半月と交渉〜

澄み切った秋の空は 夜になっても高いまま
闇が街を覆っている 綺麗な秘密を隠すように

月が顔を半分だして こちらを覗いていた
見張らなくていいよ ただの散歩だから

まだ半分隠れている すこし照れ屋な観測者
ずっと隣を離れない それならば月と交渉

付いてきていいけど その代わり隠れた半分を 今すぐに届けてくれ あの子が見上げる空に

友達の雲に言ってよ 今から俺の出番だって
向こうは寒いからさ 早くその光で温めてやって

悠然と輝いている月 静かに流れて舞台を譲る雲
光が溶けて滲む夜空 ポケットで震えるスマホ

画面に映し出される 「見えた!」の四文字
ちゃんと届いたって わがまま言って悪かったね

月も雲も蒼黒の空も また散歩に付き合ってよ
少しだけ甘えてみる 秋の夜空の優しさに

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